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2024年5月の記事一覧
小山さんノート/ホームレス生活を送る女性が生きるために綴ったことば
ときに読むのが苦しくなって、少しずつ、数ヶ月をかけて読み終えた。「小山さんノート」は、都内のテント村でホームレス生活を送っていたひとりの女性が、長年にわたって書き綴ったものだ。彼女が亡くなったあとに有志の人々によって文字起こしされ、書籍化された。
日雇いの仕事や拾ったものを売って得たわずかなお金で、彼女は足繁く喫茶店に通いノートを開く。明日を生きる不安に苛まれ、パートナーや周囲からの暴力、支配に
書かなくたって生きてはいける
それなのに、どうしてわたしは書きたいんだろう。もうなんども重ねてきたこの問いは、たいてい書くことに行き詰まっているときに頭をもたげる。
それで今。
だれに頼まれたわけでもない小説を勝手に書き始めて、勝手に行き詰まっている。
正直、書くのって面倒だ。自分に見えている景色を、感情を、うまく伝わるように言葉にするのはなかなかに難しい。思うように書けないときはもどかしい。スッパリとやめてしまったほう
「東京都同情塔」九段理江/あなたが罪を犯さずにいられるのは、恵まれた環境で生きてきたから
物語の中で、幸福学者のマサキ・セトは、犯罪者たちにホモ・ミゼラビリス(同情されるべき人々)という新しい呼称を与え、彼らが快適に暮らすためのユートピアのような刑務所、シンパシータワートーキョー、通称東京都同情塔を設立する。
批判と賛同の声を半々に受けながら完成されたそれは、新宿御苑の真ん中に堂々と聳え立つ。
この東京都同情塔をデザインした建築家サラ・マキナの語りを軸にして物語は進むのだけれど、彼
「観察の練習」菅俊一/見えているのに見えていない
この公園の芝生は、どうしてこの部分だけがはげているのだろう。このキャッチコピーは、どんな前提条件をもって書かれたのだろう。この看板は、どうしてこんな場所に掲げられているのだろう。この既視感はなんだろう。等々。
本書では、著者が日常の中で「ちょっとした違和感」を覚えた風景を写真で提示し、次のページでその違和感の理由についての考えが述べられている。
つまり、読者のわたしたちも写真を見ながらその違和