【東京地下迷宮街】虎を諭す居酒屋【短編小説】
東京の地下には、《何か》がある――。
延々と続く下り階段を降りると、提灯の灯りが私を迎えた。
地下街だ。
古ぼけたコンクリートの壁が途切れ、通路の左右に提灯をぶら下げた店が並んでいる。
酒と、焼いた肉のにおいが漂っていた。
空っぽの胃袋には、かなり堪える。何処かで食わせて貰えないかと思ったものの、何処の店も満席だった。
灯りはぼんやりとした提灯のみで、地下街は薄暗かった。
客はみんな、フードや帽子を目深にかぶっていて、お互いに身を寄せながらぼそぼそと喋って