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『人に言えない話』をべらべらと喋る会にて。(エッセイ)

とても個人的で、いかにも平和な話。


20代の恋の話の最終話を書いていて思い出した、友の「表情」がある。
すごく仲良くもないけど、たまに一緒に遊ぶ中にいたその子。

出会ったときは眼鏡で、ファッションも垢抜けなかったけれど、二十代前半で開花して、品のある美しい女性になった。

数年経って、久々に女だらけの会で再会した彼女は、海外を一人で旅したり、不倫したりする女になっていた。
なんだその説明、と思われるかもしれないけれど、普段会うわけではない彼女への印象を更新すると、そういう説明になる。

その彼女。同じクラスにいた頃から『恋に溺れるタイプ』だなと思っていたけど、大人になっても変わっていなかった。むしろ、目をつむり、うっとりとした表情で語る不倫の話を、私は彼女のすぐ斜め前で聞きながら、10メートルくらいの距離から聞いたような印象がある。引くってこういうこと。

恋の相手は美容室のオーナー。その下で働きながら、彼との恋に溺れる。
だけど彼女からは確か、『後悔』とか、『後ろめたさ』みたいな発言は聞かなかった。それぐらいの度胸と柔軟さを、『海外一人旅で身につけた』風に語っていた印象はあるけど。

女だらけの会は、ときに『女子会』と言われて、私が20代の頃の『女子会』は、お洒落して近況報告をしたりする場だった。
酒が進もうが進まなかろうが繰り広げられる『恋』の話。
恋の相手がいようがいまいが関係ない。おせっかいに、現状彼氏のいない人に妄想彼氏をみんなで作り上げて猛プッシュして付き合わせようとしたり。酒が進む程に生々しい話に発展。

更に夜がふけると、『いけない恋』の話を語りだす者が現れる。
『人に言えない話』と題しながら、これまた恍惚とした表情で、べらべらとよく喋る。

きっと普段は確かに『人に言えない』のだろう。
家族など、身近な人、職場の人、近所の人に堂々と言えないのはわかる。
それが、女子会においては、その場の主人公になっていろんな表情を浮かべて全てをさらけ出す。

女子会では、会ったこともない男性の性癖や、普段の癖、様々な情報を植え付けられたりする。かなり生々しい話が飛び交っている。その中の女性たちの誰かと関わりがある男性は、すべてを暴露されている可能性がある。

だけど、それだけ話しても、全てが本音だとは限らないのが恐ろしいところ。それは女子会に限らずだけど。

今となっては『女子会』は私にとって、遠い過去のエンターテイメントだから懐かしい。
いろんな表情を見せてくれた彼女たちのお陰で、恋にまつわる小説を書けている。逆も然りで、いくら聞き役が多かったとはいえ、青豆のムカつく表情を今でも記憶の片隅に飼ってくれている友もあるだろう。


私の経験してきた『女子会』とはこんなものだった。広い世間ではどうだったのだろう。

懐かしき、20代。




『金曜20時までの恋人』の最終話を投稿します。
20代の恋愛、読んでみてください。








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