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vol.17 タイムリミットのあるなかで。

「大分県かあ。行きたいけど、この状況下だし難しそうだなぁ。」

大分遠征の夢が叶わなかった今年5月。
どうして行きたかったのかというと、私の好きなアーティスト、佐藤雅晴さんの回顧展が大分県立美術館で開催していたからです。
https://www.opam.jp/exhibitions/detail/683

スクリーンショット 2021-11-20 19.12.30

映像はこちらから視聴することができます。↓
https://www.youtube.com/watch?v=ho4fWB3A2KE&t=21s
佐藤雅晴 《東京尾行》 2015-2016 年、12 チャンネル ビデオ

作品をじっと見ると、
「平和な映像だなぁ。」
「ん?ここの動き、ちょっと奇妙?」
「あ!ここがアニメーションになってる!」

よく見ると、映像の一部がアニメーションになっています。《東京尾行》 は、日常の風景をビデオやカメラで撮影し、その風景をパソコンのペンツールでなぞってアニメーション化する「ロトスコープ」という手法で制作されました。

リアルな映像の中に、アニメーションを見つけるのが楽しいですし、
見ていると少しずつ、現実と非現実の境目が曖昧になって「どれがリアル?」と不思議な感覚になるのが面白いです。

一度見始めると、佐藤さんワールドに引き込まれ、いつの間にか時間が過ぎていたこともありました。

時間を忘れて見入ってしまう作品がある一方、「タイムリミット」について危機感を覚える作品もあります。

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佐藤雅晴《now》「死神先生」シリーズより、2018年

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佐藤雅晴《チャイム》「死神先生」シリーズより、2018年、木製パネルにアクリル、45.5 x 38 cm, © Masaharu Sato, Courtesy of KEN NAKAHASHI

秒針がくるくる回り続ける《now》やビビットなオレンジの背景にチャイムベルのみ描かれた《チャイム》というシンプルな構成から想像がつかない、「死神先生」というシリーズ名。このギャップは佐藤さんの背景を知ると、ハッとするかもしれません。

佐藤さんは8年近く、ガンと闘い続け、2018年9月に余命宣告を受けました。
病状が悪化し、映像を作ることが難しくなりましたが、「作品を作り続けたい」という強い思いが、映像制作から比較的身体の負荷が少ない、平面作品の制作へと変わっていきました。

闘病生活のなか制作されたという背景を知った上で作品を見ると、佐藤さんが「これからも作品を作り続けるんだ」という熱意があるけれど、命のタイムリミットが迫っているという抗えない現実があって、緊張感を覚えました。

佐藤さんの作品を初めてみた時は「ここがアニメーションになっていて面白いー!」と間違い探しをする感覚で鑑賞していましたが、佐藤さんのことや作品を知れば知るほど、時間の使い方について考えるきっかけになりました。

特に「死神先生」シリーズは、時間や命に限りがあることや、もがいても変えることが難しい現実にぶつかったとしても、出来ることをやっていかないと、と改めて気付かされます。

惜しくも45歳という若さでこの世を去った、佐藤さん。佐藤さんの出身地である大分県から茨城県の水戸芸術館現代美術ギャラリーに回顧展が巡回しているのでぜひ見にいきたいです。2022年1月30日(日)まで開催中です。https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5144.html


リファレンス:

大分県立美術館, 「佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在」
https://www.opam.jp/exhibitions/detail/683

KEN NAKAHASHI, 「佐藤雅晴」
https://kennakahashi.net/ja/artists/masaharu-sato/selected_works

TOKYO ART BEAT, 佐藤雅晴 「死神先生」
https://www.tokyoartbeat.com/event/2019/8F5A

原美術館、「ハラドキュメンツ 10 佐藤雅晴―東京尾行」http://www.haramuseum.or.jp/jp/wp-content/uploads/2018/08/jp_hara_MasaharuSato_151224.pdf

美術手帖, 「余命宣告を受けた作家が描くもの。佐藤雅晴展「死神先生」がKEN NAKAHASHIで開催」
https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/19250

masaharu sato, 「ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴―東京尾行 / Hara Documents 10: Masaharu Sato - Tokyo Trace」
https://www.youtube.com/watch?v=ho4fWB3A2KE

水戸芸術館現代美術ギャラリー,「佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在」
https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5144.html


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