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【小説】花束の物語【薔薇編#1】

あらすじ
近づいた人を不幸にしてしまう少女”イバラ”の苦悩と恋を描いた物語



 私は、「イバラ」。みんなからそう呼ばれている。 もちろん良い意味ではない。悪い意味で、だ。

 私と付き合いたいと近づいてきた男の子は、次の日、交通事故に遭ったり、犬にかまれて入院したり、テストで全教科赤点になったり.....…
 私と友達になろうと近づいてきた女の子は次の日、彼氏に振られたり、飼っていたペットがなくなったり、親友と大喧嘩して絶交したり.....…

 そんな出来事がうわさとなって全校生徒に伝わり、陰で「イバラ」と呼ばれるようになっていった、らしい。

 仕方のないことだ。美しいものには棘がある。私の棘は少し鋭いだけで、美しいことに変わりはない。こんな風に開き直って強がることが私の高校生活での日常。もちろん彼氏はいないし、友達もいない。いわゆる”ぼっち”だ。
 そんな私にも夢がある。看護師になることだ。
 私の両親はどちらも看護師をしている。私は小さい頃体が弱く、二人が働いている病院で入院していた。二人が皆から尊敬され慕われている姿を小さなころから見て、私もそうなりたいと思った。自然な流れだ。

 なので、進路希望調査に看護師と書いて今から先生に提出しに行こうと立ち上がった時、私の所に3人の集団が近づいてきた。

「あれぇ?イバラ、どこに行くの?あなたがうろついたら皆不幸になっちゃうじゃない。おとなしく座っててくれる?」
 そう言ってきたのはクラスの女王的存在の女子生徒。

「そうよ。あなたのせいでうちで飼っていたシロは死んじゃったんだから!」
「私なんて、きょうやくんに急に振られたわ!しかも、振った次の日から学校に来なくなったんだから!」
 そう言ってきたのは、女王に取り巻く金魚の糞その1とその2。

 いつものことだ。私は気にすることなく職員室の方に向かおうとしたとき、手が滑って進路希望調査の紙を落としてしまった。紙は女王の足元へ。
 しまったと急いで紙を拾おうとしたが遅かった。よりにもよって一番見られたくない奴に見られてしっまった。
 案の定、女王は私の進路希望調査を見ると、周りの生徒に聞こえるようにわざと大きな声で叫んだ。

「えぇーーー!?イバラ、看護師になるのー?やめてよーー!病気になった人がみんな不幸になるじゃない!安心して病院にも行けなくなるわ」

 分かっていた。そう言われることは。気にしないようにしても夢を馬鹿にされるのはやはり傷つく。脳みそが沸騰し、顔が熱くなる。

「あんたがいるだけでみんな迷惑なの!看護師何てやめて、おとなしく牢屋にでも入っててくれる?みんなを不幸にするだけなんだか-----」

 パァーーーーーーーン!!

 乾いた音がクラス中に響いた。私は、無意識に女王の頬を叩いていた。
 イバラが女王を叩いたぞ、と周りがざわつく。

「あ、いや、ごめん…、叩くつもりはなくて…」
 私は悪気はなかったとすぐに謝罪した。

「.....…ら.....…のよ.....…」
 私に叩かれて俯いた女王はボソッと何か呟いて、拳を強く握りしめながら小さく震えている。

「だから、あんたに近づきたくないのよ!!!」

 ドゴォっ!!!!

 今度は鈍い音がクラス中に響いた。私は、殴られた勢いで床に倒れた。
 女王がイバラを倒したぞ、と周りから歓声が上がる。 

「ちょっと、さすがにやり過ぎじゃ........」
「そうよ、もうあっち行きましょう。もっと不幸になっちゃうわよ」
 金魚の糞その1,その2がそう言って女王をなだめながら自分たちの席についた。その後、心配するように女王の周りに人が集まる。

 誰も私の事なんて心配てくれない。私は、落ちていた進路希望調査の紙を拾うと静かに席に着いた。

続く。


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【薔薇の花言葉】:愛情・情熱・感謝・希望・幸福・永遠・尊敬・努力・栄光・誠実・信頼・真実。

 
 
 


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