【質疑応答の一部公開】秋保亮太×宮前良平×仲嶺真「関係性のデザインを考える──グループ・ビルディングの心理学」#荒川出版会240321
先日、『関係性のデザインを考える──グループ・ビルディングの心理学』と題して、秋保亮太氏、宮前良平氏、仲嶺真でトークイベントを開催しました。
このトークイベントでは、「私たちはどのように他者と付き合えば、より良い関係性を作れるのでしょうか? 良い関係性とは一体何なのでしょうか? そもそも私たちは良い関係性を作る必要がどこまであるのでしょうか?」という問いに対して、社会心理学の立場からどのように応えることができるのかを目指して開催されました。(事前レポートはこちら)
本イベントは現在アーカイブ配信を販売しています。荒川出版会でしか見られないトークが展開されています。ぜひこちらからご購入・ご視聴ください。
この記事では、当日の質問の中で、応えることができなかった質問への回答を掲載します。
質問1
【ご質問の背景にあるトークの流れの概要】
集団の中での葛藤(コンフリクト)は、集団に悪影響を及ぼす(たとえば、メンバーへの信頼感を下げるなど)。しかし、だからといってコミュニケーションを避けることはできない。というのも、コミュニケーションをとることは集団活動の基盤だから。
実際、意見を出し合えることは重要で、イノベーションのきっかけになったり、あるいは、集団思考(Janis, 1982:意見を出さないことによって、集団での意思決定が個人より不適切で愚かなものになること)に陥らないようにしたりできる。
そのときに重要なのが心理的安全性(対人的なリスクを取っても安全という信念が集団内で共有されている状態:Edmondson, 1999)である。
【登壇者である秋保さんによる回答】
心理的安全性とグループシンクの直接的な関係について実証・検討している研究を把握できていないのですが、おそらくご指摘の通りだと思います。私自身もそのような意図でグループシンク(集団思考)のお話を紹介させていただきました。
質問2
【ご質問の背景にあるトークの流れの概要】
コンフリクトには、タスクコンフリクトと関係コンフリクトの2種類がある。タスクコンフリクトとは、タスク内容に関するメンバー間の意見の相違である(たとえば、経営方針についての意見の相違など)。関係コンフリクトとは、対人関係に関するメンバー間の意見の相違である(たとえば、価値観の相違など)。
Bradley et al.(2012)では、心理的安全性の高低によって、タスクコンフリクトがパフォーマンスに及ぼす効果が異なることが示されている。具体的には、心理的安全性が低い場合、タスクコンフリクトが大きくなるほどパフォーマンスは低下するが、心理的安全性が高い場合、タスクコンフリクトが大きくなるほどパフォーマンスが上昇する。
この「心理的安全性が高く、かつ、タスクコンフリクトが大きい」という場合、日常的な語感としての「コンフリクト」は生じていないように思われる。つまり、タスク(課題)に対して、集団内のメンバーが自分の意見をしっかり表明できているのであって、メンバー同士が仲が悪いというわけではないという状態であると思われる。
【登壇者である秋保さんによる回答】
ご指摘の通り、Bradly et al.(2012)の分析においては関係コンフリクトについて明言されておりません。
こちらの論文は、タスクコンフリクトはチームにネガティブな効果を持つものの、心理的安全性が高いチームに限り、タスクコンフリクトが高まることで様々な意見や情報が提供され、また、そこからチームが学習することができるため、チーム・パフォーマンスが高まるという主張かと思います。
質問3
【登壇者である秋保さんによる回答】
組織やチームの場合、その活動内容や目標設定などによって成果となる指標は大きく異なってくるものと思います。そのような背景からか、ビジネスの文脈では度々KPI(key performance indicator)という用語が用いられます。これは、組織やチームの目標達成に関連する重要なものが何であるかを特定し、それを定量的に測定することによって、活動や目標達成が上手くいっているかどうかを判断していくものです。
上記を踏まえますと、公務員といってもその部署や業務内容によって具体的にどのようなものがKPIになるのか変わってくるものと推察いたします。例えば、市民を対象とした窓口対応のような業務をされているということであれば、市民の満足度などがKPIの指標になるのではないでしょうか。
以上で取り上げた視聴者からのご質問はあくまで一部になります。また、当日のトークの中で取り上げたご質問もあります。
ご関心を持たれた方は以下をクリックしていただき、ぜひアーカイブ配信をご視聴いただければと思います。
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