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カネの匂いがする事業プランを作るには?

戦略コンサルタントのアップルです。

戦略コンサルティングの仕事をしていると、「カネの匂いがする/しない」という言葉を非常によく耳にします。検討している事業が要は儲かりそうかという話です。

本稿では、「事業プランニングにおいてカネの匂いを醸し出すにはどうすればよいのか?」という点についてアップルなりのいくつかの手法をご紹介したいと思います。

「カネの匂い」という感覚的な言葉

ビジネスを検討する以上、カネの匂いがする(=儲かりそう)ことは当たり前ですがとても大事です。世の中にはうまく立ち上がらない新規事業が多々ありますが、その中には、カネの匂いがしないまま突っ走って結果的にうまくいかない事業プランも数多くあることでしょう。

ただ、このカネの匂いがする/しないというのはとても感覚的なものです。そのため、カネの匂いがするというのはどういう事業プランなのか、カネの匂いがする事業プランを作るにはどうしたらよいのか、という点についてうまく言語化して関係者でコンセンサスするのは至難の業です。

アップルも戦略コンサルタントとして数多くの事業戦略や新規事業の検討を行ってきましたが、まだ完全には「カネの匂いがするとはこういうことである」という形式知化はできていません。ですが、カネの匂いを醸し出すためのいくつかのテクニックやセオリーのようなものは心得ています。

今回の記事ではそのあたりについてまとめてみようと思います。

課題やニーズが直ちにカネになるわけではない

例えば新規事業を検討するとき、まずは市場の分析から始めるのが一般的です。市場をセグメンテーションし、ターゲットセグメントを決め、そのセグメントの顧客層の課題やニーズを深掘りします。

課題やニーズはインタビューをすることによってリアルにつかめます。BtoCのビジネスなら消費者インタビューを通じて、BtoBビジネスなら事業者インタビューを通じて何に困っているか、どういうニーズがあるかがつかめます。

この顧客課題を掘り下げるというのはあらゆる事業を検討する上での必要条件であり、ここを深くやるのが事業プランにリアリティを持たせるためにとても重要ですが、難しいのは、顧客の課題をしっかり押さえる=カネの匂いがするという単純な図式ではないところです。

例えば零細飲食店のサービスやソリューションを考えるとしましょう。零細飲食店の多くは、一般的に課題や困りごとだらけだと思います。飲食店の経営者にインタビューをすれば、次から次へと課題が出てくるでしょう。

ただ、これらの課題を解決してあげることがお金(対価)になるとは限りません。そもそも零細飲食店が収益がほとんど出ていなければ、いくら魅力的なソリューションがあっても、支払うお金がなくて手が出せないでしょう。「ない袖は振れぬ」というわけです。

ですので、「零細飲食店のこういう課題に対して、こういうソリューションを提供する」という事業プランは、そのままだと「うーん、カネの匂いがしないなあ、、、」という反応になります。

「課題解決=カネの匂いがする」という単純な図式でないところが、カネの匂いのする事業をプランニングする上での難しいポイントとなります。

カネの匂いを醸し出すためには?

カネの匂いを醸し出すための3手法をご紹介します。

1.原資と紐づける
2.差し迫った課題に突き刺しにいく
3.類似事業で裏付ける

順に説明しましょう。

 1.原資と紐づける

商品・サービスの対価を顧客の「どの財布から引っ張ってくるか」というところを紐づけるのが最も自然なカネの匂いの醸し出し方です。

法人ビジネスであればコスト削減にコミットするというやり方です。

・ITの導入によって業務コストを削減する
・業務効率化ソリューションによって人件費を削減する
・電力の制御ソリューションによって電気代を削減する

こんなようなビジネスはカネの匂いがします。なぜなら、人件費、業務費、電気代などのコストの削減分がサービスの対価の原資になるからです。実際この手の法人ビジネスは非常にたくさんあります。コンサルティングビジネスにおいてコスト削減や業務効率化は大きなポーションを占めています。

消費者ビジネスであれば、別の消費に充てているお金を引っ張ってくるロジックを作るのが原資を作るということになります。例えばHuluのようなサブスク型ストリーミングサービスの原資は、「TSUTAYAなどのDVDレンタル店に対する支払い」や「映画鑑賞に対する支払い」ということになるでしょう。別の商品・サービスに支払っているお金をぶんどってくることで、原資を作っているわけです。

 2.差し迫った課題に突き刺しにいく

これも一つの常套手段です。「背に腹は代えられない」課題に突き刺しにいくとお金がついてきます。

例えば弁護士のビジネスがその一例でしょう。1時間の相談で数万円とったりしますが、これは弁護士が背に腹は代えられない課題を扱っているからです。個人であれば離婚問題、企業であれば不祥事対応などの重くて差し迫った課題であればカネに糸目は付けません。

また、事業再生コンサルティングというビジネスも、差し迫った課題に突き刺しに行っている例です。事業再生コンサルティングは、対象企業のメインバンクである銀行から請け負うケースが多いと認識しています。銀行からコンサルティングフィーをもらって、融資先企業の事業を再生するというビジネスモデルになっています。これもなぜ銀行がコンサルティングフィーを支払うかと言えば、「融資が焦げ付くかもしれない」という差し迫った課題に直面しているからです。

このように、差し迫った課題はカネになりやすい、逆にそうじゃない課題はカネになりにくいため、顧客が言及する課題が
・解決されればありがたいというレベルのnice to haveの課題
・カネを使ってでも解決したい差し迫った課題
のどちらなのかを見極めることがとても大事ということになります。

 3.類似事業で裏付ける

戦略コンサルティングにおいてアナロジーを使うことの有効性と破壊力については、これまでもいくつかの記事で紹介してきましたが、カネの匂いを醸し出す上でもアナロジーは有効です。

つまり、現在検討している事業プランと類似する事業(既にビジネスとして成立していて、お金も回っているもの)とを紐づけるわけです。

「似たような事業が別の業界では成立して、それなりに儲かってるから、このプランも多分儲かりますよ」という説明ができると、一気にカネの匂いが増します。


今回はここまでです。
事業プランを立案する立場にいらっしゃって、「カネの匂いがしねえな~」と言われたときには、上記を参考にしてもらうと一歩前進するかもしれません!

最後までご覧いただきありがとうございました!


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