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印度林檎之介 ショートショート

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印度林檎之介作 珠玉のショートショート集
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2017年4月の記事一覧

ショートショート「大雪」

朝、起きると天気予報がやっていた。
『今日は大雪です。外出は控えましょう!』
どうせ、東京で『大雪』なんてタカが知れてる。
雪国育ちの俺は無視して会社に向かった。

外に出ても、曇り空だが雪どころか雨さえ降っていない。
ところが、大通りにでても車も人も全くいない。
『まさか、みんな天気予報を真に受けてるのか?』
そう思った瞬間、空から何かが降ってきて道端に駐車してあったママチャリを中心から真っ二つ

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ショートショート「古(いにしえ)の賢者」

近々、世界大戦が起きるという噂を聞いた私はシェルターをつくりコールドスリープマシンで眠りについた。
ところが、マシンの故障で私は数十年の眠りのつもりが二千年後の世界に目覚めてしまった。
どうも世界大戦の影響で世界人口は激減、文明もかなり後退しているようだ。
私はこの世界の見聞を広めるため、旅に出た。

巨大な廃墟のある村に来たときである。
その村の巫女だという美しい女性に呼び止められた。
「もしや

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ショートショート「鉱脈」

俺は鉄鋼会社につとめている。
ある日、うちのチームが大学と共同で海底を調査していると、センサーに巨大な反応が。
「教授、この反応は!?」
「こ、これは……信じられんほど大きな鉄の鋼脈だ。しかも異常な純度の高さだ。ほとんど精錬しなくてよいほどだ」

この鉄の鉱脈は海底のかなり深いところの、これまたさらに深い地下にあったので、巨大だが今まで知られていなかったのだ。
こんなに深いと20世紀の技術では掘削

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ショートショート「用途」

砂漠を旅している時、迷って死にそうになっていると砂に埋まっていたバケツにつまづいて転んだ。
『なんでこんなところにバケツが!?』
そこに突然、妖精が現われた。
「それは魔法のバケツです。それを使えば幸せになるでしょう」
それだけ言うと、パッと消えてしまった。
『魔法のバケツ……?』
そうはいわれても使い方がわからない。
何の役に立つんだろう?
水でもでないか、と思って振ってみても反応なしだった。

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