見出し画像

故郷にえらぶまち

東京に生まれたある小説家が、第二の故郷と呼び、愛した地があった。
いくつもの異国文化が初めてこの国の空気を吸った町、長崎県である。

8月頭から一週間ほど、僕は長崎県へ旅行に行った。
会いたい人がいたので五島列島、上五島と呼ばれる場所を訪れたのだ。海の近くだというのに、潮風が乾いているように感じる。なんというか、磯臭くない。それだけでもう不思議なものを感じていた。

島は魅力的な場所ばかりだった。
風が強い浜で流れるように生える木々は、まるで山よりも大きな妖怪「だいだらぼっち」が削り取ったのではないかと思うような神秘的なものであった。Temparayというバンドの「あびばのんのん」のMVを彷彿とさせる。

上五島 蛤浜


ゆったりと流れる時間の中で出会う島の人達は僕を優しく受け入れてくれた。若い人が増えてほしい、そんな気持ちからくる「この島に住みなよ」は簡単な言葉だが素敵なお誘いだった。料理も景色も魅力的なこの場所の暮らしも悪くはないかもと思ってしまった。(料理は作ってくれた人の腕のおかげかもだが。)

島を後にしてやって来た長崎市は、湿度は高いが風が気持ちよかった。坂が多いのは運動不足の僕にはちょっとこたえたが。
夜、眼鏡橋前のベンチに腰掛けていると、手持ち花火の音が聞こえる。お盆の迎え火としてやっているのだろう。風が凪いだとき、川沿いの提灯の明かりが消えた。ああ、月があんなに明るかったんだ。
この目に映る一連の出来事が、なんだか嬉しいなあ。

眼鏡橋

長崎市にある手ぬぐい屋【奉(たてまつる)】の店主さんは楽しそうに街の歴史を話してくれた。表情だけでこの街が大好きなのが見て取れる。それだけでこっちも楽しい。
店主さんがふと口にした名前は聞き覚えがあった。聞き覚えなんてものではない、二十年以上ともに歩んだ、それは僕の名前だ。
僕の名前の由来になった、ある小説家の話をしてくれたのだ。彼がこの長崎という地を頻繁に訪れていたこと、題材に作品を書いたこと、それだけこの地を愛していたこと。

「故郷にえらぶまち」という詩を書いた。

あの街に感じたものを、僕なりにこの詩に詰め込んだつもりだ。
できればいつか、これを読むあなたにも直接感じて欲しい。
だから多くは話さないでおこう。

島で出会った、
【Cafe OYO】さん・@yummy03kuku
【大崎畳店】さん・@oosakitatami
【木・haru】さん・@kiharu.goto
街で出会った、
【奉】さん・@tatematsuru
長崎県美術館で観た【Vase to Pray Project】・@vtp_project の『祈りの花瓶展』。
たくさん考える機会をもらい、好きなものがたくさんできてしまった。
なんてすてきな島と街だろうか。
描ききれないものも多かったが、思い出を盛り込んだ絵を描くことができた。細かな思い出話は、またの機会に聞いてもらいたい。


ある小説家は数多くの作品をこの世に残した。そして多くの人に多大な影響を与えただろう。その功績を語る資料を得ることはたやすかったが、僕は今までその人に関心を持たず生きてきた。
何かの縁だと、家に帰り何気なく彼が語る動画をYouTubeで観た。カメラをまっすぐ見つめて話す彼と目が合った。自分の名前の由来になった人物に初めて会えたような気がした。クリスチャンだったあなたには僕が感じた空気はもっと違うものだったのだろうか。
一度直接話してみたかった、そう感じる魅力のある人なのが画面越しにも伝わってきた。

僕もあの人のようになれるだろうか。
もう少し頑張ったら、彼の本を手にもう一度あの地を訪れよう。
「周作」という、この名が愛したあの場所へ。

故郷にえらぶまち


その他旅行に関する話はこちら



【LINEスタンプができました!】
ニヒルのLINEスタンプを作りました。
ちょっとふざけた彼のスタンプを、あなたの日常に連れていってやってください。
ご購入はこちらから↓


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?