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【小説】花束の物語【薔薇編#2】

 学校が終わると、早々に教室を出た。
 急いで玄関に向かい靴に履き替えると、走って玄関を飛び出し、校門まで駆け抜けた。
 校門を出ると立ち止まり、手を膝の上に置いて呼吸を整えながら、ズキズキ痛む頬に手をやった。
 女王の奴、思いっきり殴りやがってと、心の中で毒を吐く。学校から急いで出たものの家に帰ってもまだ誰もいない。今すぐ両親に今日の出来事を愚痴りたい。そう思い、両親がいる病院へ歩き出した。

 病院の近くの橋まで来た。後、数分で病院に着くという時に、思い出さないようにしていた言葉が頭をよぎる。

 ”あんたがいるだけでみんな迷惑なの!”

 私は立ち止まった。女王の言葉が呪いのように体に纏わりつき思うように体を動かせない。呼吸が速くなる。少し落ち着こうと橋の手すりに寄りかかり川を見下ろした。この橋は、全長が約50mある大きな橋でその下を川が流れている。川までの高さは大体5mくらいだろうか。

「ここから落ちたら楽になるのかな…」

 死ぬ勇気なんてないくせに、ついそんな事を呟いてしまい、何を言ってるんだと大きく頭を振った。

「ここから飛び降りても死ねないと思うけど」

「うわあぁ!?」

 急に隣から声を掛けられ思わず変な声が出てしまった。
 声がした方を見ると、同い年くらいの少年が立っていた。背は私より高く、髪は程よいショート、瞼は二重で鼻はスッとしている。いわゆるイケメンというやつだ。服装がパジャマみたいなのは無視しよう。

「確実に死にたいならもっと高いところから落ちないと」

「べ、別に死のうなんて思ってないけど........」

「ん?そうなの?てっきり死に場所を探してるのかと思ったけど。」

「なに!その強キャラがいいそうなセリフ!漫画の読み過ぎじゃない?」

「あはは!何そのツッコミ、ウケる」


 少年は腹を抱えて笑った。その笑顔で心の靄が少し晴れていくのが分かった。少年は、ひとしきり笑って満足したのか急に笑うのをやめ真剣な眼差しで私の方を見た。

「じゃあ、なんでさっきあんなこと呟いたの?」

「別にあんたには関係ないでしょ。そもそも知りもしない人に話すわけないじゃない。」

「知りもしないなんてひどいなぁ。僕は君の事よーく知ってるよ。”イバラさん”」

「えぇ!?なんでその呼び方知ってるのよ!なに、あんた私のストーカー?キッモ!」

「本当に俺の事知らないんだね…。まあ無理もないか。最近学校行ってないし。俺の名前は菊池 京谷(きくち きょうや)。A高校の3年1組。よろしく!」

 同じクラスだった…
 きょうやってどこかで聞いたような…、あぁ、思い出した。女王の金魚の糞その2を振った男と同じ名前だ。

「元カノの事を金魚の糞呼ばわりなんてひどいなぁ」

 しまった、心の声が漏れ出てしまった。

「なんで学校来てないの?金魚の糞その2が嘆いてたわよ。」

 興味はないが一応聞いておこう。感謝しろ、金魚の糞。

「はぁ~、何度言っても君は聞かなそうだね。俺が学校に来てないのは-」

「あぁ!こんな所にいた!」

 彼は、元カノが金魚の糞呼ばわりされることを諦め、私の問いに答えようとしたとき、後ろから彼を探していたらしき人物が叫びながら猛スピードで駆け寄ってきた。

「もぉー、京谷くん!病院の外から出ちゃダメって言ったでしょ!、って.....…あら、華じゃない。京谷くんと知り合いだったの?」

 そう、金魚の糞の元カレを見つけて猛スピードで駆け寄ってきたのは私の母だ。

「全然知らない。クラスメイトってことを今日初めて知った。」

「相変わらず冷たいなぁ。てか、イバラさん、やっぱり棘咲先生の娘さんだったんだ。「棘」に「華」…だからイバラか」

「うるさいっ!!」

「あらあら、案外仲いいじゃない。そ、れ、よ、り、も!京谷くん!すっごく探したんだから!戻ったら反省文書いてもらうからね!」

「いやいや、棘咲先生。学校の先生じゃないんだから、勘弁してくださいよ~」

 そう言いながら母と糞の元カレは病院の方へと戻っていった。
 あいつ、入院してるのか。だから、パジャマみたいな服装だったのか。
 私は納得し、スッキリしたので家に帰ることにした。

続く。


 


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