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人生を豊かに〜記憶を意識する

英単語1つを覚える仕組みって不思議ですよね?何回も書いて、発音して、繰り返して、思い出しているうちに、記憶として、自分のものになる。

神経科学は、まさにこの記憶ってなんだ?を細胞とか分子のメカニズムから紐解いてくれる。難しいお話はしませんが、英単語1つを覚えると、あなたの脳の中の神経細胞のどこかに、その情報が書き込まれているのです。

繰り返し使われる情報、晒され意識が傾けられる情報は、あなたの脳の一部になるということです。それに伴って、本当にミクロな単位ではありますが、物理的に細胞レベルで、分子レベルであなたの脳は変わります。

そんな神経細胞が変わるよー、ということを専門用語では、「神経可塑性」だなんて呼んだりしますが、そんなことより、自分の取り込んだ情報が、自分の一部になっていくということは、やっぱりよくよく考えた方がいいかもしれないと思うのです。

よく食べ物なんかに関しても、同じようなお話がありますね。食べたもの、飲んだものが、口から食道、胃腸を通して、分解され、吸収され、あなたの体の一部となる。だから取り込むものにもちょっぴり意識を傾けるのは重要ですと。

同じことが我々の身の回りや環境から受け取る情報に関してもいえます。自分自身が注意を向けたものと目や耳や、口や鼻や皮膚から情報を取り込み、脳に届けられ、あなたの一部の情報へと変換されていく。

誰かのできていないところ、粗探しをする。そんな脳の回路ばかり使っていると、相手どうこうではなく、自分の脳に刻まれる情報が、誰かのよくない情報ばかりになる。

誰かの陰口を叩いたり、悪口を言ったり、そうやってネガティブな情報をわざわざ思い返して、注意を傾けることで、自分の脳の中にその記憶をわざわざ定着させてしまう。きらい、考えたくもない相手のことを、口に出したり考えてしまうこと、わざわざ自分の脳に展開させることは、その存在を自分自身の一部にしてしまうことになるということ。

記憶はどうやって作られるか?そう簡単には作られません。なんとなくで、聞き流して覚えられるとかいう商品が昔はありましたが、そんな仕組みは脳にはありません。記憶するって大変で、エネルギーを消費します。そんなことを自動的にやる仕組みを持っていません。(子供の脳は、また違う仕組みで覚えやすい構造上の違いがあるので、話は別。)

英単語1つ覚えるのだって、必死になって、何回も何回も書いて、読んで、そうやって、ようやく細胞分子レベルの変化をもたらして、自分のものになりますよね?なんとなくで覚えられません。

なんとなく毎日毎日眺めているスマホ。パッと、今、そのホーム画面のどの位置にどのアプリがあるか全部言えますか?ほとんど言えないと思います。毎日何十回とみているのにも関わらず。記憶ってそんなものです。それが大事なのです。

なんでも、取り込まない。取り込むと脳は大量のエネルギーを消費し、生産的でない。意識して注意を傾けたものに、あるいは脳が興味を持って注意を持ったもの、脳がこのシグナルは記憶した方が生存上いいぞという情報に対して、初めて記憶化させていこうとなるわけです。

脳って、質量比から言ったら全体重の2%ほどですが、グルコースというエネルギーの消費は、25%にも及ぶと言われています。それだけエネルギーの大食漢。無駄遣いしたくないのです。だから、記憶化って簡単ではない。

けど、わざわざ思い出したり、考えたりすることっていうのは、脳にとって重要な情報かもって反応になって、自分の一部として書き込んでいってしまう。自分や他人のよくないこと、粗や、不愉快なことばかりを考えたり思い返したりすることは、自分の脳を不機嫌にしていくということなんです。

そして、逆また真であり、自分の身の周りの世界には、当然、ポジティブな情報がいっぱいあって、それに盲目なことも多いかもしれないですが、それに意識を傾け、取り込み、思い出して味わったり、誰かに共有することで、自分の一部にする習慣は、自分自身の脳に書き込まれる情報をポジティブにして、ご機嫌にしていくのです。

記憶となった情報は、まさにあなたの一部であり、あなた自身です。それがその人の在り方になっていく。ネガティブな情報を多く取り込み、不機嫌な記憶が多い人は、そんな考え方、振る舞いが多くなるでしょうし、ご機嫌な情報を取り込んでいる人は、その人の人となりに、当然現れてくるのです。

ご自身の意識の持ち方、そして環境のあり方、どちらも影響します。まだ強く自分を持てない、周りの環境に流される可能性がある場合は、環境を変える。ポジティブな情報を取り込んでいく環境、文化のあるところに身をおいた上で、ご自身の意識を変えていく。そうすれば、人は変わります。

変わらないという人がいますが大嘘です。人は変わります。それが神経可塑性が教えてくれること。僕自身だって、価値観から考え方まで、成人してからいっぱい変わってます。

例えば、うつ病を患った方は、その人の、考え方、感じ方、振る舞い、全てが変わっています。それも変わってるんですよね。我々は良くも悪くも変わっちゃう。それは本人の意識と環境によって。実際に、脳の一部の萎縮なども認められ、物理的も変わっていることがわかっている。

さらに、でも適切な処置を受けると、その方の考え方、感じ方、振る舞いも変わっていく。そして、脳の物理的構造も戻っていく。これも変化であり、変わっているわけです。考え方、感じ方、振る舞いが変わる、これはあくまでも一例であり、変わっている例は無数にあります。

話を戻しますが、自分が取り込んだ情報が自分の一部となり、自分の行動言動に現れますということです。実際に、ポジティブとかネガティブな感情情報を書き込む脳部位、扁桃体があり、アメリカの著名な神経科学者も、不機嫌な扁桃体を育みたいですか?それともご機嫌な扁桃体を育みたいですか?そんな問題提起をしています。

そして、ご紹介遅くなりましたが、下記の2022年のボストン大学からの論文も、この記憶の作り方の大切さを裏付ける、とても大切なメッセージが示唆されています。

多くの研究が、トラウマなどのネガティブな感情記憶について探求するが、このポジティブな記憶の大切さ、それが我々の精神的ウェルビーイング、教育や職場でも大切だと教えてくれます。

限られた時間と人生において、向き合う世界、環境、情報。どのような世界と関わり、自分の内側の世界、インターナルワールドを形成し、自分自身のあり方を豊かにしていきたいのか、改めて考えさせられる論文でした。

どうせだったら、ハッピーで彩り豊かな情報をいっぱい取り込んで、豊かな自分でありたいなぁ、と思うのでした。皆さんは、どんな世界で、どんな情報を取り込んで、どう生きていきたいですか?

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