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ラバーガール「史上最高の夏!」を観て、この2021年を"乗り切ろう"としなくてもいいのだと思った。


きつい夏だった。

悪夢のようなコロナ感染の広がり。東京オリンピック。東京オリンピック開会式にまつわる諸問題。

プロ野球が好きで、選手たちが思うように力を発揮してほしいと願う私と、この時期に東京でオリンピックを開くのは適切とは思えない私。

コーネリアスの音楽が好きな私と、彼の行ったことは肯定できるわけがない私。

お笑いが好きな私と、元お笑い芸人の名前が一般紙の一面の見出しに踊るのを見る私。

いくつもの「私」が引き裂かれる。頭が熱くなり、体は動かない。SNSやテレビから得る情報は、なるべく絞ろうと決めた。そうでないと、正気を保てなくなる。

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ラバーガールが、8月26日~28日に東京・本多劇場で単独ライブを行う、と発表したのは7月初旬。そのタイトルは「史上最高の夏!」だった。

痺れた。何もかもが滅茶苦茶な、暗澹たる気持ちになることから逃げられない今年の夏。当時、本人たちがタイトルに込めた意図は知る由もなかったが、とにかく眩しいと思った。

「シュールなコント」「低体温」「脱力系」と形容され、紹介される時は「飄々としたボケに、淡々としたツッコミ」が枕詞となっている彼らだ。そんな彼らが掲げた「史上最高の夏!」という言葉には、確かな力が宿っているように見えたのだった。

その後のインタビューで、タイトルには「観る人は明るい気持ちになりたいんじゃないか」という思いが込められていることが明かされている。

このライブを観ることを心の支えに、夏を過ごそうとしていた。

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しかし先に触れたように、世間の空気はどんどん淀んでいった。

「史上最高の夏!」と銘打ったライブを観に行く頃には、どんな夏になっているのか。

そもそもライブも、予定通りに行われるんだろうか。自分自身も、感染しないように留意して会場に向かわなくてはならない。

楽しみなことすら、不安と懸念に変わってしまう。どこで息継ぎをすればいいのか、分からない季節だった。

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ライブは予定通り行われ、私は27日の夜公演に向かった。

客席に足を踏み入れると、舞台セットにすぐ目を奪われた。舞台の上手と下手に、柔らかい色合いで描かれた波。そこから、もくもくと白い雲が湧き上がっている。

客席が暗転すると、色鮮やかなシャツを身にまとった飛永さんが、舞台の中央に駆け込んでくる。

そして始まったのは、他でもなく、コロナ禍に翻弄される人々を描いたコントだった。

あまりにもストレートな描写で、ともすれば悲惨さや毒々しさが漂うはずだ。でも、そこに漂うのは不思議な温かさだった。ラバーガールの二人が持っている天性の愛嬌も手伝って、かわいい。そしてポップである。

それに続くのは、今の現実を必ずしも反映したものではないが、日常と非日常の間にある可笑しさを拾い上げていくコント。

知性とくだらなさ、上品と下品、思いやりと毒を行き来する笑いで、とにかく楽しい(あと下ネタが多い)。

幕間映像を含めた、すべてのコントが面白かったけれども、家で音楽フェス配信を観るコントが特に好きだった。

コロナ禍でなければ生まれなかったであろうコントだけれども、二人のドタバタとした会話や動きに、矢継ぎ早に笑いが起こる。

どんな世の中になっても、日常には楽しみと笑いが生まれることを思い知らされる。

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劇場を後にすると、このつらい夏が報われた実感が残った。そしてこの後に日常に戻っても、きっと大丈夫なのだと何故か思えていた。

その気分は一体何なのか。数日間考えていたが、「これからも、このままの自分で、日常を楽しんでいい」という安心感だったのだと気づく。

いつの間にか私は、この2021年を”乗り切ろう”と肩肘張っていたのだと思う。そこにラバーガールのコントは、2021年の今も、これまでと変わらない楽しみ、そして笑いが存在すると示してくれた。

私はその日常を、"乗り切ろう"と力むことなく、これまで通りに味わえばいい。

そうすることで、結果として、いつの間にか、生き続けているのだろう。

というわけで、めちゃめちゃ面白いからライブ配信アーカイブ観てね!!!!!ラバーガールのコントを観たことがなくても面白いはず。

見逃し視聴は9/4(土)16:00まで、チケットの販売は見逃し視聴終了日の昼12:00まで、とのことです。

FANY IDを持ってなくても、ヤフー、Facebook、Gmail、Amazonのアカウントを持ってればログインできるっぽい。

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