新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症やコロナワクチンについては、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

ここにも表現による継承がある|6/20〜6/24

佐藤李青(東京アートポイント計画)

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事中心。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中に開始。3回目の宣言解除の日から再開、少し休んで「第6波」から再々開。すぐに途切れて、再々々会。もう3年目。

2022年6月20日(月) 市ヶ谷→自宅

朝から暑い。昨日は能登で震度6弱の地震があった。何かに追い立てられているわけではないけれど、記録はすっかり滞りがちになってきた……。

2022年6月21日(火) 市ヶ谷

係会(注:東京アートポイント計画のスタッフ定例会)。来年度の予算要求は7月中に固めることになりそう。オフィスの引っ越しは7月30日と31日で決定。8月1日からは引っ越し先で仕事がスタートする。とはいえ、いまのオフィスに引っ越す前にいたビルの違うフロアに移動するに過ぎない。でも、気分は変わりそう。個々の動きの進捗を共有し、細々とした予定を確認する。
『暴れ川と生きる』を読んでいて、大きな発見をする。世界中の河川にまつわる資料を集めて私設の「古賀河川図書館」を設立した古賀邦雄さんが長年の研究で「思い至った」という「水には三つの循環がある」という話。

「一つめは“自然的水循環”。これは生物のための水循環です。海水が蒸発して空に上がって、それが山に雨を降らし、地下水脈を通って森や川に流れていきます。そしてまた海に還ります。その繰り返しの中で森では植物が生きてゆけるし、川では魚が育まれます。
 二つめの”社会的水循環”は、人間のための水循環です。人間は川にダムや用水路、堰などをつくります。水資源を利用するインフラをつくって、川の水を増水し、農業用水、飲料水、工業用水、発電などに使います。使ったら下水処理をして川に流して海に戻ってまた循環します。
 そして、川には古代から文化があります。筑後川だとエツや河童の伝説があります。民話や民俗行事も同様です。水の文化は古から現代に繋がり、未来へも繋がっていきます。これが三つめの”文化的水循環”です」

澤宮優『暴れ川と生きる 筑後川流域の生活史』忘羊社、2022年、26-27頁。

この3つは「別個のものではなく、お互いが重なり合っている」。
たとえば、Tokyo Art Research Labのディスカッションでゲストの吉椿雅道さんが「土着知(local knowledge)」を知ることが大事であると語っていたことや、瀬尾夏美さんが語っていた継承の実践のこと。東京アートポイント計画で「災間・減災・レジリエンス」をテーマに掲げるにあたって「地域の災害の記憶を減災の知恵として活用する」という例を挙げたこと。そして、新たな事業の「カロクリサイクル」(まさに循環!)が始まったこと。この「文化的水循環」ということばで、一連の取り組みの意義が、はっきりと見えてきた。かつてはコミュニティのなかで意識せずとも続いてきた文化的な循環を「事業」というかたちで意識的につくりだすことが必要なのでは? もしくは、そもそも循環は、外の人がかかわることから生まれてくるのかもしれない……。強力な味方(見方!)に出会えて、しばし興奮が冷めやらない。

2022年6月22日(水) 自宅

何しろ暑い。昨夜は下の子が耳の下が痛いという。先週の上の子の骨折に続き、家族の健康が揺らいでいる。かくいう自分も先週は歯の詰め物が取れた。詰め物の下には虫歯が出来ていた。歯医者で神経ぎりぎりまで削られる。詰め物は仮のため、ものを噛むと痛む。ぼろぼろである。
「ジムジム会」に自宅からオンラインで参加する。今回はシミンズシーズの方をゲストに「ブランディング」をテーマとしたレクチャー&ディスカッション。ブランドには一貫したメッセージが必要、〇〇といえば□□という信頼、志ー行動ー表現物(デザイン)、強いブランド=意味よって差異化、whyに心を動かされる、独自のストーリーや存在意義を示す、ことばの定義を揃える=理念、短くコンパクトに伝える、肝は「不易流行」、「らしさ」を言語化する、不変部(こだわり続けてきた部分、強み、社会のなかでの役割)、理念を共有するインナーブランディング……キーワードをメモする。ここ数年、東京アートポイント計画では「発信」事業に力を入れてきた。共催している事業の現場のことではなく、「東京アートポイント計画」として伝えることを考えてきた。その議論を振り返るような内容だった。
ブレイクアウトルームで議論に参加しながら、東京アートポイント計画の対象者とは、まず、このジムジム会に参加している共催団体のメンバーなのではないか、と改めて思う。そのメンバーがよりよい活動をつくれるようにサポートする(ジムジム会は、その方策のひとつ)。現場の参加者数や満足度とは、異なる角度から成果を捉える必要があるのだろう。だから「東京アートポイント計画」としての成果は見えにくい。さて、どうするか、は宿題。
夜になってYahoo!ニュースで「アフガンで地震 900人超が死亡」の記事を見かける。NHKでは「1000人死亡 ケガ1500人」、マグニチュードは推定5.9であることを「国営メディア」の情報として伝えていた

2022年6月23日(木) 市ヶ谷→秋葉原→入谷

こうやって日々の記録をしていると「日付」に敏感になる。沖縄慰霊の日は、この記録をしはじめてから自覚的になった日付のひとつだ。「カロクリサイクル」のミーティングで、瀬尾さんから「あなたの沖縄|コラムプロジェクト」について教えてもらう。noteに「戦争も復帰も知らない」90年代生まれの人たちが「私たちの見てきた沖縄のこと」が記されていた。発端について代表の西さんは「小森瀬尾ラジオ」や「ラジオノーク」を聴いていたこと、そこにコメントを送ったことなどを書いていた。こうやって実践の連鎖は生まれてくる。カロクリサイクルでは各地の災禍の経験にかかわる人たちのネットワークづくりも目指している。すでに実践をしている人たち、先輩たちとの関係だけでなく、「間」の世代として、より若い世代の人たちの実践を後押しすることも大事になってくるのだろう。

7月末から8月にかけて予定しているワークショップの会場を検討する。入谷のSOOO! Dramaticが候補にあがったので、実際に行ってみることにする。ワークショップには、ちょうどいい空間だった。
周囲を歩いてみると、まちの雰囲気もいい。解体中の学校を囲いの合間から覗くことが出来た。SOOO! Dramaticにチラシがあった「入谷の記憶を未来に繋ぐ会」がかかわる旧坂本小学校だろうか。ふらふらと歩くだけで断片的な情報がつながっていく。そんな網の目のような情報のまとまりを「地域」と呼ぶんだろう。帰りは上野駅まで歩いてみた。夏の夜を体感できる、ほどよい距離だった。

「沖縄全戦没者追悼式」で小学校2年生の徳元穂菜さんが朗読した詩の「こわいをしって、へいわがわかった」は、佐喜眞美術館で丸木俊・位里が描いた「沖縄戦の図」シリーズを見たことから生まれたのだという。電車のなかで、ニュース記事を読んで知った。ここにも表現による継承がある。これを「循環」にもっていけるかは、また別様の実践が必要なのだろう。

2022年6月24日(金) 市ヶ谷→自宅

午前は財団の人事ヒアリングを受ける。ランダムで選ばれた職員が、次の財団の人材育成計画を検討するために意見聴取を受けるものなのだという。いまの仕事、組織、やりがい、課題、改善すべきこと……数々の質問に次々と応答する。これは聞くほうが大変なのでは……。

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2021年の記録から)

▼ 2年前は、どうだった?(2020年の記録から)

佐藤李青(東京アートポイント計画)
アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー。東京アートポイント計画、Tokyo Art Research Lab、Art Support Tohoku-Tokyo(-2020)を担当。共著に『10年目の手記 震災体験を書く、よむ、編みなおす』(生きのびるブックス、2022年)。