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毎日をポジティブに生きるために。

私は次の電車に乗るために、タンッタンッタンッと足早に階段を降りていた。

すると、ホームの入り口の直前でおじさんが片足を引き摺りながらとてもゆっくりと歩いているのが見えた。
目の前の人はそのおじさんをすり抜けて電車へと走っていった。
しかし、私はちょうど狭い入り口部分でおじさんの真後ろになり先へ進めない。
仕方なく「はやく、はやく」と思いながらおじさんが入り口から通り過ぎるのを待つ。
それでもゆっくりと歩くおじさん。
やっとおじさんの横をすり抜け、電車の入り口へと走る。

”ビー”という発信音。

目の前で閉まるドア。

”おじさんのせいで電車に乗り遅れた”

そう思った。

仕方なくホームからくるっと踵を返し、別の電車のホームへ向かう。
おじさんが私へ向かって何か叫んでいる。
どうやら「あっちの電車に乗りなさい」と言っているらしい。

知ってるよ、そんなこと。
何年この電車使ってると思ってるんだよ。
馬鹿にすんなよ。
大体お前のせいで電車に乗り遅れたんだろ。

と、口には出せないようなもの凄く汚い言葉で堰を切ったように頭の中に悪態が湧いてくる。

”うっぜ”

そう心の中で吐き、おじさんを一瞥もせずまるで声が全く聞こえなかったかのようにその横をすり抜ける。

そして、罪悪感。

なんて私はダメな人間なんだ。
足の悪いおじさんに心の中で悪態をついて。
あの電車に乗り遅れたって次の電車は10分後に乗れるんだからいいじゃないか。
こんなに立場の弱い人に怒ってイライラして、なんてダメなんだ自分。

こんなこと日常茶飯事だ。
悪態をついてはいけない人に心の中で悪態をついて、その結果自分を責める。
そしてそんな風に自分を責めてしまうことにもまた自己嫌悪する。

次の電車に乗り込んで発車するまでの数分間、私はずっと気分が悪かった。

乗り換え駅でホームへ降り、また別の電車へ乗り換える。
そこで私は、目の前に自分好みのイケメンを見つけてしまう。

”わぁ!なんてかっこいいの!!”

そう思わず声に出して言ってしまいそうなくらいに彼は私のタイプにぴったりだった。

私は海外に住んでいる。
この地に住んで2年、私は現地の人をかっこいいと思うことが自分は中々無いということに気がついた。
私のタイプはどうもアジア人、特に日本人であるらしい。
白人や黒人の中で、日本人の女の子の友達が「あの人かっこいいー!」と目をハートにするような顔も私はかっこいいと思わない。それより、隣のなんともない普通の顔のアジア人の方が性的に魅力的である。私はずっとそうだった。

その私が”かっこいい”と思う顔である。そんな顔に、ここ2年で初めて出会ったかもしれない。

そのイケメンは友達らしき人物と何やら楽しそうにずっと話している。
横顔も唇も目も鼻も、すらっとした足も背の高さも全部かっこいい!
特に私は彼の丸顔が好きだった。
とてもキュートで可愛らしい。

そして、もしこんなイケメンとつきあえたら〜…

と妄想が始まる。
その間に、私はさっきのおじさんのことも、自分に対して持っていた自己嫌悪もスルスルと手放していった。

はて、さっきの感情はどこへいったんだ?と思う。

ならば最初からおじさんのことでイライラする必要なんて無かったじゃあないか。
その時間がとても自分にとって無意味なものであったことに気づく。
そうなのだ。

今ならば、

”さっきは電車に乗り遅れさせてくれておじさんありがとう!あなたのお陰で海外で初めてこんなイケメンに出会えました”

と感謝すらできる。

そこではっ!っとする。

人生ってこんなものなのかもしれない。
何か嫌なことがあっても、絶望の中にいても、大きな挫折をしても、それらは全てその次に来る幸せに繋がっているのかもしれない。

だから、大きな嫌なことがあったらこう思えばいいのだ。

”これはこの先の幸せに繋がっているから大丈夫”

もしこう考えていれば、電車に乗り遅れた時おじさんに最初からが感謝できたのではないか?
おじさんを責める自分に自己嫌悪せずにも済んだ。

結局、最終的に幸せを感じることができれば、あとはそれに繋がっていたと思えばいいのだ。

実際繋がっているのだから。

それは嫌なことが連続で続いても同じである。
そのために、幸せを心で”めいっぱい”感じることはとても重要なことのように思える。
何か良いことが起きた時、

”良かった”

だけでなく、

”わあ!なんて幸せなの!やっぱり私にはこういう嬉しいことが来るってわかってた!”

と思ってみることである。
実際に口に出してもいいかもしれない。
そうすれば、どんな嫌なことも、不幸も、挫折も自分に降りかかった時に同時に”私には次に幸せが来るとわかっている”と思えるからいつまでもそこで留まっていることはないのではないか。
むしろ、この不幸があって良かったと思えるかもしれない。

丁度おじさんの遅さで電車に乗り遅れた”お陰で”イケメンに出会えたように。

そうやって毎日の考えを変えていこうと思う。
そして、明るい幸せに満ちた人生を送ろう。

今日もまた一つポジティブになった。






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