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Fall in love (with ズッキーニ)

しばらく我が家はインドカレー店と化していました。さしずめ私は住み込みで働くオーナー兼シェフ兼お客といったところでしょうか。

先日のnoteでご紹介したエビカレーは、3日かけて完食しました。
その後基本となるミニマルチキンカレーを作り2日食べて残りは冷凍しました。
さらに応用編のコッテリモードチキンカレーを作り2日食べて残りは冷凍しました。

写真に疲れが滲み出ている


カレー沼に片足を突っ込んだところで、ふと我に返るとごらんのありさまでした。

キッチン棚はスパイスで溢れ、コンロ周りは油でギトギト、野菜といえば玉ねぎばかりで、外出先から戻ればそこはもうファブリーズもお手上げのカレーハウス。

何より本当に美味しくカレーをいただいているのか?と。

「お互い嫌いになる前に、少し距離を置こう」

私は静かにそう言いました。
人間関係と同じで盲目的な愛は時に破滅へとつながるのです。

「カレの事はしばらく忘れよう、カレーだけに」

私は静かにそう言いました。
もしかしてダジャレの天才かもしれないしそうじゃないかもしれない。


それより誰と話してるんかな。


カレー意外で何か作りたいものがないかInstagramにアイデアを求め彷徨っていると、興味深いお味噌汁レシピがありました。

具はズッキーニを千切りにし
ねりごまを味噌汁に混ぜ
仕上げにミョウガと大葉の千切りと
すりごまを乗せて完成


千切りズッキーニにズッキューンです。


レシピ開発される方の脳内ネットワークはどのような動きをしているのでしょうか。

ズッキーニを輪切り以外の方法で切るなんて違法じゃないんですか?

ズッキーニといえば輪切りという固定概念を超えたところに、新しい発見や素晴らしいアイデアが芽吹くのでしょうけれど、自分でそういった何かを思いつこうとしても本当に何も出てきません。

私がこれまで食の領域で発見したアイデアといえばそうですね…

蕪は塩かけただけでもうまい。

原始。

発見ですらないし、せめてめんどくさがらずにオリーブオイルもかけてくれ。


スパイスカレーから自らを解き放ったその日、Instagramで見つけたお味噌汁に、私は恋に落ちました。

もしも願いが叶うなら
吐息を白い
バラ米に変えて

小林明子さんのミリオンセラーヒット曲『恋に落ちて-Fall in love- 』を口ずさみながら、米を炊いておにぎりも併せて作る事に決めました。

当時幼かった私がこの曲を家の中で大声で歌い、aotenちゃん上手やけどもっと違う歌にしたら?と母からやんわり諌められた理由が、大人になった今ならわかります。
すこぶる歌が上手かった父がいつもお風呂で五輪真弓さんの『恋人よ』を歌っていたので、私も父のように大人の世界観漂う曲を上手に歌い、褒められたかったのです。

ノスタルジックな物語に油断すると涙しそうなので本題に戻ります。

さて、人生初の千切りズッキーニです。

薄くスライスした後にそれを何枚か重ねて、2ミリぐらいの幅に切っていきました。
少し硬い皮とは対照的に中は柔らかく、サクサクとリズミカルに切る事ができます。
その感覚があまりにも心地よく、何も考えずに続けて100本ぐらいは切れそうな気がしてきます。

もしかしてきゅうりと間違ってないか
という事だけが心配です




ズッキーニを出汁に入れて軽く火を通したら、ねりごまを入れます。

ねりごまと間違えて
カレーを入れてないか心配です


後は味噌を溶いて軽く火を通したら完成です。
仕上げに乗せる大葉とミョウガも千切りにして準備しておきます。

私がこれから食べるのはそうめんでしたか



丁度いいタイミングで炊飯器から炊き上がりを知らせる音楽が流れてきました。

それにしてもおにぎりを握るなんて何年ぶりでしょう。

昨年末親友宅にお邪魔した帰り際、これ明日の朝にでも食べなよと赤米のおにぎりを持たせてくれて、それがとっても美味しかったことを思い出しました。

きっと今日も誰かが誰かのためにおにぎりを握っていると思うと、特別ではないようで、とても特別な愛情深い食事なのではないかと感じます。

私は炊飯器の中で炊きたてのご飯をほぐした後、適量をボウルに移し、あまりにも久しぶりなので、YouTubeで海苔の巻き方だけ確認しました。

吐息のような白い湯気が立っていました



私は水で手を濡らして冷やした後、塩を少しつけていざ握らん、とご飯を左手に取りました。


火の玉を素手で捕まえたらこんな感じ?


あまりの熱さに一瞬何が起こったのか分からず、左手に乗せられた火の玉(ご飯)はすぐさま右手へ放り投げられ、今度は右手から左手へ、また左手から右手へと押し付け合いの末、最後はボウルに出戻るしかありませんでした。


これ火傷するね?


私はスチュワーデス物語の片平なぎさ状態で両手を前にし、呆然としていました。

ヒロシ…



誰もついてきてない。

おにぎりは熱々をにぎるものだと記憶していましたが、どうやら限度というものがあるようです。少し冷ました後、無事に握られたご飯は厳かに海苔に乗せられ、巻かれていきました。

おにぎりは丸と三角と四角の間の形



いただきます。

お味噌汁を一口。

大葉とミョウガの香りが、味噌とごまの風味にとてつもなく良く合います。
千切りズッキーニは独特の歯ごたえがあり、具が1種類なのに十分食べ応えのある一品となりました。

私は心と身体にじんわり沁みる美味しさを味わいながら、また続けて作ってしまいそうな自分がいる事に気が付きました。


「お互い嫌いになる前に、少し距離を置こう」


#日記  , #エッセイ , #料理 , #自炊 , #味噌汁 , #ズッキーニ , #おにぎり , #恋に落ちて

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