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この経験の何を忘れないようにすればいいのか|10/27〜11/2

佐藤李青(東京アートポイント計画)
緊急事態宣言のなかで始めた日々の記録。火曜日から始まる1週間。仕事と生活のあわい。言えることもあれば言えないこともある。リモートワーク中心。出掛けることが増えてきた。ほぼ1か月前の出来事を振り返ります。

2020年10月27日(火) 自宅

朝、テレビでニュースを見ていたら、政府は「主催者がいない季節行事」に対して感染防止対策の徹底と出来ない場合の自粛を要請するのだという。ハロウィン、クリスマス、年越し、初日の出…。イベント化したものならまだしも、年中行事は、そもそも主催者うんぬんの話ではないのではないだろうか。何か引っかかる。
終日在宅勤務。今年に入って、開催が延期になっていたクロストークの企画が動き出す。ゲストまで決まっていて、半年止まっていた。日程を再調整し、年内から始まりそう。だけど関係者が多いため、日程調整からして困難を極める。
航空会社の収入源のニュースも飛び交う。

2020年10月28日(水) 秋葉原→自宅

Tokyo Art Research Lab 東京プロジェクトスタディの参加者が一同に介する共有会のミーティング。来月、STUDIO302を使って実施するため、現場で当日の進行や機材の使い方を検討する。この頃、STUDIO302の企画での撮影や配信まわりは、ABI(Art Bridge Institute)の齋藤彰英さんに頼りっぱなしだ。今回の共有会ではスタディのナビゲーターや運営スタッフはSTUDIO302に集まるオフライン。スタディ参加者はZoomを介したオンライン。集合写真を、どう撮るのか? が話題にあがる。モニターの前にオフラインのメンバーが並ぶのか? それか後で画像を組み合わせるか? モニターを手にもったときの遺影感はなんなのだろうか? 紙の集合写真では、欠席者の顔を丸囲みで合成する手法があるけれど、これから新しいやりかたが生まれてくるのだろうか? 時事的な雑談に発展する。

2020年10月29日(木) 自宅

夏休み、最後の1日を消化する。都立大学の授業の準備をする。今週は『あわいゆくころ』の「二年目」が題材。事前に学内のオンラインシステムの掲示板に投稿されていた受講生の感想を確認する。前回は本の引用と感想をすべて読み上げるという愚行を試みたけれど、今回は方向転換し、「二年目」から現れてくるトピックを話す。
物理的な復旧が進み、季節が変わることで自然(緑)が息づくようになる。そのなかで瀬尾さんが語った「うつくしさ」について触れる。震災の爪痕が生々しい風景が減っていくことは、記憶を呼び覚ますものが減っていくことでもある。思い出すために残す、思い出してしまうから残さない、という「震災遺構」の議論を話す。こうやって振り返ると、震災直後はけっこう建築の話題が多かったのだと気がつく。
では、「コロナ禍」を、どう残すのか? 3月11日のような記念日はない。壊れた建物もない(かたちに残るようなダメージがない)。そもそも、この経験の何を忘れないようにすればいいのか?(過去の感染症の経験は、どう記憶されているのだろうか?)という問いを投げかけて終わる。 もちろん、自分のなかでも回答はない。
授業の冒頭では『あわいゆくころ』に収録された「みぎわの箱庭」の朗読映像を流す。みやぎ文化芸術応援事業「トモシビ・プロジェクト」で制作されたもの。オンラインでやりとりするには、こういうものがあるのはありがたい。
国内感染者数が10万人を超える。東京都の新規感染者数は220人。横ばいの微増。感染が再び拡大している欧州は各地でロックダウンが始まっている。

10月30日(金) 市ヶ谷

朝から出社し、午後は在宅にしようと思っていたけれど、いろんなことが終わらず、そのままオフィスに残って仕事をする。係会(注:東京アートポイント計画のスタッフ定例会)では、東京都とのやりとりが話題になる。この数ヶ月、来年度の予算要求が進んでいる。例年よりも細々と予算の積算理由や事業の効果性について都から質問が続いている。文化事業に限らず、全体的に来年度の予算は厳しくなっている。税収の減少とコロナ対策費がかさむため、というのはニュースでもやっていた。
夜、Twitterを見ていたら「ギリシャで地震」という情報が流れていた。詳細は不明なうちに寝てしまう。

10月31日(土) 自宅

トルコ・ギリシア地震のことが朝のニュースでとりあげられていた。まちなかが浸水していく津波の映像が流れている。「オーマイガッ」と繰り返す声が入っている。英語? 観光客の映像なのだろうか? 1999年にもトルコでは大地震があったのだという(イズミット地震)。亡くなった人の数は1万7千人。東日本大震災で亡くなった人の数に近い(1万5,899人/2020年3月現在/警察庁)。「近さ」を感じると、急に情報が入ってくるようになるから不思議だ。
イギリスでは首相が11月5日から4週間のロックダウンを発表。3月以来の2度目になる。北海道は新規感染者数最多の81人。2日連続での最多更新。東京都の新規感染者数は215人。3日連続200人超え。WHOは30日の会見で新型コロナウイルスは「相当数の人に、深刻な後遺症を残す」と警告。

11月1日(日) 自宅→荻窪

朝早くに目が覚める。パソコンに向かって、午後のミーティング用のメモをつくる。NOOKが中心となって進めている、震災後の仙台であったあれこれを振り返る会に誘ってもらい、自分が見聞きしてきた範囲で話を共有する。種が蒔かれ、生態系のようになり、いくつもの活動が群雄割拠している。ひとつの流れがあるのだと思う。いつか細部をきちんと詰めて確かめたい。知らなかったことが、たくさんあったのだということも知る。

11月2日(月) 自宅

午前にZoomのミーティング。相手が「やりたいことやらないと駄目ですね」とつぶやいたので「やりたいことをやればいいんですよ」と背中を押す。どんなに技術があっても、動機に火が付かなければ始まらない。
昨日の大阪都構想の住民投票は否決となった。確定した票数は賛成67万5829票(49.37%)、反対69万2996票(50.63%)の僅差だった(投票率は62.35%)。明日のアメリカ大統領選のことが頭をかすめる。

(つづく)

noteの日記は、Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」のテスト版として始めたのがきっかけでした。10月の書き手は、木村敦子さん(クリエイティブディレクター/アートディレクター/編集者)→矢部佳宏さん(西会津国際芸術村 ディレクター)→木田修作さん(テレビユー福島 報道部 記者)→北澤 潤さん(美術家)です。
東日本大震災から10年目、いま何を考えていますか? 問いかけからはじまる寄稿シリーズ。美術批評家の椹木野衣さんの「心の底に降りてあるもの」とは? ぜひ、お読みください。
東京アートポイント計画の10年を凝縮した『これからの文化を「10年単位」で語るためにー東京アートポイント計画2009-2018ー』がBASEで販売中! PDF版は、こちらでお読みいただけます。


佐藤李青(東京アートポイント計画)
アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー。東京アートポイント計画、Tokyo Art Research Lab、Art Support Tohoku-Tokyo(-2020)を担当。共著に『10年目の手記 震災体験を書く、よむ、編みなおす』(生きのびるブックス、2022年)。