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#ネタバレ 映画「空に住む」

「空に住む」
2020年作品
野良ネコのようにやってきた男
2020/11/5 9:51 by さくらんぼ(修正あり)


( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

若い頃、人生に悩んでいた私に、ある先輩が「引っ越したら」と言いました。

まるで、「住環境が変わると運命も変わる」と言いたげに。

その時は半信半疑で、引っ越しもしませんでしたが、今は先輩の言うことにも一理あると思っています。

田舎住まいと、都会暮らし。

場末の安アパートか、高層マンションか。

この映画「空に住む」は、偶然、高層マンションに住むことになった、一人の女性とネコの物語です。

(失礼ながら)「薄っぺらいお話かな」と思っていましたが、京料理のお吸い物みたいに、透き通っていても、じんわりと美味しいドラマでした。

★★★★☆

追記 ( ネコの祟りは怖い ) 
2020/11/5 10:32 by さくらんぼ

タワーマンションの高層階へ引っ越したヒロイン・直実(多部未華子さん)は、スター俳優の時戸森則(岩田剛典さん)に声を掛けられました。

そして彼は、手慣れた態度で、直美の部屋に「何か食べさせて」と入り込むのです。

スター俳優ということで油断し、メロメロになりかけた時、彼がとっかえ、ひっかえ、女を連れ込んでいるという噂を聞きました。

衝撃を受けた直美でしたが、悲劇はそれだけではありません。

唯一の家族であるネコが彼におびえ、そのストレスで悪性の病気になり、死んでしまうのです。

つまり、遊びで近づいてきた彼に、大切な家族を消されてしまったわけです。

この落とし前は付けなければならない。

直美はそう考えたのでしょう。

出版社に勤めていましたから、頼み込んで彼の本を出させてもらいます。

しかし、本の内容は直美の胸三寸。

内容次第では彼に致命的な傷を負わせることもできます。

ネコの悲劇を知らぬ彼は、そんなことは夢にも思わずに、「手切れ金(口封じ)」代わりに彼女の取材に応じました。

追記Ⅱ ( 背伸びの効用 ) 
2020/11/5 11:59 by さくらんぼ

この映画「空に住む」の主題は、「背伸び(生存競争)の効用」なのかもしれません。

登場人物の何人かは、良きにつけ、悪しきにつけ、背伸びをしようとしていますから。

ラストシーンのヒロインの、これ見よがしの背伸びもそうでしょう。

男を追い出せなかったネコは、負け組だったようですが。

追記Ⅲ ( 「裁きは天に任せた」 ) 
2020/11/5 14:00 by さくらんぼ

>出版社に勤めていましたから、頼み込んで彼の本を出させてもらいます。

>しかし、本の内容は直美の胸三寸。

>内容次第では彼に致命的な傷を負わせることもできます。(追記より)

しかし、直美は無難な内容の本を作ったようです。

時戸森則も動揺することなく最後のページまで読んでいたようですし、直美の親戚も笑顔で本を抱えていましたから。

では、直美の心境はどうだったのでしょう。

私は「復讐心が一滴も無かった」とは思っていません。

しかし、それを実行するのは極論です。

でも、泣き寝入りして「彼にとって、その他大勢の女の一人」で終わってしまったら、直美のプライドが許せませんし、ネコにも申し訳が立たないのです。

だから、出版という形で永遠に記録することにしたのでしょう。私たちが映画をレビューという形で残すのと同じかもしれません。

そして、それは、ネコの墓標でもあるのだと思います。

しかし、実際のところ、「その本が時戸森則にどのような影響を与えるのかまでは分かりません」。そんな話を直美は出版社でしていました。「裁きは天に任せた」といったところでしょうか。バタフライ効果。その冷たさに、復讐心の一滴が見えますね。

追記Ⅳ ( 名前はまだない ) 
2020/11/5 14:26 by さくらんぼ

>登場人物の何人かは、良きにつけ、悪しきにつけ、背伸びをしようとしていますから。(追記Ⅱより)

直美は高層マンション(タワーマンション)の高層階に引っ越して、スター俳優とつきあい、最後は対等以上の関係になりました。

直美の同僚は、不倫の恋をして、喜んで未婚の母になりました。

直美の出版社は田舎の小さな出版社でしたが、(もうけ話に飛びつくのではなく)「良い本しか出さない」をモットーにしていました。

ところで、あの「ネコ」とは何の事だったのでしょう。

戦うこともなく、生存競争に敗れ、死んだネコです。

この映画「空に住む」は、そんなネコに宛てた手紙だった可能性があります。

追記Ⅴ ( タワーマンションでも背伸びはする ) 
2020/11/5 17:07 by さくらんぼ

>この映画「空に住む」の主題は、「背伸び(生存競争)の効用」なのかもしれません。

>登場人物の何人かは、良きにつけ、悪しきにつけ、背伸びをしようとしていますから。

>ラストシーンのヒロインの背伸びもそうでしょう。(追記Ⅱより)

39階の直美の部屋からは素晴らしい景色が見えますが、窓は開かないようで、ベランダもなさそうです。

彼女が「換気システムのハガキ大のボタン」を押すと、それが数センチ飛び出し、ゴーという換気音が聞こえてきました。外とつながる手段はそれだけなのでしょう。

直美の部屋に飾ってある額縁の作品を見ると、鳥カゴのような、無機質の格子模様ばかりでした。

部屋の中の飾り壁は、古城の崩れかけた石垣、あるいは鳥の巣を連想するものでした。

タワーマンションで生活したことはありませんが、どうやら閉塞感があるようですね。

それが、ラストの背伸びにつながっていくのでしょうか。

すると、「背伸び(生存競争)の効用」というよりも、「タワーマンションでも背伸び(生存競争)はする」の方が近いかもしれませんね。

追記Ⅵ ( バブリーな「ワイン」 ) 
2020/11/5 17:13 by さくらんぼ

BSなどでバブル期に出来たトレンディドラマの再放送を観ていると、やたらと皆がワインを飲むのですね。

昨今のそれにはほとんど出てきませんが、この映画「空に住む」には、豪華な料理とともに、頻繁に出てきます。

どうやら、「ワイン」はお金持ちの記号だったのかもしれません。



( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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