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やりたい介護をちゃんとやろうよ

こんにちは。
施設でコロナが蔓延し、しばらくバタバタとしておりました。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

今回は、前回前々回の続きとなります『介護の毒はコドクです』
から自分の感想を書こうと思います。

この本が一番言いたいことは、今回のタイトルの通り、
「やりたい介護をちゃんとやろうよ」です。

人の最期について考える

私はこの仕事をしていて何度も悔しい想いをしたことがあります。

90歳のハルさん(仮名)との別れもそのひとつでした。

ハルさんは、車いすで生活されていました。
不自由ながらも何でもご自分でされる気高い方でした。
お孫さんのために編み物を編み
”疲れてるでしょう?この部屋で少し休んでいけばいいよ。”
いつもそう笑って言ってくださいました。

そんなハルさんの口癖は
”あぁ、楽しい。こんな風にあなたたちと笑って死ぬのが私の夢ね。”

”若い頃から人のために生きてきたような人なんです”
と息子さんが言われる通り、
穏やかでいつも他の人のことを優先する方でした。

ある日、ハルさんが熱を出されました。
数日立っても熱が下がらない。
念のため、病院で検査をすることになりました。

そんな時でさえ、ハルさんは言いました。
”息子の血圧が高くて調子が悪そうだからあの子を先に連れてってやって”

そして、熱の原因が良く分からないという理由でハルさんは入院することになりました。

お見舞いに行くと、ハルさんは縛られていました。
声をかけると目を覚まし、うつろな目で涙を流しました。
目があったのか、私だと認識できたのかは分かりませんでした。

苦痛で呻くハルさん。
「寝てていいですよ」
そう言って、そっと体をさすることしかできませんでした。

私は駐車場で泣きました。
しばらくそこから動けませんでした。

そしてその後、ハルさんは息を引き取りました。

なぜ90歳のハルさんがあんな目に合わないといけないのか。
なぜ私はハルさんの最期のたった一つの願いを聞いてあげられなかったのか。

強い疑問が私の中に生まれました。

理念は弱い 現実は強い

医療だから 仕方がないから
これは、介護の業界でも聞く言葉です。

ふらふらする人が、事故で転んだらどうするの?
家族から訴えられたら困るでしょう。
少ない人数で見られないよ。

そう。現場では、理念は弱くて脆く、現実が強い。

どこの施設の会議でも
「そんな大変なことになれば、事故が起きるし辞める職員も出る」
そういう意見こそが、現実味と切迫感があって強いのです。

だからこそ、理念を守らないといけないとこの本にはあります。
弱い理念を守り、強い現実から逃げない。

虐待をしたい介護者なんていない

縛ろうと決める人も
言葉で制圧する人も
薬でおとなしくさせる人も
そこにあるのは『安全』『安心』『その人のため』

決して虐待をしたくてそこで介護をしてるんじゃない。

その人はどうしたいの?
認知症のその人じゃなくて
今まで生きてきたその人はどう生きたいと思ってる?
何を探してる?
どこに行きたい?
そこに居場所はある?

介護の仕事だけじゃないけど
いつだって現実と理想の板挟み。

でも、大切なことは大切にしたいです。
時間がない。人がいない。

じゃあ、どうやったらできるかな?
から考えたいですね。



やりたい介護をちゃんとやろうよ


全員が同じ方向を見ること。
そのための愚痴であり、そのための会議であること。

この本の中には、実際に行ってきた具体的な取り組み例もあります。
ここでは割愛しますが、
やりたい介護をちゃんとやろうよ
という言葉だけ、強く心に残したいと思います。

介護の仕事に関わる全ての職員におすすめの本です。


笑っていてほしい。
人生最期だからこそ。
その人が、家族が、最期まで選択して生きられる。

なんとなくいい人生だったよねぇなんて。

私自身も、大切な人も
ごくごく当たり前にそんな最期を迎えられるように

そんな街が施設が
増えていきますように。

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