見出し画像

ヤクルトを見ると知らない人の顔が浮かぶ。〔エッセイ〕


ただの、つぶやき。今日の日記のような。

✧✧✧✧✧✧


髪を切りに行った。
昨年秋からお世話になっている美容師は同い年で、とても話しやすい。

髪を切りながら、他愛もない話を楽しく一時間。
最後に、「今日、意外と切りましたよ」と言われたので床を見た。
ほとんど髪型は変わっていないのに、もしゃもしゃになって捨てられている私の髪の毛を見て、なぜか2人してその日一番笑った。


クール宅急便が届く予定の14時までに家に戻った。
私にクール宅急便を送ってくれるのは文通相手のおじさんのような気がして、少し落ち着かなかった。

前回貰った手紙の返事をまだしていないのに、数日後に手紙がきて、さらにクール宅急便も届きそうな状況になっている。



✧✧✧✧✧✧


15時をすぎてチャイムがなった。
配達員から冷えたダンボールを受け取って、名前を確認するとやはりおじさんからだった。「ヤクルト」と書いてあった。



おじさんは私の為ではなく、仲の良いヤクルトのおばさんを支援するために商品を買っている。

ヤクルト以外でも同じようなことがあった。
おじさんがお世話になっているマンションの管理人の奥さんが関わっているという婦人服の通販を「買っておいた方がいい・・・・・・・・・・・」から、私に商品を選べと言ってカタログを送ってきた。

おじさんは正直者すぎる。
なにかプレゼントしてくれる時は、そんな裏事情を説明してくれなくてもいいんだけどなぁと思う。

おじさんは今年、私の誕生日に金のネックレスを送ってくれた。
プレゼントはいらないのに、おじさんの中で決めていることがあるらしく、今年はどうしても金のネックレスを贈ることを決定していたのだそう。
だけど、金の価格が高騰していることは、おじさんにとって予定外だったようで、私にきっちり値段を伝えてきた。

ちなみに来年の誕生日に贈るものもすでに伝えられている。
おじさんと話していると、私は人よりも早く年をとっていくような気がしてしまう。

80歳のおじさんにとっては、先の予定があることは生きる希望だというのだから仕方ない。
だけどほんと言うと、私は先の予定を気にしながら生活することは苦手だ。

手帳を予定で埋めたくない。
1週間後の約束にそわそわしてしまう。
1ヶ月後の約束はさらに落ち着かない気持ちになる。
だけどおじさんは1年後に開かれるであろう(おじさん調べ)コンサートに私を招待してくれるという。

先の予定が苦手な理由。
「約束を守らなくちゃ」と生真面目に思ってしまう。
約束を守るために、体調を整えなくてはという、かすかなプレッシャーが続くことがなんだか疲れる。

もちろん、旅行やコンサートなどの先の予定は嬉しさもある。
だけどなるべくなら、「その日のノリ」とか、「その時の気分」でことが運べたら嬉しい。

だからって格別ノリノリな人間でもないけれど。


✧✧✧✧✧✧


ヤクルトは美味しい。
ヤクルトを飲んでいると、おじさんと、私の知らないどこかのおばさんの顔が浮かぶ。
これからもぜひヤクルトを送っていただきたい。
おじさんの好きなように。




#エッセイ









この記事が参加している募集

#今日やったこと

30,912件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?