(一応)プロのギター練習遍歴
生徒さんから立て続けに「リズムが弱くて」と相談があった。また「音感がない」という相談も。
結論からいうと、リズムも音感もトレーニングによって鍛えていくものであり、先天的な要素は関係ない。メソッドを気長に続けて獲得していくのがリズム感や音感なのだが、肝心のメソッドは残念ながらあまり知られていない。
また、「どんな練習をどれくらいの量こなせばいいのか」という質問について明確に答えるのは難しい。難しいというより、これから楽器をやろうという人に対して(一応)プロの音楽家の練習量を伝えても、途方に暮れてしまうかもしれない。
とはいえ、僕がどれくらい練習してきたかを伝えることは参考になるかもしれない。どの年代から、どういう練習をどれくらいやってきたのかを振り返ってみたいと思う。
(一応)と謙遜するのは、ギタリストとしてはプロ活動をしていないからです。僕は作編曲と作詞とレッスンで生計を立てています。ギターは相棒です。
中学生の頃
中学2年の頃に家にあったクラシックギターを使ってコード弾きの練習を始めた。学校から帰ってきてから晩ご飯までの時間を練習にあてたので、月〜金で90分程度。1000円くらいの歌本を買って知ってる歌を弾き語りできるよう頑張った。最初に弾けるようになった曲はLet it be / The Beatles。B'zとかAccessとか、カラオケに行くかわりに自宅で弾き語りの練習をしていた。
高校生の頃
高校入学直前にEpiphoneのレスポールモデルを購入してエレキギターデビュー。ヤングギターとギターマガジンを毎月購読して、そこに書かれている初心者講座や曲のタブ譜を練習した。寮生活だったので規則正しい時間で練習できた。
高校2年の1年間は毎朝6時半に起床してメトロノーム練習を開始。タイトル画像みたいな小さな目覚まし時計の秒針の音を利用してクロマチックとスケールの練習を毎朝やった。参考にした本はジョー・サトリアーニの教則本「ギターシークレット」、含蓄がある有意義な一冊だった。
バンド練習とは別にギターが上手くなる練習をずっと探し続けて、自分に合った本を見つけることができたのは幸運だった。
またヤングギターより販売されていた教則ビデオ(VHS)を買って数ヶ月はそれを課題に練習した。特にポール・ギルバートの「ギターズ・フロム・マーズ2 ロック編」は音楽理論をギターでどう活用するかがよく理解できて素晴らしかった。
だいたい毎日1時間、週末は3時間くらいは練習にあてていた。
20歳前後
オリジナル曲をやるバンドを組んで月1でライブを始めたことにより、さらなるギターテクニックが必要になってきた。音楽の趣味嗜好もロックからジャズやブルース、ファンクなどにシフトしていた中、「ギタリストのための演奏能力エクササイズ」がとても参考になった。
この本に書かれているメトロノーム練習は高校2年の時にやっていた方法(ギター雑誌に書いてあった裏拍で鳴らす方法)と同じだった。僕は幸運にも正しいリズム練習のメソッドに早く出会っていたことになる。
専門学校の頃
20代前半の2年間、関西の音楽専門学校で主にジャズの奏法を学び、なんとかしてやろうと練習していた。
具体的にはクロマチックの運指確認、楽譜を読みながらコードトーンを追いかけて弾く練習から始まり、テンションコードを含むコード進行の運指を様々なポジションで弾く練習、クラシックピースを2曲くらい、ここまでがウォーミングアップ。そこから宿題の課題となる楽譜を読んだり、曲を作ったり、マイナスワンでメロディックマイナーの練習をしたり。
ウォームアップは毎朝炊飯器でご飯を炊いている時間にこなすようにしていた。一人暮らしだったので、だいたい午前中に2時間練習して、学校にいる間は雑談しながら雑に練習して、早めに帰ってきたら夜9時くらいまでに1時間程度練習するような感じだった。
バークリー音楽院の頃
2セメスターしか居れなかったけど、バークリー音楽院に通っている頃の練習メニューは基本的に専門学校時代と変わりはなく、より自分のやりたい方向を強める練習を続けた。
具体的にはペンタトニックやスケールのスキップ・ステップ、ビバップのラインの運指、スキッピングとワイドストレッチによるコードトーン練習など。それに加えて課題として出されるコード進行の運指練習など。
バークリーではどちらかというと作編曲の勉強が中心だったので、ギター練習はただの日課という感じだった。
仕事を始めてから
恥ずかしながら30歳前後の自分はあんまりギターを弾いていませんでした。何をしていたんだろう。
それでも幸運に地元でセッションがあったので、その直前1週間は集中して練習するようになり、その後自分が管轄するジャズセッションも加わり、ムラはあるけど継続的にギターは弾いていた。
レッスンが増えてくるにつれて、ちゃんと教えなきゃなぁとより高度なリズムトレーニングやコードトーン練習を始めた。コード進行の運指も、あるとき突然開花してジョー・パスみたいに弾けるようになった。
(高度なリズムトレーニングの例)
挫折しても、また始めた。
こうして羅列していくと、僕がすごいギターが好きで練習しまくっていたみたいに見えますが、実際はたくさん挫折して何度もギターを触らない期間がありました。ダメな時期は定期的にやってきては、また再び「頑張ろう」とリスタートする。その繰り返しだったように思い出されます。
弾きたくないときは弾かなくていい、その変わりずっとそこに置いておく。そしたらまた弾くようになる。そんな感じです。
それはそうと、よく10000時間の法則について語られるのですが、僕の経験からすると練習の実時間が10時間、100時間、500時間、1000時間、100000時間に線引きがあるような気がします。
たとえば100時間をこなした人が「Fが弾けなくて」とは、ならないと思うんですよね。1000時間をこなせばセッションでアドリブを弾く理屈がなんとなく分かってくると思います。
あくまで”練習として弾く時間”について、ですけどね。あんまり大げさなことじゃなく、ざっくり「この曲を弾き語りできるようになりたい!」だとか「ロックギターでアドリブやりたい!」とかに向けての練習です。
どんな練習をすればいいのかは人によりけりなので、もし目標を見失って練習に腰が入らない場合はレッスンに行くのも1つの手です。
近く気楽なオンラインレッスンを始めようと考えています。