vol.07 ぼーっと楽しむ。
かえるを見つけた男の子
岡山県、大原美術館に展示されているクロード・モネの《睡蓮》。
この作品を見た4歳の男の子が「かえるがいる」と言いました。
「....え?かえる?」
みなさんも探してみてください!
見つけられましたか?
実は、かえるはどこにも描かれていません!
では、男の子が見たかえるは一体どこに?
どうして男の子はそのように言ったのでしょうか?
その場にいた学芸員が男の子に「どこにいるの?」と尋ねたら、
「いま水にもぐってる」と答えたそうです。
引用元:末永幸歩『13載からのアート思考』(ダイヤモンド社 2020年)
見えないものが見えている男の子の想像力にびっくりしました。
その想像力、私も欲しいです。笑
このエピソードを読んだ後、美術史の授業で「アートの見方」について習ったことを思い出しました。教授からは、
・作品を見た時、自分が思ったことを大切にすること。
・HowよりもWhyを大切に。
(どうやって作品が作られたかよりも、なぜ作られたのかを考える。)
と教わりました。
それまで「作品の解説文に書かれていることが正解なんだ!」と
頭でっかちに作品を見ていた私にとって衝撃的な内容でした。
「アートの見方」と聞くと、
「難しそう」「わからない」と身構えてしまいませんか?
ハードルが高いというか...。
でも、この男の子のように作品を見て感じたことを素直に受け取り、
そこに描かれていない情景を想像することがアートを楽しむ一番のコツなんだと思います!
シンプルなことですが、文字ばかりに気を取られて意外と忘れてしまっていることかもしれません。
今回は、みなさんに3ステップでできるアートを楽しむコツをご紹介します!
ステップ1. 作品をぼーっと見る
まずこの作品をぼーっと見てみましょう。
この絵を見て何を思いましたか?
心の中にぽっと出たひと言は何ですか?
「綺麗」「楽しい」「悲しい」「自然だ〜」や「よくわからない」でもいいんです。
その次が大事!
そのひと言に対して「なぜそのように思ったのか」を自分自身に聞いてみましょう。
でもいきなり聞いても、パッと出てこないと思います。
そんな時は、これらをヒントにして考えてみてください!
・作品に何が描かれているか?なぜ描かれているのか?
(作品に描かれていないものも思いついたら想像してみましょう)
・なぜここに〇〇が描かれているのか?(作品の構図について考える)
・作品に使われている素材は何?なぜこの素材なのか?
(アクリル絵の具、写真、木材など)
・なぜこのような描き方なのか?
(抽象的、写実的など)
・なぜこの色を使っているのか?
作品を見たときに思った「なぜ」を自分の心に繰り返し聞き続けることがコツです!
私がこの作品を最初に見た時は、「ホッとするな〜」と思いました。私の実家が自然に囲まれているので、その風景を思い出したからです。絵のタッチも柔らいのでリラックスして鑑賞できるなと思ったのと同時に、「なんでこのタッチで描いたんだろう?」と興味が湧きました。
このようにふんわりとした考えで問題ありません!
大切なことは、自分が思ったことに対して「なぜ」と質問し続けて、作品とじっくり向き合うことです。
そうすることで、作品の解説文を読んだ時「私はこう思ったけど、作家はこういう意図があって作ったんだ!」と作家と自分の考えを比べて、さまざまな角度で作品を見ることができると思います。
ステップ2. 作品タイトル、作家名、制作年、素材を見る
次に作品タイトル、作家名、制作年、素材を見てみましょう。
作品解説文を読むのはもう少し待ってください!
作品の情報を見て、
・なぜこの作品が作られたんだろう?
= Context :コンテキスト、つまり作品の背景!
・作家が伝えたいことはなんだろう?
= Concept:コンセプト
を中心に想像してみましょう!
「こういう考えをしたら間違えでは..?」
とは決して考えずに、好きなように想像することが大事です!
みなさんご存知だとは思いますが、この絵画は1906年頃に制作されたクロード・モネの《睡蓮》(素材:油彩、キャンバス地)です。
ここでは、
・なぜ《睡蓮》という題名なのか?
・なぜモネは1906年にこの作品を制作したのか?(コンテキスト)
・モネは作品を通して何を伝えたいのか?(コンセプト)
と考えてみるのがおすすめです。
もし、ステップ1.でみなさんが想像した作品の素材と違うものを使用していたら、その違いについて考えるのも面白いと思います。例えば...
「パステルという画材で《睡蓮》を描いたと思っていたけど、油彩で描かれていたんだ!なんでパステルだと思ったのだろう?」
など「なぜ?」を追求してみましょう。
ステップ3. 作品解説文を読む
ついに最後のステップです!作品の解説文を読みましょう。
みなさんが考えていたことと、作家が伝えたいことが違ったとしても問題ありません!その違いを知ることで作品を多方面から見ることができるからです。
同じ作品を見た人と意見交換をするのも新しい発見があるのでぜひやってみてください!
《睡蓮》の解説文にはこのように書かれています。
"印象派の中心人物として知られるモネが、彼が愛した水生植物の睡蓮を題材に、季節や時間とともに変化する光の効果をとらえた一連の絵画作品の1つ。岸や空を描かず、大胆に水面だけを描いた構図からは、日本美術の影響も感じられる。"
引用元:末永幸歩『13載からのアート思考』ダイヤモンド社、 2020年、p.3
解説文を読んで、私が作品を見た時に興味を持ったふんわりとした描き方の正体は、印象派の特徴だったんだ!そして、絵を見て「落ち着くな〜」と思ったのも、ゆったりと動く光が表現されていたからだと知ることができました。
このように作品・解説文・自分が思ったことを照らし合わせると、コンテキスト(作品の背景)やコンセプト(作品の意図)をより深く理解することができます!
一番たいせつなこと
今回は「アートの見方」についてご紹介しましたが、いかがでしたか?
ずらーっと書いてみましたが一番大切なことは
作品を見て何を思ったのか、なぜ思ったのかを自分に質問し続け、
《睡蓮》に描かれていない、かえるを見つけた男の子のように
作品を見て感じたことを素直に楽しむことだと思います!
作品を見る時に正解はないので、みなさんもそして私もいつまでもおさなごころを忘れずに作品を楽しみましょう!
参考文献:
大原美術館, 「睡蓮」, <https://www.ohara.or.jp/201001/jp/C/C3a26.html>
末永幸歩『13載からのアート思考』ダイヤモンド社、 2020年
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