時短家電を使わずに手に入れるゆたかさ
その日は次女が初めての突発中で、全身に発疹ができすこぶる機嫌が悪い日だった。
やっと寝付いた次女を寝室に置き、たまった仕事を片付けようと思ったけど、へとへとだった私はそのスイッチも入らずに、それ以上にやり残していた保育園の名札つけと夫のシャツのアイロンがけをすることにした(次女が寝てる間しかできない事は本当に山ほどある)
我が家はフルタイム共働きだ。
そして私はワンオペ育児中なので、時間はいくらあっても足りない。
一般に、フルタイム共働きで母親がワンオペ育児の家庭は多いだろう。
時短家電をフル活用して何とか仕事と育児と家事をやりくりするコツなどが巷にはあふれている。
ただ、このコロナ禍で、気付いた事がある。
家の中で時間を気にせずに布団を干したり掃除をしたり料理をしたりする時間。家事全般が、もともと私は好きなんだという事に。
起業する前は専業主婦だった。
起業して全国を飛び回るようになってから、最初に捨てたのは家事の時間。そして月の3分の1は出張でほとんど家にすらいない。
そんな生活を5年続けて、コロナにより3月から生活は一変した。
ほとんど家から出なくても仕事が出来るように経営体制を変えたことで、あれだけ行っていた出張は全面廃止、職場も週一しか行かない。
ほとんど家の中にいる生活になったのである。
ストレスがたまったかと言えばその逆で、もともとの引きこもり体質が幸いし、今の生活がとても気に入っている。
出張ばかり行っていた日々はもう遠い昔の様である。
移動時間で奪われていた時間が少し家事に充てられるようになったかと言えば、それ以上にやらないといけない仕事が増えたのでゆとりの時間はなかなか生まれないけど、時短家電では得られないひと手間をかけた家事の時間を大事にしようと思うようになった。
タスクばかりをこなしていると、いかに早く家事を済ませるかに意識が言ってしまう。
でも、改めてゆっくり夫のシャツにアイロンをかける。
外は雨の音が聞こえていて、しんとした和室に響く。
デザインに惹かれて買った、スチーム機能も何もないシンプルなアイロンを滑らせるとシャツのシワがピンと伸びていきそれを目で追う。
無心でシャツにアイロンをかけ、次は次女の保育園用のタオル。
目印になるアイロンプリントの小さな苺のワッペンを何枚もつけていくと小さな達成感を感じる。
クリーニングでお金を出せば一瞬で解決するこの時間をあえて作るのは、夫への仕事に対する尊敬や、夫を想い愛情をチャージする大事な時間だ。
そしてこの時間の余白がまた新しい仕事のアイデアを生み出す時間でもある。
あえて頭に空白の時間を作りメモリをあけることで、新しいアイデアを入れ込むのだ。
私の場合はその時間が手間をかける家事の時間なんだなと気づいた。
数年前、やりたいことリストを作ったことがある。
その時に一番書いていたのは
「家の中を快適に過ごすこと」
だった。
会食や出張で飛び回る生活もとても楽しかったけど、今の生活で感じるじんわりとした幸せもとても価値があるものだと思うし、最後にどちらを大事にしたいかと言えば後者である。
時短家電を使って得られる時間のゆたかさもある。
でも、時短家電を使わないであえて手間をかけて家事をする時間もゆたかさのひとつである。
ピンとシワの伸びたシャツをハンガーにかけながら、次はいつこの時間を作ろうかなと少し楽しみにしている自分がいる。
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