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アメイジングスイーツ

ところでみなさんは、

ぜんざい派?
それとも
おしるこ派?

私は財前派です。
里見助教授は紛れもなく正義ですが、やはり人は聖人君子のように生きられないのです。


あれっ、ちが…
『白い巨塔』の話じゃなかった。

唐沢寿明演じる財前が、欲望の赴くまま権力に執着し、ありとあらゆる手を尽くして教授に登りつめた後の“総回診”。助教授や医師、看護師たちをぞろぞろと従えて、病院の廊下を闊歩するそれは、このドラマを象徴する名シーンであり、権力を手にした男の輝きと醜さと苦悩を見事に表現しています。


2003 フジテレビ開局45周年記念ドラマ「白い巨塔」

そしてその演出に欠かせない重要な要素の1つが、毎回流れるナレーションなのです。

「ぜんざい教授の総回診です」


あれっ、ちが… 
『ぜんざい』の話じゃなかった。

イライラしてきた。最近また第一話から一気に視聴しているので寝不足がたたっています。


冒頭戻りまして、ぜんざいが大好きです。
特に好きなのが白玉ぜんざいで、どちらかというと白玉好きがこうじてぜんざいも好きになったという経緯です。

小学生の頃、家庭科の授業で白玉粉を使ったメニューを考えなさいという斬新な宿題が課せられ、さつまいもを蒸してつぶしたものを白玉の生地で包み、あんこを乗せたレシピを考案しました。
それはいたく先生に褒められて、クラス全員が授業でつくるメニューとして採用されたという幼き日のちいさな成功体験から、白玉に対するラブストーリーは突然に始まった気がします。高確率で小田和正でてくる。


花見や子どもの日といった催しが行われる春は、団子やかしわ餅などの和菓子が主役となって店頭を彩る季節です。
久しぶりに訪れた製菓材料店でも、あんこや餅粉、桜の花や葉っぱの塩漬けなどがまとまってコーナー化されており、こうやって季節というのは人々の手で形作られていく部分もあるのだな、と改めて感じます。

今回作りたいメニューは、おいしいつぶあんと色んなフルーツが入った“白玉フルーツぜんざい”です。
白玉は粉と水を混ぜて茹でるだけですし、洋菓子のように繊細な工程など何一つ必要ありませんので、恐らくいつものような絶妙な失敗もないでしょう。

せっかくなので自分の食べたいものをちょっと贅沢に、そして春らしく華やかに盛り付けて楽しみ、味わおう、というのが目指すところです。

色々と悩んだ結果、全体の彩りを華やかにしたいので、いちご、バナナ、キウイ、ぶどうの4種類を使う事に決めました。


あんこは袋入りタイプと缶詰タイプがあり、それほど沢山必要ないという事と、おいしいあんこを選びたいという事からいくつかのメーカーを吟味し、北海道産の小豆を使った缶タイプを選びました。

北海道産特別栽培 小豆100%(アキラ100%ではない)


息ができないほど詰まっている


白玉は、粉と水1:1を基本の量として混ぜ合わせます。ここでほとんどのレシピに書かれているのが、“耳たぶの硬さ”という表現です。
一応、左手の親指と人差し指でそっと耳たぶを触って硬さを確かめてみますが、正直なところこの小さな耳たぶで納得感が得られた事はありませんので、ある種ちょっとした儀式のようにも思えます。

適当なサイズに分けて丸めたら、2〜3分熱湯で茹で、その後冷水で冷やします。

どこにいるのでしょうか、見失いました


肝心なのは盛り付ける器です。
涼しげなガラスの器に盛り付けたいと考え、白いガラスの大きいサイズか、茶色いガラスの小さいサイズかを候補として悩んだ末、フルーツを4種類も用意してしまったので大きいサイズの器に盛り付ける事にしました。

大は小を兼ねるの精神で生きています


フルーツを全てカットして材料を揃えたあと、いざ、盛りつけます。


つるつるとスベる器、つるつるとスベる白玉、つるつるとスベるぶどう、つるつるとスベるキウイ、切り口がつるつるとスベるバナナ。そんなバナナ。スベるギャグ。

自由気ままにスベり合う材料たちを、何とか安定させて納めるべく、唯一の救いであるどっしり構えた粒あんを頼りに、ギウギウと器に押し込みながら盛り付けを試行錯誤しました。

仕上げには、もうすっかり散ってしまった桜への名残惜しい気持ちを込めて、桜の花の塩漬けを添えました。


つるつるぎうぎう

食べたいという欲望が隙間なく押し込められた、美しく華やかなフルーツ白玉ぜんざい。



そういえばこんなシーンがありました。

財前教授の愛人演じる黒木瞳がこう言います。

「人間の欲にはキリがないのね」

財前教授はこう答えるのです。

「それが一番、純粋なものだからな」

じっと見つめていると、手前の真っ白い白玉が、まるで財前教授とそれを取り巻く医師たちの白衣のようにも見える。
もしかするとこれは、『白い巨塔』という人間の欲を描いたドラマの縮図ではないか…。

脳内には、エンディングで使われている名曲『アメイジンググレイス』が鳴り響きます。このまま突き進みます。


フルーツ白玉ぜんざい〜白い巨塔に思いをよせて〜


ひととおり、満足のいくまで妄想を楽しんだあと、ほうじ茶と共にいただきました。


権力の味がする。

いえ、上品なあんこの甘さが白玉とフルーツを見事にまとめ上げたアメイジングな逸品となりました。


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