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【新規パートナー募集!】テーマ「災間・減災・レジリエンス」についてーこれから起こりうる、個人では抱えきれない困難に備えるアートプロジェクト

「東京アートポイント計画」では、アートプロジェクトを展開するパートナーとなるNPO(NPO法人のほか、一般社団法人、社会福祉法人など非営利型の組織も含む)を募集中です! 

今回のパートナー募集では、これまでの東京アートポイント計画の経験を踏まえ、現在の社会情勢への応答、そして来るべき社会への準備として、以下のふたつのテーマを設定しました。

多文化・共生・コミュニケーション
分断や孤立が進む社会において、互いを知り、関係性を紡ぐアートプロジェクト。地域社会において、さまざまな文化を有する人々が生きやすいコミュニティづくりを指向するもの。
災間・減災・レジリエンス
近い将来に向き合うことになるであろう、個人では抱えきれない困難に備えるアートプロジェクト。地域社会において、社会や個人が抱える困難に対する対応力を養うもの。

このふたつのテーマから、地域の課題と向き合うNPOのみなさまとともに、アートプロジェクトが得意とする関係性づくり・仕組みづくりを目指します。この記事では「災間・減災・レジリエンス」というテーマに込めた背景をご紹介します。

災間・減災・レジリエンス ? ーー個人では抱えきれない困難に向き合う力を養う

震災、水害、感染症などーー近年、国内各地では大小さまざまな災害が頻発しています。わたしたちは、いままさに異なる災害の間である「災間」の社会を生きているともいえるでしょう。突然起こる災害には、平時から備える「減災」の取り組みが必要です。災害は起きてしまう。その被害を最小限に抑えるためにできることを、災害が起こる前から実践しておくことが求められています。

今回、公募テーマには「レジリエンス」という言葉も掲げました。これは困難からの回復や、変化した状況に適応する力を意味するものです。災害に代表される個人では抱えきれない困難に向き合う力を、アートプロジェクトを介して養うこと。そのための手法を一緒につくっていくパートナーを募集しています。

▼ 東京アートポイント計画と連携した事業「Tokyo Art Research Lab」では国内外の災害復興の現場にかかわってきたゲストを迎え、半年をかけて「災間」を議論しました。

いまの社会において個人では抱えきれない困難とは、災害に限りません。人口減少、少子・高齢化社会ーー2030年には日本の人口の1/3が65歳以上の高齢者となるといわれるなかで、さまざまな課題が日々の生活において現れてきています。

2020年から日本国内でも拡大を始めた新型コロナウイルス感染症の影響は、人と人との距離を変え、そこから引き起こされる社会的な孤立は、コロナ禍以前から社会が内包していた課題をも先鋭化させつつあります。

東京アートポイント計画はアートプロジェクトを介して、多様な人と人とのかかわりづくりを行ってきました。この「かかわり」は個人が抱えるさまざまな困難に「ともに」向き合う力になるともいえます。

たとえば、ある東京アートポイント計画の現場の経験からは、次のようなことがわかりました。

強弱のあるネットワークとは、活動に紐づいた役割がはっきりと見えやすい「強い」関係と、日常生活と地続きでたまに見えるようになる「弱い」関係の網が重なっている状態といえる。活動を通して形成された強い関係は、時間をかけることで次第に日常へと溶け込んでいく。弱い関係は普段は見えにくいが、何か必要なときに現れ、セーフティネットのように機能する。

「「コミュニティ」が育つ環境をつくる」(中間支援の9の条件)『これからの文化を「10年単位」で語るために ― 東京アートポイント計画 2009-2018 ―』アーツカウンシル東京、2019年。

事業で生まれた関係は、事業だけでなく、かかわった人たちの日常のなかで使えるものになる。それは「何かあったとき」に大事な関係として機能するものとなるでしょう。

コロナ禍で変わりつつある人と人とのかかわりを解きほぐし、紡ぎ直すことーーこれまでの東京アートポイント計画の経験と現在の社会情勢への応答、そして来るべき社会への準備として、新たなパートナーの方々と取り組んでいきたいと思っています。

アートプロジェクトで「かかわり」をつくる

今回のパートナー公募にあたっては、地域の災害の記憶を減災の知恵として活用するプロジェクトや、個人の抱える困難と向き合っている人への文化的処方を考えるプロジェクトを例にあげています。あくまで「例」なので、まったく同じ目的の事業とする必要はありませんが、今回のテーマに関連するものとして、東京アートポイント計画にかかわる取り組みには以下のようなものがありました。

▼ Art Support Tohoku-Tokyo(東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業/2011-2021年)

2011年7月から「東京アートポイント計画」の事業スキームを使い、東日本大震災の被災地域(岩手県、宮城県、福島県)のアートNPO等の団体やコーディネーターと連携し、その土地に暮らすさまざまな分野の人々が主体となるような交流プロセスを重視したアートプログラムや、それを支える仕組みづくりを行いました。

つながる湾プロジェクトでは「湾の記憶をたどる旅スゴロク」をつくることで、
宮城県松島湾エリアの文化資源を楽しみながら体験し、共有する取り組みだった。
福島県いわき市の復興公営住宅「下神白団地」で展開した「ラジオ下神白」では、アーティスト/文化活動家のアサダワタルさんが定期的に団地に通い、住民のみなさんの思い出の曲をきっかけに話をうかがい、ラジオ番組として届ける活動を行った。

※ Art Support Tohoku-Tokyoのその他の事業は↓よりご覧いただけます。

▼ Artpoint Meeting #09 - 生きやすさの回路をひらく -(2020年)

東京アートポイント計画によるトークシリーズ「Artpoint Meeting」では家庭医の孫大輔さんをお招きし、「生きやすさ」をテーマに対話を行いました。東京アートポイント計画は、事業の現場にかかわる人たちの生きやすさの回路をひらいてきたのではないだろうか? そんな問いから対話をはじめ、孫さんからは「文化的処方」という考え方が話されました。今回の公募の例で触れた「文化的処方」という言葉は、このときの議論から引き継いだものです。

孫:医療従事者には、現在も文化に対して距離感があるんです。演劇などをしていると、関係者からは「時間があっていいね」と言われてしまう。従来、医療とアートの関わりというと精神科が中心で、それ以外の領域ではあまり馴染みがなかったんですね。でも、糖尿病や認知症のような慢性疾患が中心になった現在では、治療が病院では完結せず、地域に戻ったあとのケアも大事になる。また、ストレスが高い人ほど血糖値が上がり、糖尿病のリスクが高くなるという風に、身体と精神の問題はじつは切り離せないものです。
そのときに、文化の側面が重要になるのです。自分たちは、ウェルビーイングに働きかける取り組みをする際、演劇や落語やアートなど、地域文化を活用したアプローチをしたいと考えていて、それを社会的処方と比較して「文化的処方」と呼んでいます。

▼ 対話の記録全文は以下のリンク先からお読みいただけます。

そのほか、東京アートポイント計画や関連事業のTokyo Art Research Lab、Art Support Tohoku-Tokyoの事例を知りたい方は、以下、Tokyo Art Research Lab「図書室」のページから、さまざまな記録集のデータがPDFでご覧いただけます(郵送をご希望の方は、着払いで送付可)。ぜひ、こちらもチェックしてみてください! 

ご応募お待ちしています!

以上が今回の公募テーマのひとつ「災間・減災・レジデンス」のご紹介でした。今回の公募の締切は2月25日(金)です! 地域の課題へ、文化でともに向き合う、NPOのみなさまからのご応募をお待ちしています!

▼ 公募の詳細は↓からご確認ください。