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僕の秘伝のFFSW

自分のモノづくりにおいて重要な、すごいことに気づいてしまった。

誰もがスッと理解できる話ではないと思うんだけど、書いてみようと思います。分かるか分からないか、まずは読んでみてください。

まず、気づくキッカケになったのは、このショート動画です。


このホウキの動画を作った時になぜか、自分の中でこれまでにない「芯を捉えられた感覚」があったんです。

それが何なのかを考えてたら出てきたのが


1. F.F.S.W.

FFSWという4つの単語です。これは「伝え方」とも言えるし「思考法」とも言えるんだけど、とにかく僕にとって何かを作る上で押さえておくべきことが

Form(形態)
Function(機能)
Scene(場面)
Words(言葉)

という4つの単語で示せることに気づきました。

上記のホウキ動画で言うなら
「三角形だ」= Form
「ホウキが外れてチリトリになるのか」= Function
「玄関でそうやって置いておけるのか」= Scene
(この動画の時点ではWordsは無い)

という感じ。

とくに最初にForm「三角形だ」が置かれることで、突き抜けた感覚があったんですよね。


2.美しさなんて曖昧



それぞれの単語について補足すると

Form
形は形としてそれ単体で意味を持ち

Function
実はその形には機能的な裏付けがあり

Scene
暮らしの中に実装されている様子

Words
その先を一言で端的に表す

ということになります。
(あとで具体例を挙げますね)


何かを作るとき、とくに「便利な道具を作ろう」と思う時って、だいたい機能から考えると思います。

「機能から考えて、形ができた。」
ここまでが、いわゆるエンジニアリング的なアプローチですね。

「機能からできた形を、美しくまとめた。」
これが、いわゆるデザイン的なアプローチ、とされてた気がします。

でも「美しい」ってなんでしょうね?

時代にも人にもよるし、僕にはその言葉の意味するものがさっぱりわからない。だから、実作業においてそんな曖昧なゴールはとても使えたものではありません。


3.形は形として立つ


「美しさ」がゴールではないなら、僕がやっているのは何か。

それは「形は形としてそれ単体で意味を持たせる」というやり方だったっぽいんです。

Form follows Function(形態は機能に従う)と言われて久しいし、僕も機能から出来上がった形は好みです。

でも機能をそのまま形にしたなんて、あらゆるジャンルの量販店に数えきれないほど並んでいます。それだけでは「突き抜けたもの」は作れない。

だから、機能から考えたにも関わらず、その機能を取り去ってしまっても「立つ」形を考える。それが、僕がやってきたことであり、TENTが目指すモノづくりな気がしてきています。


具体例を出してみましょう。


透明な本


「本を開いたままにしておきたい」という課題を思いつきました。
そして
「透明板を本の上に乗せれば良い」という機能を考案しました。
そこからさらに踏み込んで「意味を持つ形」を考えてできたのが

『BOOK on BOOK』です。

ただ機能するだけなら、職人さんがハンドメイドしないとできない複雑な形状を7年もかけて実現する必要はなかった。

透明な本である。それが BOOK on BOOK にとって重要なポイントだったんですね。


ヨット

「本を立てて飾りたい」「立つ栞が作りたい」それが機能する形を試作した上で、さらに踏み込んでできたのが

ブックヨット です。

本を立てて飾れる栞である。けれども、本を立てていない時にも置いておきたくなるようなモチーフを探してできたのがブックヨットでした。

ヨットって言うからには帆を倒せるようにしたくて、構造でとても苦労したのは良い思い出です。



数字の10


「取っ手がとれるフライパン」という課題がありました。
「そのまま食べちゃう」という願望に気づきました。
そこからさらに踏み込んでできたのが

フライパンジュウ です。

最初からお皿にしたかったわけでも数字にしたかったわけでもない。360度どこからでもスムーズに着脱できる構造を考えて。

そこで止まらずに意味のある形を探してたどり着いたのが「10」だったんですね。


一本の線

「押入れの中とかではなく、リビングで堂々と使える突っ張り棒が欲しい」という願望がありました。それを実現する質感とディティールを積み上げて、格好良い突っ張り棒ができました。

でもそこに止まらずできたのが

DRAW A LINE です。

空間に「一本の線をひく」ことができれば、そこにさまざまなパーツを追加して自分にとって最適な家具を構築することができる。

そんな概念はムービーで端的に示しています。


まだまだ例はいくらでも挙げられるんですけど、これくらいにして。

4.意識に定着しやすい形


ここまで書いてきた「意味のある形」ってなんでしょう?

「透明な本」「ヨット」はわかりやすいですよね。でも「三角」とか「数字の10」「一本の線」に何の意味があるんでしょう?

意味っていうのは言いすぎたかもしれません。

たぶん僕が言いたいのは「アイコンになり得るかどうか」つまり「意識に定着しやすい形かどうか」なのかもしれないです。

そもそもが機能から着想した製品なのだから、形状には理由があります。

でも機能的な理由を取り去ってしまっても意識に定着しやすい形やモチーフが「三角」「透明な本」「ヨット」「10」「一本の線」だったんじゃないでしょうか。


5.場面と言葉の役割

ここまでForm(形態)とFunction(機能)についてお話しましたけど、残りの2つScene(場面)とWords(言葉)についてもちょっと書いてみますね。


Scene(場面)
これはつまり、製品が実際に使われている様子のこと。暮らしの中に実装されて、ちゃんと効果を上げている様子を
・ちゃんと想像して開発すべし
・本当に使って改善すべし
なのはもちろん
・使っている様子を伝えるべし
とも言えます。

今日だってほら使ってます


さて、残った最後の単語
Words(言葉)

これは、Form(形態)とFunction(機能)とScene(場面)だけでは伝えることのできない広さや長さを持った効果について端的に示すという意味で。

たとえば
さあ、掃除しよう。 新しい世界を創造するために。
一本の線からはじまる、新しい暮らし
「つくる」と「たべる」を一つにする
切り替えると、うまくいく。
のせる、すわる、しまう、一緒に暮らす。

などなどが該当すると思います。

形を見ただけ、機能を知っただけではわからない、長く愛用すると発揮される効果や達成する景色について、簡単な言葉にしてみようという感じ。

完成した製品を見ると「なんだ、ただのキャッチコピーじゃん」と思うかもしれないけど、実は開発過程でこれらの言葉はすごく重要なんです。

その製品が本当に抱えている長期のミッションは何かがクリアになるから、余計な機能や形を加えなくても済むというか。そんなフィルターとして大事なのがWordsです。

6.それぞれのジャンプ率

というわけで、4つの単語について具体例を示しつつお話ししてきたわけですけど、最後に僕が最も重要だと思うポイントについてお話しします。

それは、4つそれぞれのジャンプ率。それぞれが同じようなことを示していても、そこには驚きが生まれないんですね。

Function(機能)が、Form(形態)が、Scene(場面)が、Words(言葉)それぞれが「立って」いて、繋がるとは思えないものが繋がっているから、そこに驚きがあるわけです。

コップの形をしたコップに驚きはない(そういう普遍的な良さってのもあるはあるけども)。

「三角が、チリトリ?しかも、機能的裏付けがあった!」っていうのが冒頭のショートムービーにある驚きなのではないかと。

というわけで
「形態は機能に従う」という過去の名言に甘んじることなく、自分なりのやり方について、これからもしっかり考えていこう!と、帯を締めてみる年末でした。


長々と書いちゃいましたけど、どうでしょう。まだまとまりきってなくてすみません。

FunctionよりもOperationの方が良さげじゃない?とか、4つじゃなくて5つじゃない?とか既にいろいろな意見をいただいてまして、そのあたり含めて色んな人と話し合うことで、もっとシンプルに、もっと使いやすい「技」にしていきたいと思います。

こんな個人的メモを最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この話題は Podcast「知らんがなラジオ」でも掘り下げてみてます。
よかったら聴いてみてください。


<追記>
「Wがあることで、どうなるのかわからない」と質問いただきました。
あくまで僕にとっての方法なので人によっては腑に落ちないのも全く問題ないと思いつつ、いちおう補足として書きますと

4つそれぞれが「何のためにあるのか」ではなくて。製品を開発する時に、この4つを押さえどころとして、それぞれを行き来しながら研ぎ澄ましていくと(あくまでアオキ基準での)良いものが作れる!というイメージです。

「この4つだけ考えれば製品が作れる」とか「この4つで宣伝しろ」でもなければ「この4点を押さえればヒット商品が生まれる!」という意味でもないので「へえー、アオキはそうやってんのね」くらいに聞いてもらえると嬉しいです。





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