8つの聖書的契約分類
8つの聖書的契約は、条件付契約と無条件契約に分類される。
この区分は、聖書全体のメッセージを理解するために極めて重要である。
条件付契約(双務契約)の内容と特徴
条件付契約は、神と人との間の双務契約である。双方が権利と義務を持つ契約で、日常的な契約の多くがこの形態に属する。
「もしあなたが○○するなら」という形式で結ばれる。契約の祝福を受けるには、契約条項を守る必要がある。
人間が契約条項を守るという条件で、神の祝福が下る。違反した場合は裁きが下ることが多く、祝福か呪いかは人間の応答次第である。
8つの聖書的契約の中には、条件付契約が2つある。エデン契約とシナイ契約(モーセ契約とも呼ばれる)である。
無条件契約の内容と特徴
無条件契約は、神と人との間の片務契約である。神だけが責務を有する契約である。
「わたしは○○する」という形式で結ばれる。人間の側に契約不履行があっても、契約が破棄されることはない。神の恵みにより祝福が保障されている。
無条件契約には、実行すべき条項もあるが、これは感謝の心から行うもので、祝福の条件ではない。そうでなければ条件付契約となる。
8つの聖書的契約の中には、無条件契約が6つある。アダム契約、ノア契約、アブラハム契約、土地の契約、ダビデ契約、新しい契約(新約)である。
神とイスラエルの契約
8つの聖書的契約の中には、神がイスラエルと結んだ契約が5つある(条件付契約が1つ、無条件契約が4つ)。
神がイスラエルと結んだ条件付契約
シナイ契約のみである。これは条件付契約であり、いずれ終わる(破棄される)。
神がイスラエルと結んだ無条件契約
アブラハム契約、土地の契約、ダビデ契約、新しい契約の4つである。これらは字義通りに解釈する必要がある。
これらの4つの契約は永遠の契約であり、時の経過によって変更されたり破棄されたりすることはない。イスラエルの不信仰や罪によっても破棄されない。
ローマ9:4は、これらの契約の存在を前提に書かれている。
エペソ2:11-12によれば、クリスチャンでない異邦人は「約束の契約については他国人」である。
無条件契約の条項に関する注意点。
無条件契約が結ばれると、ある条項はすぐに有効になる。
ある条項は、近い将来に有効になる。
さらに、ある条項は遠い将来に有効になる(今日でも成就していないものもある)。
★聖書契約の8分類
1. エデン契約(条件付き契約)
1. 聖書箇所
創世記 1:26-31、2:16-17
2. 契約の当事者
神とアダム
アダムは人類の代表として立ち、その行為は全人類に影響する
3. 契約の条項
アダムの従順により「命と祝福」または「死と呪い」を受ける
地に満ち、地を従わせる使命
堕落前の労働は楽で、豊かな収穫があった
「善悪の知識の木から取って食べてはならない」という禁止命令
「それを取って食べるとき、必ず死ぬ」という警告は霊的死を意味する
4. 契約の現状
エデン契約は「無垢の時代」の基となるが破られた(創世記 3:1-8)
人は霊的に死に、神との交わりが不可能になった
肉体の死は時間をおいてやって来た
アダムの違反により全人類が「罪と死のパターン」に陥った
2. アダム契約(無条件契約)
1. 聖書箇所
創世記 3:14-19
2. 契約の当事者
神とアダム
アダムは人類の代表として契約に立ち、その裁きは全人類に影響する
3. 契約の条項
サタンに利用された蛇は呪われる(比喩的表現で蛇が塵を食べる)
メシアの約束(創世記 3:15の「原福音」)
女の子孫とサタンの子孫の敵意
女の子孫がサタンの頭を踏み砕く
女(エバ)への宣言
苦しんで子を産む
夫への支配欲が増す
男(アダム)への宣言
労働の苦労を経験
霊的死に続いて肉体的死が訪れる(例外はエノクとエリヤ、携挙の時の聖徒たち)
4. 契約の現状
アダム契約は「良心の時代」の基となる無条件契約であり、今も有効
3. ノア契約(無条件契約)
1. 聖書箇所
創世記 9:1-17
2. 契約の当事者
神とノア
ノア以降の人類に対する神の計画を示す
3. 契約の条項
人間による統治形態(政府)の設立
殺人者に対する死刑制度のため
自然界の秩序の再確認
動物に人への恐れを入れ、肉食を許可
人は菜食とともに肉食も始めるが、血を食することは禁じられた
4. 契約の現状
洪水によって滅ぼされることは二度とないという約束(創世記 9:8-11、2ペテロ 3:10)
ノア契約の「しるし」は虹
ノア契約は「人間による統治の時代」の基礎となる
4. アブラハム契約(無条件契約)
1. 聖書箇所
創世記 12:1-3:アブラハム契約への最初の言及
創世記 12:7:再確認
創世記 13:14-17:ロトと別れた後の確認の言葉
創世記 15:1-21:アブラハム契約のサイン(封印)
創世記 17:1-21:契約の「しるし」としての割礼
創世記 22:15-18:イサク奉献の後の祝福の言葉
2. 契約の当事者
神とアブラハム
アブラハムの子孫(イサク、ヤコブ、ヤコブの12人の息子たち)に継承される
3. 契約の条項
3つの領域に分類される
アブラハム個人に対するもの
イスラエル民族に対するもの
異邦人に対するもの
アブラハム個人に対する条項
アブラハムから偉大な国家(イスラエル)が出てくる
アブラハムに土地が約束された
アブラハムの名が大いなるものとなる
アブラハムによって地上のすべての民族は祝福される
アブラハムを祝福する者は祝福され、呪う者は呪われる
サラによってひとりの息子が与えられる
彼の子孫はエジプトで400年間の奴隷生活を送る
4. アブラハム契約と他の契約の関係
土地に関する条項は、土地の契約で再確認され、詳細に定義される
子孫に関する条項は、ダビデ契約で再確認され、詳細に定義される
祝福に関する条項は、新しい契約で再確認され、詳細に定義される
5. 契約の現状
アブラハム契約は「約束の時代」の土台であり、無条件契約なので今も有効
最終的な成就は「御国の時代(メシア的王国、千年王国)」を待つ
5. シナイ契約(条件付き契約)
1. 聖書箇所
出エジプト記 19:3-8(広くは出エジプト記 20:1-31:18)
2. 契約の当事者
神とイスラエルの民(仲介者はモーセ)
エジプトから約束の地へ移動中に与えられた
モーセの律法が特徴。律法に忠実なら祝福を受け、違反すれば裁きを受ける
3. 契約の条項
モーセの律法
613の命令(365の禁止命令と248の積極的な命令)
ノア契約の食物規定に制限が加えられた
動物は反芻し、ひずめが割れているものに限定
魚はひれと鱗があるものに限定
割礼の命令
アブラハム契約の「しるし」の意味が拡大
異邦人がイスラエルの民に加わるためには割礼が必要
契約の中心要素は血のいけにえ
「肉のいのちは血の中にあるから」(レビ 17:11)
4. 契約の現状
シナイ契約は「律法の時代」の土台
メシアの死により無効になった(ローマ 10:4、2コリント 3:3-11、ガラテヤ 3:19-29、エペソ 2:11-18、ヘブライ 7:11-12,18)
今の私たちに与えられているのは「メシアの律法」
6. 土地の契約(無条件契約)
1. 聖書箇所
申命記 29:1-30:10(特に申命記 29:1)
2. 契約の当事者
神とイスラエルの民
3. 契約の条項
イスラエルの不信仰と世界離散の預言
イスラエルの悔い改めとメシアの再臨の預言
イスラエルは「メシア時代」の祝福を受ける(申命記 30:8-10)
4. 契約の現状
土地の契約はアブラハム契約の土地に関する条項が発展したもの
約束の地の所有権はイスラエルに再確認された
不信仰で追放されるが、土地の権利は奪われない
土地の契約は無条件契約で今も有効
イスラエル建国(1948年)は終末時代の観点で重要
7. ダビデ契約(無条件契約)
1. 聖書箇所
2サムエル記 7:11b-17(ソロモンに重点)
1歴代誌 17:10b-15(メシアに重点)
2. 契約の当事者
神とダビデ
ダビデはダビデ家の代表
3. 契約の条項
ダビデに永遠の王朝が約束される
ダビデの息子ソロモンが後を継ぐ
ソロモンが神殿を建てる
ダビデ王国の王座は永遠に確立される
ソロモンは不従順の罰を受けるが、王座から退けられない
メシアとその王座、家系、王国は永遠に確立される
ダビデ契約はアブラハム契約の子孫に関する条項の発展
メシアはユダ部族のダビデ家系から出る
4. 契約の現状
ダビデ契約は無条件契約なので今も有効
メシア的王国(千年王国)の到来を保証する
メシア的王国でキリストが地上で王として統治する
8. 新しい契約(無条件契約)
1. 聖書箇所
エレミヤ書 31:31-34
2. 契約の当事者
神とイスラエルの二つの家(ユダとイスラエル)
3. 契約の条項
モーセ契約とは異なる(エレミヤ 31:32)
イスラエルの霊的回復と救いの祝福、国家的救いを約束
イスラエルの霊的回復はすべてのユダヤ人を含む(メシア的王国で実現)
罪の赦しを約束
聖霊の内住を約束(モーセ契約にはなかった)
キリストの律法が与えられる(ガラテヤ 6:2、ローマ 8:2)
アブラハム契約の「祝福」に関する条項の発展
異邦人が信仰によってオリーブの木に接ぎ木される
ユダヤ人と異邦人が新しい一人の人(教会)となる
4. 契約の現状
新しい契約は無条件であり、今も有効
異邦人は信仰によって霊的祝福を受ける
物理的約束(特に土地の約束)はイスラエルのもの
教会にとっては「恵みの時代」の土台
イスラエルにとっては「御国の時代」の土台
まとめ
8つの聖書的契約を学ぶことは、聖書を正しく理解する助けとなる。
条件付契約は人間の罪性の深刻さを明らかにし、無条件契約は神の主権の素晴らしさを示す。これらの契約を正しく理解することで、信仰生活と終末論が整えられる。
[出典:月刊ハーベスト・タイムvol.389~vol.392]