終わる世界のはなし。
京都に住んでる友人がはじめてここサイレントヒルへ来てくれた日。
世界の終わりの日にどうしたいかって一日をやってみたいなぁと呟いたら、Rが乗ってくれたんだよね。
そのころTwitterで、世界が終わる日の設定でインスタントカメラで写真を撮るっていうのが局地的に流行っていて。
駅で落ち合って、まずは屋上に出られるビルへ昇った。

休憩中の人が一人いたくらいで
昔見たオダギリジョーのスクラップヘブンを思い出した。
父親の遺灰を屋上から撒いて街が白くなる描写が印象に残っている。
あの映画を見てから、なんだかこの世はゴミ溜めで人生はドン詰まりだなという認識が強くなったな。映画に対して悪い意味じゃなくて、自分にそう見えてるのを認識したというような。
オダギリジョーはメゾンドヒミコも好きだった。あんな風に素敵な部屋で皆で暮らせたら良いのにね。
静かな屋上で、イヤホンを半分ずつでプラを聴いた。
ナショナルキッドとパノラマに、サンデー。
世界が終わる日が休日ならいいな。
街中では、KISSxxxxのミカミがバイトしてたような民族衣装の店や、トルコのランプの店
かめのちゃんがクリスマスプレゼントを買ったようなアンティーク調の雑貨屋を覗いたりした。

そしてだいすきだったピザ屋。
やっぱりこの街で最後なら、ここのピザ屋かな。
Rはオレンジエード、自分はレモネード。

公園の遊具も誰もいなくて、年甲斐もなくふたりで遊んで楽しかった。
さすがに滑り台は滑らなかったけど。

公園のベルの音もちゃんと聴けた。
このベルが鳴る時だけは、ここがKISSxxxxやプラみたいな世界になる。

花の咲くのを見ながら、ベンチでPIERROTのREBIRTH DAYと壊れていくこの世界で、を聴いた。
HEAVENのアルバムみたいに鮮やかな花のいろ。
紅葉した落ち葉もきれいで、黄色いのと紅いのを一枚ずつ拾った。
そのあとは電車でふた駅の海へ。
もし学生時代に、同じ学校だったら、イヤホンでバンドの曲半分ずつで聴きながら登下校したかったねって、ずっと前に話したから。
電車のなかでBUCK-TICKのミウを聴きながら、学生のころみたいだなぁって思ってた。 学生時代こんな素敵じゃなかったけど。
駅から海までの道は、もう道の先には空しか見えなくて、近くまで行くと、だんだん海の水平線が見える。だからあの道がだいすき。
昔一緒に居た人のことを思い出して、懐かしかった。


自分の住んでる街は海がないから、何年も海を見てなかったって、Rがすごく喜んでくれてた。
海が見えてきて、Rが走って行った瞬間に、やっぱりあの人のことを思い出したけど
Rの後ろ姿がとても楽しそうで、そう居てくれる今この瞬間を大事にしたいと思った。
波打ち際で波に追いかけられながら、シーグラスと小さな貝殻、きれいな卵みたいな石ころを拾った。


それから海で聴いてみたかった曲を聴いた。
LUNASEAのIN SILENCE、MOTHER、ROUAGEのJesus phobia、 マリスのLe Ciel、ラルクのWhite Feathers、Dirの悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱 。
空の色が変わるのをずっと見ながら聴いたら、ほんとうにきれいで、天空みたいに何もない色の空間の広がりの果てしなさが、音楽と溶けて大気になったみたいだった。
きっとこの先、この曲を聴くたびこの日を思い出せるなぁと思った。
そして今もこのプレイリストをよく聴く。
海で聴く体験は本当にきれいだったから、そういう天空みたいな音のする音楽なら海で聴いてみるのが良いと思った。
もう竜太朗みたいな格好って全然しないんだけど 、この日だけは海月のようなファッションを選んだ。
マーチンにガブリエルチェルシーのパンツにサスペンダー、ファー付モッズコート。
持っていったハンカチは友人がくれた世界の終わる話のワンシーンを切り取ったムーミンだった。
彼女もKISSxxxxの箱に出てきそうな雰囲気で、かわいかったな。
帰りの電車では、卓偉の100万回生きたねこを聴いた。
スフレパンケーキを食べて、きれいな色のフルーツティーを飲んで
deadmanの聖者ノ行進を聴いて別れた。
星空があなたにも降りますように。
ほんとにこの日に世界が終わっても良かったのに。
世界が終わったことにして、今は夢だと思い込めたらな。
そう思ったことのある人って多いと思う。
このまえ世界が終わる夢をみて、みんな逃げてるなか
自分だけ逆の方向へ歩いて、公園で終わるのを迎えていたよって話をしたら
世界が終わるのに何処へ逃げるんやろ。逃げるなんて勿体無いな、世界が終わるのに見ないなんてって言ってくれて、彼女のそういうところが本当に好きだと思った。
この日の記憶はシャーレで保存している。
こんな思い出って一生ものだね。
いつも付き合ってくれて本当にありがとう。
Rとの思い出はまるで物語の一頁。
本当にKISSxxxxみたい。
君のお父さんが「映画みたいな人だね」と言ってくれたって教えてくれたけど
でもそれは君がいつも映画にしてくれただけだよ。
これまでサポートくださった方、本当にありがとうございました!