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私、ここで働いてていいのかな?

駐車場でお尻を出したお母さん


前記事の続きになります。
介護施設での虐待についての本のご紹介です。

介護の毒はコドクです

本の中にこんなエピソードがありました。

それは、施設で働く女性の告白でした。
認知症と診断されたお母さんと、
お母さんを支えるお父さん、妹さんとのお話しです。

認知症は病気だから。
病気は治るから。
介護保険を受けたら負けになる。
彼女のお父さんは、そう信じて
お母さんに介護保険を使おうとはしませんでした。

お母さんの認知症が進むにつれて
お父さんと妹さんは翻弄されていきます。

ある日、女性は夜勤明けでボロボロになって帰宅しました。
その日の夜勤はまさに”悲惨な”夜勤でした。

クタクタになって玄関を開けると
そこには”ごめんよ ごめんよ”と繰り返すお母さんと
もう嫌だと泣き崩れる妹さん、
何をやってるんだと大声を上げるお父さんがいました。

これはダメだと女性はお母さんを車に乗せ、連れ出します。
車で、尿意を訴えるお母さん。
おしっこ おしっこ おしっこ。
さっき行ったばかりでしょう。待って。
そう伝え、ショッピングモールの駐車場に停車させる。

急いで車を降り、横にまわると
駐車場でお尻を出して、おしっこをしているお母さんがいた。

女性はお尻を出しているお母さんを叩いた。
なんでこんなところでおしっこするの?
って何度も何度も叩いたんです。

お母さんは、お尻を出したまま、頭を抱えて言った。
ごめんよ。ごめんよ。って。

勉強会での告白

同じ頃、この女性が働く施設での勉強会がありました。
虐待についてでした。他の男性職場が言いました。

「この施設には、虐待なんてする職員はいません」
もちろん、女性を含め普段の職員の言動を踏まえての発言でした。

女性は、ここで先ほどの告白をしたのです。 

息を吞んだだろう同僚に、女性は言いました。

私、お母さんをたたいた。
もうダメだよね。
私とは一緒に働けないでしょう。

介護施設で働く多くの職員は、国家資格である介護福祉士です。
介護のプロなのです。

それでも、こと自分のこととなると仕事とは違う。

しっかりしていたお母さん。
自分たちを守ってくれてきたお母さん。
悲しくてやりきれない想いは、家族だからこそです。

この女性の告白を受け、先ほどの男性が言いました。

実は自分も、たたきたくなったことがある。
でも、言いたくなかった。
お年寄りのことを嫌だとか、むかつくとか、
そう思っているのを気付かれるのが嫌だった。

自分もたたきたくなったことがある。
けど、たたかない。
あなたはお母さんだからたたいてしまったんだ。
俺たちは、たたかない。

彼女は聞きます。
私、まだここで働いていいですか?

みんな、頷きました。

仕事だから。
湧き上がる負の感情を、仲間がいるから乗り越えられる。

誰もがついついやってしまうことがあります。
怖い顔、急がせるケア、疲れた表情…

それに蓋をせず、共有する。
つい誰もがやってしまうことだからこそ言えること。

”疲れてるね。ちょっと怖い顔してるよ。代わるよ。”
”ごめんね。”
”何言ってるの。お互いさまでしょう。”

こう言いあえる職場を何としても作り上げること。
この本にはそう書いてあります。

愚痴は言うべき。ですがただの愚痴にするのではなく、
前向きな共有”を作るためのマインド(考え方の基礎)を職場で広める必要がありそうです。

そのための方法について、次の記事に書きます。

今日も暑いですね。
セミが鳴いてもおかしくないくらいですが、まだここ名古屋では鳴いていないようです。

今日も皆さんが笑顔で過ごせますように。




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