新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
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世は空前の日記ブームである|7/7〜7/13

緊急事態宣言のなかで始めた日々の記録。火曜日から始まる1週間。仕事と生活のあわい。言えることもあれば言えないこともある。リモートワーク中心。そろりと外に出始めた。ほぼ1か月前の出来事を振り返ります。

2020年7月7日(火) 自宅

今日もこどもの看護休暇。咳が続いている。大雨のニュースが止まらない。熊本の豪雨から、九州の豪雨へと地域の規模が大きくなっていく。死者は50名を超えた。原爆の図 丸木美術館から美術館ニュースやチラシが届く。同封されていた「水俣病読書のご案内」のリーフレットが目を引く。1頁に1冊ずつ数百字の解説が付いている。制作は認定NPO法人水俣フォーラム。端正なデザイン。裏表紙の折り返してあるページが払込票になっていて、切り取れるようになっている。もったいないから、このままにしておきたいけど『水俣病図書目録』を注文したくて切り離す。いまだ行ったことのない水俣。「水俣市は熊本県の最南部に位置する市」(ウィキペディア調べ)。いまは大雨の渦中なのだろう。

2020年7月8日(水) 自宅

朝から在宅勤務であれこれ連絡や細々としたやりとりを重ねる。合間に『丸木美術館ニュース』(2020年7月15日号)を読む。学芸員の岡村幸宣さんが、丸木美術館の休館から再開までの記録を日記形式で綴った「静かな春 丸木美術館の臨時休館と緊急支援の記録」が掲載されていた。すかさず編集者の川村庸子さんにメールする。ウェブサイト『Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021』の企画「2020年リレー日記」で岡村さんにも1週間分をお願いしていた。そうでなくとも最近は日記の企画を目にすることが増えた。世は空前の日記ブームである。
夜は『Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021』のオンラインミーティング。7月と8月にリリースするサイトのページデザインを確認する。
ここ数日で同じようなイメージを違う人を相手に話している。人やスキルの共有地(場所なのか、仕組みなのか?)を、どうつくれるか。頭のなかではインドネシアのルアンルパの実践がちらついている。

ルアンルパがドクメンタ15の出発点として掲げたコンセプト「ルンブン」は、インドネシアの言葉で共同体の公益のために収穫した米を貯蔵したり、仲間や困窮者の緊急支援のために使用する共同倉庫を意味し、価値観の共有、集団的な慣習、構成原理などを中心に組織される。それはドクメンタ15のために練り上げられたコンセプトではなく、資源や時間、エネルギー、資金、アイディア、知識の共有を積極的に行なってきたルアンルパの日常的な実践に深く浸透し、その活動の方法や価値観を要約したものであり、そのコンセプトが示す連帯や集団性という価値観は現在、かつてないほどにその重要性を増している。
「ドクメンタ15がコンセプトや製作体制を発表」ARTiT、2020年6月30日。

東京都の新規感染者数は75人。100人を下回るのは7日ぶり。九州豪雨は死者57人、行方不明者16人。福岡県内4000件が浸水。ニュースには、いくつもの数字が並ぶ。厚生労働省のコロナアプリ(新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA))に「陽性」の登録者数は3人。この数字の差しこみ方に若干の悪意を感じる。

2020年7月9日(木) 市ヶ谷

気象庁は9日、熊本、鹿児島、福岡、佐賀、長崎、岐阜、長野の7県に大雨特別警報を発表した現在継続中の7月3日からの豪雨について、「令和2年7月豪雨」と命名した。継続中のため、今後発生する可能性がある一連の現象についても、同じ名称を使う。
「現在継続中の豪雨の名称は「令和2年7月豪雨」 気象庁が命名」Yahoo!ニュース、2020年7月9日。

朝から出社。雨が降る。各地の大雨のニュースが続く。電車は満員。日常の風景。午前中にメッセンジャーでACF(Artist Collective Fuchu)のミーティングに参加。ひとりだけオンラインだと話をしても聞こえているか心配になる。これから拠点をどうつくっていくのか。話を聞いていて、神戸のC.A.P.(芸術と計画会議)のことを思い出す。アーティストが集まって、行政にミュージアムの提案を出したという経緯。ウェブサイトを見ると提案の詳細がアップされていた。
前回のミーティングの話がいいかたちで膨らみ、次の展開を整理する段階になっている。当面の事業の計画を立てるということと、自分たちの考える理想を提案としてまとめていくこと。両輪で進んでいけるとよさそう。今月は毎週ミーティングを重ねて、事業を一気につくりこむ。
ミーティングを中座して、財団で導入する新たな勤怠システムの説明をきく。操作をしながら使い方を確認する。来月から本格導入。残業や休暇の取得を手書きでしなくて済むようになる。月の残業時間が法定労働時間数に近づくとアラートが飛ぶらしい。
対面での係会(注:東京アートポイント計画スタッフの定例会)。勤怠システムの説明会もあって、ひさしぶりにメンバーが揃う。この状況で、どの程度まで事業は出来るだろうか。出張は行けるのだろうか。気分は日常に戻ってきているからこそ、いま一度、オフィシャルなラインを確認する。
自分の「担当」以外の仕事に目配せしながら動くやりかたがオンラインベースだとやりにくい問題。出社すれば対面で会える。でも、溜まっている仕事をこなすために、自分の仕事に集中しなければならない。だけど、そういうときこそ、あえて自分に関係のない仕事の話をすることが出来るといいのかもしれない。複数人で仕事をオーバーラップさせながらも、ひとつひとつの仕事の精度を上げていく方法を考える。一人ひとりの仕事のこなしかたが問題なのではなく、接点の不具合が問題なのだろう。(いま流行りの)意識と行動の変容が求められている…のか。
係会の終盤で東京都の新規感染者数が224人というニュースが舞い込む。兵庫県知事は東京を感染拡大の「諸悪の根源」と発言し、直後に「諸悪」は取り消すと言ったのだという。東京が拡大の「根源」であることは周知の事実か。出社日はどうしても残業が長引く。日付が変わってからの帰宅。文化庁の支援パッケージ(文化芸術活動の継続支援事業)の応募資格について解説した作田知樹さんのFacebook投稿をシェアする。忙しくなると近くにある(はずの)動向が追えなくなる。日常の出来事と新規感染者数のようなトップニュースの間にある情報。それこそが身近な「社会」を構成する大事な情報になるのだろうけれど。

2020年7月10日(金) 自宅

朝から『Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021』連載用の原稿に取り組む。がけっぷちである。午後にZoomで「移動する中心|GAYA」のミーティング。『世田谷クロニクル 1936-83』の映像データのタイムコードをつくるというベタの作業と、個々の映像から引き出した言葉を残すというメタの作業の塩梅を探る。終わりがけに松本篤さんが「パズルのピースが埋まるようにすっきりしたのと、もやもやするところはもっともやもやしました」と感想を述べる。もう一巡、議論をして終了。東京都の新規感染者数は243人。過去最多を記録する。もう数字の伸びに驚かなくなってきた。

2020年7月11日(土) 自宅

11日。東日本大震災から9年4ヶ月が経つ。毎日新聞朝刊に「10年目をきくラジオ モノノーク」の記事が掲載される。オンラインのニュース記事は有料会員限定で全文は読めなかった。昼前のJ-Waveに瀬尾夏美さんが出演。「10年目の手記」について話す。パーソナリティが最後に10年目に思うことがあるかと質問をする。これまで震災の経験は人に聞かれることが多かっただろう。そのときは(聞く側も求めるような)強い経験を語ることになったのだと思う。でも、震災の経験は、もっと日常のなかにもあるはずで、いまはそれを自らの言葉で語る(語れる)タイミングなのではないか、と瀬尾さん。このやりとりが印象に残る。モノノークのYouTubeチャンネル登録者数が100人を超える。チャンネル名をカスタムURLに変更。『Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021』の「復興カメラ 今月の1枚」の1回目が公開。いいかたちで動き出してきた。
午後、駅のほうに買い物に出かける。混んでいる。ライフミュージアムネットワークで来週予定していた東京でのヒアリングが延期になる。福島県立博物館の方と福島県の浪江町から東京に避難してきた方のお宅に伺う予定だった。「コロナが収束して東京に行けるようになったら」。それはいつになるだろうか。一気に収束するとは思えない。けれど、気分は一気に日常化する可能性もある。というか、増加した数字にもだいぶ慣れて、すでに、この状況が日常化しつつある。楽観的でも悲観的でもない。ただただ先のことがわからないと思う。東京都の新規感染者数は206人。菅官房長官が「この問題は圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではない。東京中心の問題になってきている」と発言したというニュースを目にする。Twitterで見かけたTwitterらしい投稿。

東京都「他県への移動は控えて」
首都圏「県を跨ぐ移動は控えて」
国交相「再来週の4連休からGoToトラベル!!!」
私「ちょっとそちらで要件握ってから持ってきてもらっていいですか?」

2020年7月12日(日) 自宅

終日暑い。ブックオフが混んでいた。東京都の新規感染者数は206人。国が東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県で休業要請を検討し始める。風向きは変わってきているのだろうか。北海道白老町のウポポイ(民族共生象徴空間)が2度の延期を経て、オープン。Go Toしたいけど、保留。

2020年7月13日(月) 自宅

昨日から一転して朝から肌寒い。今日も各地の大雨のニュースは続く。
新宿の舞台公演で発生したクラスターの影響範囲が広がってきている。体調不良の出演者がいた。主催側はそれを把握していた。出演者17人、スタッフ5人の陽性確認。濃厚接触者はスタッフ、観客など約850人。何が起こっていたのかを伝える情報が更新されていく。繰り返し、ニュースになっている。
夕方になって、大阪のココルームで、宿泊者に陽性の人がいたことが分かった詳細な経緯や対応が書かれたFacebookの投稿が公開されていた。7日に判明、保健所からの連絡対応、濃厚接触者の特定や接触可能性のありそうな人のリストづくり、消毒や各所への連絡。いまもココルームは閉じている。もし、身近なところで起こったらどうなるか。想像すると身体がこわばる。
陽性となった本人は経緯の公表を拒んだのだという。「Aさんの気持ちとココルームの責任について考え、Aさんに最大限の配慮をしたうえでの公表を選ぶこととする」という一文の重みを考える。

さて、陽性者の方に負い目を感じてもらいたくありません。けれど、わたしもこの話を誰かにお話するさいに、つい「ごめんなさい」と前置きしてしまいます。感染防止につとめていなかったんではないか、と落ち度を思ってしまうからです。でも、この世を一瞬たりとも落ち度なく生きることなどできるのでしょうか。そして、そういう場面に多くさらされるのは、どちらかというと弱い立場の人々ではないでしょうか。
(中略)
声にしにくい気がかり、不安、心配、違和感、弱さも表しあいながら、そして、表しあうことから生まれる可能性や創造性、関係性を開いていきたいと思います。もっとも可能性とは不可能性をふくむと考えます。調整や更新を重ねるために失敗もするものだと思います。ココルームの挑戦と創造性は、日々のちいさな積み重ねのなかにあります。だからこそ開示して、経験を更新していきたいと思います。
上田假奈代「ココルーム宿泊者に新型コロナウイルス感染症の陽性の連絡が入ったその日から」2020年7月9日。

細部があるから、それを体験していない人でも出来事を後追いし、想像が出来る。自分の身に置き換えることが出来る。いまは事前の対策が、もちろん必要だとしても、事後の影響範囲を想定した行動設計も必要なのだろう。事後の想像力を獲得するには、すでに起こってしまった経験を知ることが助けになる。公表の「責任」とは起こったことに対してではなく、他者と「これから」を想像することから生じるものなのだろう。

(つづく)

noteの日記は、Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」のテスト版として始めたのがきっかけでした。6月の書き手は、是恒さくらさん(美術家)→萩原雄太さん(演出家)→岩根愛さん(写真家)→中崎透さん(美術家)→高橋瑞木さん(キュレーター)。以下のリンク先からお読みいただけます!
東京アートポイント計画の10年を凝縮した『これからの文化を「10年単位」で語るためにー東京アートポイント計画2009-2018ー』がBASEで販売開始! PDF版は、こちらでお読みいただけます。


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アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー。東京アートポイント計画(おもに西側)、Tokyo Art Research Lab(研究・開発が中心)、Art Support Tohoku-Tokyo(東京⇄東北)を担当。ジャーナル「FIELD RECORDING」編集長。運動不足。

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