毎日400字小説「どうしたの」
夜の十一時を過ぎた電車には会社帰りのくたびれ切った顔があった。アルコールの入った顔もあった。スマホのゲームに没頭していたり窓から外を眺めていたり、隣の人の肩に頭を凭せ掛け、鼾をかいてるのもあった。しかしその車両には小さな男の兄弟が、年上のほうでも大人の半分ぐらいの背丈しかない子が二人乗っていて、車内の半数ぐらいの人は、彼らを気にかけるようにときどき目をやっていた。兄は弟の手を握り、奥歯を噛み締めるような顔でどこか一点を見つめ、弟のほうは人懐こそうな丸い目をくるくる動かし、ど