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【ふしぎ旅】田沢湖

 秋田県仙北市にある田沢湖は日本一深い湖として、また秋田県を代表する風光明媚なところとして知られている。 
 田沢湖へは何の予備知識もなく観光で行ったのだが、訪れてみると「辰子姫伝説」などという神秘的な伝説が残っているところで、何やら私の訪れるところは、望まずとも不思議な話があるのだな、と笑った。

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 当日は快晴で、田沢湖のコバルト色の水面は、非常に鮮やかで美しく、感動したのだが、この奇麗な水面も「辰子姫」の伝説を知った後だと、少し切ない気持ちになる。 

 その昔、辰子という美しい女性がいた。
 ふとした拍子に、自分の美しさに気付いた辰子は「いつまでも若く、美しくありたい」と思い、永遠の美しさを得るために観音様に願をかけることを決心した。
 百日目の満願の夜、辰子は「ここから北に向かうと泉がある。その泉の水を飲めば願いが叶うだろう」という観音様のお告げを聞く。辰子が北へ向かったところ、一里ほど離れたところに泉があった。
 喜んだ辰子は、水を一口飲んだ。ところが飲めば飲むほど、喉は焼け付くように乾き、ついに辰子は腹這いになり、水面に口をつけて、ごくごくと飲み続けた
 気付くと、泉の水面には美しい辰子の姿ではなく、恐ろしい竜の姿があった。
 その途端、激しい雷鳴と共に大雨が降りだし、見る見る間に山が崩れ、流れ出た水により湖が出来上がった。その湖が田沢湖である。
 そして辰子は、龍神として不老不死の身体を手に入れ田沢湖の主となったという。

 永遠の美しさ、それは誰もが願うことだろう。しかしそれは、現実には難しいことであり、それを諦めさせるためにこんな悲しい伝説が生まれたのかもしれない
 「人として、その願いは難しいが、それでもよいのだろうか?」考えさせられる問いである。

 そんな伝説があるということもあって、田沢湖畔、とりわけ御座石神社の周りには、辰子伝説にまつわるスポットがいくつかある。

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 たとえば、鏡石。露出した大きな岩に、表面が平らな75cm位の六角形の石がはめ込まれた形になっているもので、辰子が化粧のために使ったとか。偶然にそうなったのか、誰かが作ったのか知らないが、よくできておる。 
 
 他にも、たつこが飲んだ泉の水とされる”潟頭の霊泉”や、願をかけると辰子の様に願いがかなうという願い橋などがある。
  その願い橋のたもとには、触ると願いが叶うと言われる「かなえる岩」(ひねりのないネーミング)があった。

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 見ていただくと分かるように、かなり急な崖の上にあり、その岩に触るのは一苦労のように見える。
 それでも、必死の思いで崖を登り、良縁を願ってきた。これだけ、頑張ったのだから願いが叶うとよいな、と思っていたのだが、後にガイドを読んだら、崖を登る必要はなくこの岩に向かって願うだけでよいらしい。
 どうにも私の行動には無駄が多すぎる。

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