ラヴレター

ビニールハウスに泊まって野菜になってみた。
柔らかい土に埋まって寝ていたのに、育てよと暴力的な力で僕が始まる。
土から顔を出してまばゆい世界に慄いて膜の向こうの大きな世界。
一回たりとも傷つきたくないからさ、種でいたかったんだ。


折りたたまれて優しく並ばされて、次に使われるまで、ただ待っている。
存在するだけならば、地球がひっくり返るまで、怖くない。
訊ねた言葉だけ光速で進んであの子の横を通り過ぎた。
知りたくないから、だるまさんがころんだ、後ずさり。


君のことが好きだった時、僕は遠くへ遠くへ行こうとしてた。
おみやげがあれば君に会えるから。


僕から風が吹いている。汚染されろ、僕の愛で。


郵便ポストが全部、爆破されたらしい。
暇になった郵便配達員、恋をした。
僕は体を引き裂いて愛情を世界に選り分けた。
風にのって届け、一番不幸な僕に似た僕に。

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