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『校則なくした中学校』読んで桜丘中学校に行ってみた

世田谷区立桜丘中学校。今最も注目される公立学校の一つでしょう。尾木ママが絶賛し、あちこちの記事で取り上げられています。

私は正直、千代田区の麹町中が革新的な取り組みをしていることは知っていましたが、桜丘中学校についてはあまり知りませんでした。が、桜丘中の西郷校長先生が書かれた本を職場で借りて読み、非常に感動しました。こんな面白い、素晴らしい学校があるなら自分の息子も将来通わせたい!あるいは多くの学校がこのようになっていくよう働きかけていかねば!そんな気持ちになりました。

昨日読み終わり、西郷先生に会う手段はないのか、桜丘中も見てみたい!と検索したところ、何と1月20日〜24日が学校公開期間だというではありませんか!たまたま今日、22日に休みを取っていた私はすぐにいくことを決め、3〜4校時を見学させていただきました。

結論から申し上げると、昨日本を読んだ時の感動は大きく薄れ、息子の特性次第だがやはり公立中学校に通わせたいとは思わない、というのが今日の感想です。しかし、桜丘中学校の取り組みが面白く、多くの子に居場所を与え、学校のあり方に対して問題提起をしている点は変わらず評価しています。こういった学校が全てである必要は全くありませんが、増えていくと良いな、とは思っています。


以下、読書中のメモと訪問後の感想です。

制服なし、チャイムなし、定期テストなし、教室前方に掲示物なし、机や椅子の足には中古のテニスボール(音に過敏な生徒への配慮)

生徒が何で?と思うような校則や学校の決まり事に先生方が真剣に向き合った結果、他の学校にはない形ができあがったそうです。このうち「チャイム無し」は私の通っていた群馬県立中央中等教育学校でも実施されていたので無理ではないことは分かっていましたが、他は公立中でやるのはどうなってしまうのか心配になりました。定期テストについては「単元テスト」に変えて頻度が上がったことで生徒の学習時間が伸びた、という結果なので良い取り組みだと思います。

年5回(二期制なら年4回)の定期テスト前しか勉強しない子は世の中に大量にいるでしょう。そんな短期間での詰め込みではすぐに抜けているため受験になって困りますし、自分に合った勉強法を試行錯誤して見つけられなければ成績は伸びず、それは高校や社会に出てからも付き纏います。テストを高頻度にするのは、先生の負担はありますが賛成です。

制服や髪に対する規定についてはブラック校則がここ数年話題になっています。地毛が明るい色なのに染めさせられたとか、靴下や下着の色を強制するのは何のためだ、とTwitterでは学校が完全に悪とされるツイートばかりみました。しかし、先生側からすれば生徒のためを思っている部分はあります。見た目を派手にすれば危険が伴うことも、今の社会では偏見を持たれることもあります。みんなが私服になると家庭の格差が目に見えてしまいます。曖昧にしてしまうと指導がしにくいため、一律で前髪が目にかかったらアウトとか、ツーブロックは禁止、とするメリットは理解できます。しかしそれが嫌で学校に来られなくなったり、目立つ人を排斥する風潮が良くないのも事実。公立中でなければ服装、髪型の規定がない学校もたくさんあるのでこれも試す上では問題ないのかもしれません。

窓ガラス割ったら原則弁償

これは当然かな、と。学校の中で何でも解決しようとする風習は意味がわからないですからね。

礼儀、出会い、自分を大切にする。

指導の基準はこれだけ。こういうの良いですよね。「元気に挨拶をしよう!」とかいうスローガンで形だけ挨拶をするのではなく、何のためにするのか、挨拶以外でもどう過ごせば良いのかを考えられます。余談ですが前職東進ハイスクールは「独立自尊の社会世界に貢献する人財を育成する」という教育理念があり、全ての指導やイベントをこれに則れば大外れはしないので働きやすい部分ではありました。

教育現場のOS。多様性の受容と尊重。愛情を持って子供に接する。生徒一人一人を大切にする。子供と共に生きる。

生徒は一人一人違う。PCの機能はメーカーによって違うがOSが統一してwindows10が使えているように、生徒の違いをそれを教育現場というOSが需要し、その上で生徒の良さを伸ばしていくのだということです。

英語で調理実習
3Dプリンターを使った理科の授業
週10時間で強いバレー部。きちんとした理論や練習メニューがあり的確なアドバイスができる。
支援員採用に積極的。
廊下で麻雀大会。牌が家にあり本物の麻雀がしたいと持ってきた。教員がサポートする。
モデルガンを学校で試射させる。
放課後ギター教室で部活、クラス以外の新しい人間関係を築く。
夏の19時に学校で花火大会
運動会は玉入れがメイン競技の一つだったり、部活対抗仮装リレーだったり。

どれも賛否あるかもしれませんが面白いですよね。田舎のすごく少人数の学校とかではなく、都会の1学年4,5クラスある普通の学校で、普通の運営をしながらやるのですごいです。

「何の意味があるのか。何かのプラスになるかもしれないしならないかもしれない。でもそれがその子の人生に関わることになるかもしれない」「やりたいという気持ちを尊重してあげること。やりたいと思ったらできる、と思えば『やりたい』と口にするハードルも下がる。」というようなことが書いてあり、納得しました。

今の学校は仕事が増えすぎてブラックだ、負担減していこうというのが方向性としては主流ですが、生徒のためになりそうなことは親としてはやってほしいし、教育者としてはやりたいですよね。

出る杭は打たれるが、「出過ぎた杭」は何も言われなくなる。
生徒が大事にしている「ひっかかる」ところを探し出す。
一人の生徒に全力をそそぐと愛がわかる。たった一人にすら愛情をかけられない人に全員を大事にすることはできない。
朝礼で「世界を変えなさい」と言い続けている。

最終章に書かれていたことです。読んでいて涙が出そうになりました。何も特別なことは言っていないのに、それを60歳になるまで実行し続け、周りを変えられていることに感動します。


訪問の感想

書籍に感動し、この学校は自分の目で見たいと1時間かけて学校公開に訪れ、1月22日(水)10:40〜12:30で見させていただきました。高校の授業は1年半前に千葉県の国語部会に招待された際に見せていただきましたが、中学校の授業を見るのは行くのは大学以来なのでおよそ6年ぶりで緊張しました。

これだけ有名になった学校なのでさぞ訪問者も多いのかと思いましたが、予想外に見学者は少なかったです。保護者と一般も合わせて10名くらいしかいなかったのではないでしょうか。見学者の人数については世田谷区の研究会があるためこの日の公開は4校時までと短く、都立推薦入試や私立出願日で3年生が少ないこと、他の学校の方も同様の理由で自分の学校を離れられないことなどがあると思いました。

さて、実際に制服着用の規則がない中学校はどうなるのか。私服の中学生を男子はだいたいパーカー、女子は制服を着ている子が多い印象でした。教室を暑いと感じる子、寒いと感じる子、席の場所によっても様々なので上着を着ていてもブランケットを使っていても何も言われないのは良さそうでした。髪型も奇抜な子はおらず、厳しい学校であれば長さなど色々言われそうですが特に嫌な印象は受けませんでした。

先生が叱らない。たとえ1年生の頃うるさくしていても我慢強く信頼関係を築いていく、結果2年生、3年生でしっかりしてくる、というような記述が本の中にはありましたが、上の学年の授業態度が良いかといえばそんなことはありませんでした。今日が特別な日のせいもあるかもしれませんが、授業中周りと話すようなことも多く、勉強したい子は迷惑だし、先生も授業しにくそうな印象でした。しかし、授業で先生が引きつけている場合、気になった言葉や意見がどんどん出てきて盛り上がっている様子だったのは良いですね。後ろの方に座っている子が「◯◯ってこういうこと?」と言うと先生が「そうそう!」と言いながら説明を加え、他の子が更に発言する。それが自然に行われていました。

他に気になったのは「定期テスト復活賛成派の集い」という掲示でした。校長室で先週行われていたらしく、結果がどうなったのか気になります。単元テストになると日常的に勉強しなければいけないので、学習効果は高いですがその分生徒の勉強時間は増えるので大変だと感じる子もいるでしょう。


10年勤めてこられた西郷校長はこの3月で退職だそうです。校長が変わっても生徒が自分で考えること、よく生きようとすることは変わらないので、心配はしていないようです。

桜丘中学校は「公立中学校なのにチャイムがない」「定期テストがない」「制服がない」と新しい取り組みが取り上げられて話題になっているようですが、その指導の根本は「一人の生徒に真剣に向き合い、愛情を注ぐこと」でした。教育者として絶対に忘れてはいけない普遍的なことなのに、それを無視して今の学校のルール改変があちこちで行われようとしているように感じます。

私は今、直接生徒を指導する立場にはありませんが、この教材が誰に、何のために使われているのか、どうなってほしいのか、ということは常に根本に持って仕事をしていきます。

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レペゼン群馬、新井将司。世界一になる日まで走り続けます。支えてくださる皆さんに感謝。