見出し画像

ルリ色の田沢湖のような男前〔エッセイ〕

昨日、文通相手のおじさん(80歳)から、同時に2通の手紙が届いた。
誰でも開けられる古いタイプの我が家のポストから、バサッと落ちかけた2通の手紙と、数枚のチラシ。

字を見ればどちらもおじさんからだとわかる。
一通は、最近おじさんがよく使用しているブルーの封筒。
おじさんは封をした後、ポストに行くまでの間にも、私に伝えるべきことが浮かんでしまうようで、封筒の裏や、表の宛名書きの下にもびっしり文字が書いてある。封筒兼、ハガキのようなスタイル。

そしてもう一通は、おじさんの字で宛名が書かれているのに、『築地本願寺』の印字があった。おじさんの年齢を考えると、こういう印字のされた封筒を使われることには、ちょっとドキッとする。


今まで、一週間のうちに2通届くということは何度もあったけれど(こちらが返事を書く前に次が届くパターン)、日に2通は珍しい。
よほど興奮していたのか、急いでいたのか、達筆過ぎてほとんど読めない。その中で一つだけ『田沢湖のルリ色のような秋田の男前より』という文字だけは堂々としていて読みやすかった。


おじさんがカラーコピーして送ってくれる写真


2通あった理由として、築地本願寺の封筒の方は『7月のお盆号』だったようで、今回のみの特別号だった。

内容は、故郷秋田への思い、実母への思い、瑠璃色に関するうんちく。
そして最後になぜだか、1995年、某勤務先を退職するおじさんのそれを承認する文書のコピー、同じ部署にいた人たちの住所録、などなど。あまりじっくり見てはいけないような気持ちにさせるコピーの束が同封されていた。

そして通常版のもう一通の内容は、健康に関する持論及び自慢、スポーツの尊さ、労働をすることの大切さなどを説いている(読みづらいので、おそらく)。
長い手紙の最後の締めくくりに書かれていた事は何かといえば、ヤクルトについて。
たまに私にヤクルトを送ってくれるおじさん。たしか前回の手紙で私は、夏バテ気味で食欲が落ちていたところ、ヤクルトの存在が大変有り難かった旨を伝えた。
それに対して、おじさんにしては珍しく回答をくれて、
「ヤクルトを送るのは、仲のいいヤクルトのおばさんを支援したいからだ」と、なんとなく突き放すような言い方をした。
そこは「ヤクルトのおばさんと私のため」でいいじゃないかと思ったけれど、そんな正直なところもおじさんらしいと思う。

こんなことをnoteにつぶやいていないで、さっさと返事を書いたらいい気もするけれど、手紙って、返事を待つ時間も楽しいから、せめて一週間は書かないで焦らそうかなと思う。

そうなるとまたおじさんから先に手紙がきてしまったりするので、やっぱり早めに書くのが良いのかもしれない。
私も夏の特大号でも作ろうかな。



#エッセイ


この記事が参加している募集

今こんな気分

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?