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こんな世の中になっているとか、いないとか

横並びフレンズ 〔ショートショート〕


「今、少女たちの間ではあるモノが大流行しています。
それは『横並び棒』です。

街ゆく少女たちが、皆一様に横並びして歩く昨今、『横並び棒』を持って歩くことは、トレンドであり、仲間意識を高めるためにとても重要なアイテムと言えるでしょう。」

「かつて流行った『自撮り棒』のように、安価で、伸び縮みする棒のことですね。この横並び棒を仲良く握って横一列で歩くことがブームなんですね。しかし、なぜこんなにもこの『横並び棒』は流行っているのでしょう?」

「はい。例のウイルス性の病気の流行を幼い頃に経験した彼女たちは、マスクで顔を隠すことが当たり前として過ごしてきました。対面を避けろと言われ、常に横並びを意識させられた少女たちは、次第に人と真正面から向き合うことをしなくなりました。」

「正面から顔を見ないことで、ルッキズム問題から開放され、互いに干渉しない世代と言えますね。」

「そうですね。今日は、そんな今の若者を代表して、いつも仲良く4人で横並びしている女性たちに別々に声をかけ、一部屋に集まっていただこうと思います。真四角のテーブル席に、それぞれ座っていただき、彼女たちの反応をモニターで見させていただきましょう。」

「なるほど。いつでも一緒にいる彼女たちとはいえ、初めての対面では緊張するかもしれないですね。」

「えぇ。どんな反応を見せてくれるのでしょうか。では早速、一人ずつ部屋に入っていただきましょう。
まずは一人目の方。手前の席に着席しました。

続いて…二人目の方がやってきたようですね。おや?だいぶ戸惑っていらっしゃる。手前の方の左側の席にちょこんと座りました。」

「やはり、いきなり対面に座りはしませんね。ちなみに、彼女たちにこの企画の内容は伝わっているのですか?」

「いいえ。バイトの面接と偽って、席で待つようにとだけ伝えてあります。

あ、三人目がいらっしゃいました。空いている席は、どちらにかけても人と対面で座ることになります。とても挙動不審な様子で…あぁ、顔を背けながらようやく座りました。」

「四人目の方も来ましたね。とても警戒しているようです。
それにしても、彼女たち、全く話しませんね。一体どういうことなのでしょうか」

「確かに、随分とよそよそしいですね。
では、そろそろ彼女たちの元へ行って、人と対面で向かいあってみた感想を聞いてみましょう。」

∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

「いかがでしたか、皆さん。もういつものようにおしゃべりしていいですよ。これは本当の面接ではありませんから。
あぁ、驚かせてしまってすみません。もう普段どおり、リラックスしてください。
え?どういう意味かって?ですからいつものように…。

…だって皆さんは、横並びが大好きな仲良し4人組なんですよね?」


「…この子たち、だれ…ですか?」


#超ショートショート


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