授業や講演で質問が出ないのは学生や聴衆のせいでもあなたのせいでもなくただの設計ミスです。
今日の話は、学会とか授業とかワークショップで質問の時間を作ってるけど質問が全然でないのはなんで?ということを考えてみます。
せっかく授業したり講演したりしてるんですから、質問たくさんしてほしいですよね。あるいはYouTubeのライブ配信でもコメントしてほしいですよね。
質問があまり出ないとき、よく海外の人たちが自己主張することを引き合いに出し、日本人は質問をしないなどとよく言われます。確かにそうかもしれません、日本人の特徴なのかもしれません。
ということなので、日本人の特徴をしっかりと把握したうえで、質問の時間を設計したほうがいいと思います。質問しない人がわるいわけでもないし、話している人の話が面白くないから質問が出ないわけでもないと思います(話している人の話が面白くないからはあり得るかもしれません)。
質問が出ない、その心は?
みなさんが学校教育を受けていたころを思い出してみてください。どんな教育を受けてきましたか?
質問をするという皆さんは、質問をしてもいいという教育を受けてきているのだと思います。あるいは質問ができない状況に疑問を持っていたかたかもしれません。
なんにせよ、質問をすることのデメリットよりもメリットが上回れば人は質問をします。ただし、学校教育では、授業で正解を教えられる、正しい知識を教えられるという構造にあることが多かったのではないでしょうか?
正解を教わるという観点に立つと、疑問に思うことが誤りにすり替わってしまうので、質問をすること=悪になります。
疑問に思うのって駄目なこと???
この点は皆さんどうお考えですか?
授業で色々と工夫をすると質問が出ます。なので、疑問がないわけのだと思います。
他の先生の授業のお手伝いをしていても、授業後に長蛇の列で質問に来る学生がいるという授業もあります。その先生の授業は面白いですし、授業後には質問に学生が並びますが、授業中の質問の時間には手が上がることはありません。
これってなんなんだ?をこれから考えていきたいと思います。
質問の時間です=授業の終わり、早く終われ、人の時間を奪えない
質問の時間ってたいてい授業や講演の最後に来るじゃないですか。そうすると、早く終われるかもしれないのに、じぶんが質問したら人の時間を奪ってしまう。自分も早く帰りたいのにまだ続くのか…となってしまいます。
これは圧倒的に構造上のミスです。
終わりが見えてくるとわざわざ引き延ばそうとする行動をする意欲は減りますので、質問はしません。
ましてや、うまいこと早く終わらせようとみんな思っている的な感覚って一般的な感覚ですよね?早く昼ごはん食べたいし、休みたいし、ゲームやりたいっすよね。
なにかしてるついでに質問に答えてもらえるみたいな構造にしたほうがいいです。いつも出しているメンチメーターは、いつでも参加者の質問を拾うことができるんですね。
で、授業の最後を押さない形で、疑問に思ったときにいつでも質問を投稿してもらっておいて、最後に質問もらったことに答えていく時間にするとか、もっと言えば事前に質問を集めちゃうなんて方法も取れますよね。
僕は授業もワークショップも最後の10分間は感想を書いてもらう時間にしています。この時間中に、質問に答えたり、質問をしてもらうと、感想書いてる時間の空き時間だし、質問してもいっかみたいな構造を作れます。
質問することでネガティブな評価をくらうことが恐怖
良い質問しないと恥ずかしい、下手な質問はできないとかそういうことを考えて質問できないことが多々あります。実際に、質問をして、それは勉強不足だとか、ナンセンスだって言われることとかもあるわけですよね。
もうそんなにいないかもしれませんが、それは間違ってるとか、反論意見を頭ごなしに言ったりとかはやめたほうがいいと思います。
人それぞれ考えがあるんですから、どんな質問したっていいんじゃないでしょうか。疑問に思ったことをことばにできたことのほうがだいじなことだと思います。
どんな質問であっても「それはいい考えだね。質問してくれてどうもありがとう。」ってまず言いましょう。
そのうえで、学術的に正しい発想をお伝えしていくのは素晴らしいことだと思います。そうすると、また質問しようと思えるし、正しい知識も手に入るので一石二鳥ですよね。
そういう工夫をして質問行動を増やしていく工夫もできますが、もう、質問しないループが根強過ぎてそれすらも難しくなっています。
もう最初は匿名で質問を募りましょう。メンチメーターを使えば行けますし、他のシステムでも色々とあると思います。誰が質問しているかわからなくすれば質問は出ます。
主体性とかそういう話もありますが、質問をするって習慣をつけてから、次に匿名ではなく自分の意見として質問できるようにしていきましょう。
そうすることで質問が出たら、片っ端から回答していく、あるいは最後に回答する。質問したらプラス経験があることをマインドセットのなかにいれていけるようにしましょう。
何を聞いたら良いかわからん
これもよくあります。何をどう疑問に思っていいのかがわかんない。こんなこと疑問に思っていいのか?ということです。
まず、受講者のレベルの差異ももちろんあると思いますが、基本的にはなんでも質問していいです。授業やワークショップで、説明をうけて理解できなかった場合、基本的には講演者の説明能力がたりなかったと考えたほうが適切です。
ですので、なにがわからなかったのか?を教えてもらうことは講師側にとっても有益な情報が得られることが多いと思いますので、質問してください。周りの人たちの感想も同じようなものであることも多いので、その場合は質問してあげたほうが周囲の理解も促進できていいことだらけです。
開催側は、知識を積み上げていけるような構造設計をまず大事にしましょう。ワークシートを使って自分の意見を書きながら進められるような形式にすると、どこがわかってどこがわからないのかが見えてきますよ。
最後に、質問することのメリットとデメリットはなんだ?
質問することのデメリットはこれまであげてきたように、ひとの時間を奪ってしまう、こんなくだらない質問をして人にばかにされないだろうかという不安があります。
それに加えて、意識高い系と思われることやインセンティブを得たり名声をえようとしていると思われそうというのもあると思います。
意識高い系って、全然悪いことじゃないと思うのですが、なにか足並みをそろえようとする文化とは相反しますよね。質問しようとすること自体が足並みをそろえていないことにつながります。
心理学的にも、肯定的に評価されることを恐れたりする心性などもあり、ポジティブに思われることを嫌がる人もいます。
またポジティブな評価を得ることも、なーんか銭ゲバな感じがしてなんだみたいに思うこともあるかもしれません。つつましく生きよ的な価値観からは外れるかもしれないです。手を挙げて主張することが、足並みをそろえていないように見えるのかもしれません。
ですが、質問することってそもそもそういう問題じゃなくて、知的好奇心を満たすことだったり、問題解決策を広げることにあるじゃないですか。
わからないことをわからないままにするのって、成長にもつながらないし、むしろ人に迷惑すらかけることもあるかもしれない。
知りたいことを知れないってすんごく嫌なことです。せっかくその場に専門の人がいるんだから、色々と聞いてみましょう。
開催する側は、質問しやすいように、いつでも質問を受け入れる仕組みを作ったり、質問したこと自体をポジティブにフィードバックすること、そして匿名から匿名じゃない形に段階的にレベルを上げて行ったりもできると思います。
おたがいにできることから1つずつ、可能性を高めていって、それを持続できるように。こころがけ1つでいろいろな可能性が広がると思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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筆者 あおきしゅんたろうは福島県立医科大学で大学教員をしています。大学では医療コミュニケーションについての医学教育を担当しており、臨床心理士・公認心理師として認知行動療法を専門に活動しています。この記事は、所属機関を代表する意見ではなく、あくまで僕自身の考えや研究エビデンスを基に書いています。
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