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メタ視点としょーもない自分(作るとか売るとか イベント感想)

2022年12月21日の夜。

大阪のスタンダードブックストアにて
スタンダードフックストア 中川さん
docket store 山下さん
藤田金属 藤田さん
と一緒に『作るとか売るとか』というトークイベントを開催しました。

当日は立ち見も出るほどの大盛況!にもかかわらず、すごくやさしい空気が流れてて最高にお話ししやすいイベントでした。

ご参加いただきありがとうございました!

4人それぞれが別々の立ち位置ということもあり情報量が多く、聞く人それぞれの「良かった」と思う部分がある充実の内容になったと思います。

今回はその中でも、僕にとってすごく印象に残ったところだけを抜粋して書いてみたいと思います。


デザイナーじゃなくて人と人

藤田さん
うちらみたいな「製造業がどういったデザイン会社と組んだら良いか」って、よく相談されるんですけど、デザイナーさんというよりは人としてフィーリングが合うか合わないかで選ぶのが一番すね。

「あの製品をデザインしたからあそこ」じゃなくて、その人とどうできるか、キャッチボールできるかっていうほうが大切な気がしますね。


アオキ
よく藤田さん言ってますもんね。「デザインの力で」とか「デザインを導入して中小企業が変わる」とかは、全部ウソやでって。

フライパンジュウはTENTと藤田金属、僕らと藤田さんが、人と人として創意工夫したからできたこと。「デザインがあればなんとかなる」ってものではないんですよね。

最初のイメージから変わってしまうこと

中川さん
ちょっと会場からの質問いきますね。
「試作を繰り返す中で、最初にイメージしていた形と違っていくと思いますが、最初のイメージからかけ離れていくことに怖さが芽生えることはないですか?もしあれば、どう対処しますか?」ってことなんですけど。


アオキ
実は僕は、最初はめちゃくちゃ格好悪いものしか作れないんですよ。だから「イメージ通り行かないでくれ」って思ってます。最初のイメージからどんどん変わっていかないとまずいんですね。


中川さん
どういうことですかそれ!?


アオキ
なんていうか、最初の試作よりも量産された製品のほうが格好良いんですよ、僕の場合。一個めの試作とかは絶望的にダメだったりします。


中川さん
へえー!どの辺がダメなんですか。フォルムがなんか美しくないとか?


アオキ
いや、美しさ以前の問題で。「ダサいし使いづらいし、どーすんのこれ?」ってくらいひどいものです。

スケッチやCGを描いても良いか悪いかなんて実際わかんないんで。
「あわよくば?格好良いかも、しれないし?」って、ラフな試作して。
「うわ、ダッセー!」って自分で思って、ここをこうしたらマシになるかな…とか繰り返していく感じですね。

試作5号機くらいで不意に、おしゃれで機能性もバッチリなものができちゃう感じです。試作5号機っていっても、2日でそこまで作るぐらい雑なものです。


中川さん
あっという間じゃないですか


アオキ
子どものために段ボールで工作してたんですけど、その時「計画しない図面ひかない」って制限を自分にかけてたんですね。それをやってから殻が破れて、頭で考える前に手を動かしちゃうようにしてます。


山下さん
試作しながら目的に合わせていく感じなんですかね


アオキ
うーんと、最初はいくつもの目的が混在しちゃってるんですよね。たとえば「持ちやすくて置きやすくて立てかけやすい」みたいなものを漠然と考えちゃって試作するじゃないですか。

使ってみたら「立てかけることってなくない?」とか「持ち手なんてなくても持ちやすいじゃん」とか気づいて、どんどん削ぎ落とされて、目的がクリアになっていくイメージです。

最近はもう、自分の「アイデアの良し悪しを見る目」を信じなくなりました。試作してみると意外と良かったり思わぬ発見もあったりするので。

中川さん
なんか「青木さんってほんまにデザイナーなん?」みたいな感じやね。今日最初に青木さんに会った時に僕は拍子抜けして。「え?こんな人なんや」って。あまりにもオーラのない普通の人で、ちょっとびっくりしてしまって。

今の話を聞いてても、デザインしている人とは思えない。だからすごいんやないか。隙間だらけやなあって。入り込む余地をすごい作ってるところがすごいなあって。「デザイナーデザイナー」してたら、ちょっとしんどいすもんね。


しょーもない自分

中川さん
『アイデアとかデザインとか』を読んで思うのは、青木さんには、いつも別の角度から見てるもう一人の青木さんみたいな人がいて、「これちゃんと目的に合うてるか?ちょっと待て、目的と手段を取り違えてないか」みたいなことをいっつも冷静に見てる感じがするんですよね。なんか。

DRAW A LINE の開発秘話でも「ちょっと待って、一本の線に戻ろうや」とか。そこがこの本で学ぶ感じがするかなあ、俺は。


アオキ
なるほど、中川さんのお話を聞きながら、もしかすると関係あるかもって思ったことを話しますね。

TENTは結成直後から徹夜しないで早く帰宅することを心がけてて。家帰ってご飯食べて子どもを風呂に入れて早く寝る、そっちが最重要ミッションで仕事はオマケみたいな。

実際は難しいですけど「少なくとも心持ちはそうあれ」って、共同代表であるハルタさんとよく話してたんですね。

デザイナーって徹夜とかするじゃないですか。僕も過去にその状態だったことがあるんですけど、そういう時って、ちょっと自分がスーパーマンになったみたいな、アドレナリン出てて、頑張ってる自分に自己陶酔してる状態なんですよね。

アオキ
一方で、早く家に帰って家族と過ごすとか寝るとかって、本来のしょーもない自分に戻す作業なんですよ。実はそうすることで、メタな視点というか、引いた目線を確保しようとしてたんじゃないかな。

そういうところから、中川さんの言う「もう一人の冷静な自分」みたいなものを確保できたのかなと思いました。本当は誰でもそうだと思うんですけど、本来の自分って、しょーもないじゃないですか。

そういう自分に向き合う時間を確保すると、「そういえば、名言おじさんみたいになっちゃってたわ、さっき。」とか振り返ることができる。そういう瞬間って必要な気がしてて。


中川さん
まあ、ちょっと言い方は悪いけど、青木さんがデザインしたものを使う人って、そういう「しょーもない人」なんですよ。だから、そういう視点に戻れるやろうし、わりといつも見直しがすごいんやろうなって、それを一番感じました。

本の最初に出てくる娘さんの作文にある、ね。
「だれもやってないことをやってるからお金がもらえるんだよ」って。そこに繋がるんやろうなあって思いますね。

あれはめっちゃ良い作文やった。作文の写真まで載ってるからね。みなさん本を読んでみてください。


イベントでは他にもスタンダードブックストアさんの成り立ちや藤田金属さんの工場にあるショップの話、ドケットストアさんの自社製品のことなど、さまざまな興味深いお話がありました。めっちゃ楽しかったです。

ご参加いただいた方、もしよかったら、それぞれのご感想をnoteやSNSで聞かせていただけると嬉しいです。

大阪、これまでも好きだったけど、さらに好きになりました。
イベント後のサインもたくさん書かせていただいて、一人一人とお話しできてすごく嬉しかったです。

ありがとうございました!


こちらのドケットストア山下さんの感想も合わせて読むと面白いと思います!

こちらのテツカさんの感想も、最高です!


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