戦コンが向き合う問題解決の諸相
戦略コンサルタントのアップルです。
過去のエントリーでご紹介したとおり、戦略ファームが扱うテーマは非常に多岐にわたりますが、共通するのはクライアントとともに何かしらの「問題解決」をしているという点です。
そして、問題解決には、クライアントがどこで躓いて(つまづいて)いるのかに応じた「諸相」があります。諸相に応じて戦略ファームの価値の付け方や役立ち方も変わってきます。
これを理解しておくことは、
・ビギナーの戦略コンサルタント
・戦略コンサル志望者
・さらには戦略コンサルを発注する側の大企業担当者
にとって大事なことだと思っていますので、今回の記事ではそのあたりについて書いてみたいと思います。
問題解決の3ステップ
問題解決というのは、次の3ステップで構成されます。
①課題の定義
②課題に対する打ち手の導出
③打ち手の実行
クライアントによって、①~③のうちどこで躓いているかは様々です。どこで躓いているかによって、戦略ファームが提案する内容、その中で戦略ファームが何をバリューとして提供するかが変わってきます。
①で躓く:「課題がわからない」
②で躓く:「課題はわかるが、打ち手がわからない」
③で躓く:「課題も打ち手もわかるが、実行できない」
それぞれの躓きが具体的にどういう症状なのか、その中で戦略ファームがどのように役に立つのかということを以下で解説していきます。
課題がわからない
なんとなく経営や事業がうまくいっていないが、その原因や真因の全貌が見えていないというケースです。課題をしっかりと定義をしないと問題解決はスタートしないので、問題解決の入り口のところで躓いているケースです。
例えばこんなようなケースです。
わが社はここ3年ほど売上も利益も低迷している。市場全体では伸びているし、風のうわさによると競合のA社も業績は良いようだ。そうした中でなぜわが社は業績が低迷しているのか?
営業担当者の世代交代が進んだから営業力が一時的に落ちているのが原因か?それともブランド力の低下が原因?いや、競合が知らないところで潜在顧客をどんどん奪っているからか?
うーん、どれもありそうだけど、どれが鍵なのかわからん、、、
現象として何かうまくいっていないとき、その背景ではいろんな課題の原因が絡み合っています。それをまずはしっかりと解きほぐし、可視化し、関係者でコンセンサスをとっていくのが大事になります。
この段階で躓いているクライアントに対しては、戦略ファームによる客観的・分析的な「課題の構造化」が大きなバリューとなります。複雑に絡み合って全貌が良く見えない課題構造を、各種のデータや、クライアントの関係者への丹念なインタビューによって明らかにしていきます。
課題構造が明らかになれば「概ねこのあたりの課題に手を打たないといけないな」ということもおのずと見えてきます。
課題はわかるが、打ち手がわからない
課題構造の全貌は概ね分かっていて(もしくはわかっているつもりで)、どの課題に対して手を打たないといけないかもわかっているが、「具体的にどのような手を打てばよいかわからない」というところで躓いているケースです。
例えばこんなようなケースです。
うちの会社は既存事業がじり貧になりつつある。早晩成長が頭打ちになることは市場分析からも明らか。そのため再成長していくためには、新たな事業の柱を作っていかないといけない。「骨太な新規事業を育てていかないといけない」というのが次の中期経営計画での最大の課題。
じゃあ、具体的にどんな事業を、再成長の柱にすればよいのか?
ここについては全く見当もつかない、、、
こういうときは戦略ファームがもっている情報、ノウハウ、経験が武器となります。課題はわかっているが打ち手がわからないとき、その原因は情報や発想力の欠如であることが多いです。上記のケースでも、なぜクライアントがどんな事業を手掛ければよいのか見当がつかないかと言えば、
①外部環境の変化を熟知していない(情報の欠如)
②そうした変化の中で、どこにどんな事業機会が出てきているのかわからない(情報の欠如)
③事業機会に対して自社がどうアプローチしたらよいのかわからない(ノウハウの欠如)
④ビジネスモデルまで落とし込めない(発想力の欠如)
といったように、情報・ノウハウ・発想力が欠如しているためです。
そうした「欠如部分」に対して、戦略ファームのナレッジと経験を最大限生かしながら支援することになります。
課題も打ち手もわかるが、実行できない
問題解決の最終フェーズの「実行」のところで躓いているケースです。平たく言えば、実行力の欠如ということです。
実行できない理由は大きく2パターンあります。
1.組織のしがらみの中で実行が進まない
2.人材の経験・能力の欠如で実行が進まない
1.は内部課題を解決するときに発生しがちです。例えばお荷物の不採算事業をリストラしないといけないようなときに、それに対する抵抗勢力が社内にいてなかなか進まないというような話です。
2.は外部課題を解決するときに発生しがちです。どこかの会社とアライアンスをするとか、どこかの会社を買収するとか、新たなビジネスチャンスを獲得するための新規事業を推進するとか、そういうときに「経験値のなさ」や「人材の能力の欠如」が露呈して実行が前に進まないケースはよく見かけます。
こうしたクライアントの実行力の欠如を「実行支援」という名目で戦略ファームが補うプロジェクトもしばらく前から増えてきています。
まとめ
それでは今回の記事を簡単にまとめておきましょう。
・問題解決は「課題の定義」「課題に対する打ち手の導出」「打ち手の実行」の3ステップで構成される
・企業によってどこで躓いているかは様々
-課題がわからない
-課題はわかるが、打ち手がわからない
-課題も打ち手もわかるが、実行できない
・どこで躓いているかによって、躓いている理由も異なる
-課題がわからないとき:情報の構造化の欠如
-打ち手がわからないとき:情報・ノウハウ・発想力の欠如
-実行できないとき:組織のしがらみと人材の経験・能力の欠如
・どこで躓いているかによって戦略ファームの価値の出し方も変わってくる
コンサルティングファームに発注する側の企業としては、自分たちがどこで躓いている・行き詰っているのかを明確にした上で、戦略ファームに何を期待したいのかを明確にすると、お互いにとってハッピーなプロジェクトになる確率が高まるように思います。
今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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