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救援物資と握りしめた210円。無一文になった私の話。



一度も乗ったことのない電車はとても空いていて、私はすみっこに座った。

荷造りでしばらくは日の目を見なそうな花柄のスカートをひっぱりだして着てみたら、座る時にくるりとおさまってきれいだった。

ああ、あの人は実は本当は女に興味もなく、扱い方も全然わからないから、花柄を着るといつもほめてくれたな。花といえばかわいい、なんて単純な感想で、かわいいじゃんって、いつもおなじことば、同じトーンで。
きっと他の子にもそんな風に、服を褒めるマニュアルでもあるのだろう。

昨日、財布を無くしてしまった。

財布の中にたまたま全財産を入れてあったので、

お金も身分証も、お守りも、

何もかも本当に失ってしまった。

うそみたいな出来事が、私の人生ではいつも当たり前のように起きる。

毎日が作り話みたいだ。
そんなことある?の連続で、ほとほとつかれてきた。

全てが作り話だったらどんなにいいか。


こればっかりは泣いていても、本当に何もならないから動かなきゃいけない。

昨日区役所に相談に行ったらとりあえず
週末生き延びれるようにと救援物資をいただいた。

もらったのは混ぜご飯で、お湯を入れてしばらくすると、
ほかほかのきのこご飯になった。

あとで調べてみたところ、この商品は
アルファー食品さんの、安心米きのこご飯というようだった。

袋の中にはスプーンも入っていて、何かに入れ替えなくても直立できる形をしている。お湯がない場合は水を入れて60分待つだけでも出来上がるらしい。

味もとてもおいしかった。

これはきっと災害の多い日本だからこそ、うまれた企業努力である。
だれかが失敗や苦労を繰り返しながら、誰かの命を救うため
諦めることなく研究し続け、試作を繰り返して仕上がったからこそ、
できた素晴らしい商品だ。

その商品がこの世に出回ったおかげで一文なしになったまぬけな私は生き延びることができた。

私は今、その人たちのおかげで生きている。

そして、優しく救ってくれた友だちのやさしさで生きている。

私はこう思った。

もし、その人たちが苦しんだ時、
辛かった時は
私のことを思い出してはもらえないだろうか。

あなたの流した苦労の汗と涙で、
優しく暖かな手を差し伸べられたおかげで、
私は生きているのだ。

自分なんて死んで仕舞えばいいと思うこともあるだろう、
でもあなたがしてくれたやさしさで、
生きる希望を見出せた人間がここにいるのだ。
たとえそのやさしさがただの気まぐれだとしても。

「人の命を救った」という誇りはあなたの胸に持っていてほしい。

そしてつらくつらくなったときに

心の片隅からそっと取り出してほしい。

そんなことを伝えたくなった。

そして、それなのに私が死にたい死にたいと言っていたら、
その人たちに失礼では無いか。



今日は朝起きたらすぐに免許証を再交付しにいきたいと思った。どうせなら数日で引っ越すので、新しい住所でもらおうと。

自転車で区役所にいって、転入出届けをしたのちに、住民票を手に入れた。

自転車で警察署に行ったら、再交付はここではできないといわれ、
説明書きの紙をいちまい受け取り、
地下鉄に乗って免許証の再交付ができる場所に向かった。

地下鉄はあまり得意ではないが、そんなことは言ってられない。

初めて乗った電車を降りて、初めての駅におり、

そしてはじめてのバスに乗った。
先払いの210円を運賃入れに放り込み、おそるおそる後ろの席に座った。見知らぬ景色を時々あおぎ、これを書いている。

ーーーーー

ここで、充電が切れてしまったので、今帰宅後続きの日記を書いている。

充電がいつもない。充電器がすぐそばにいるのに、寝返りする時に繋がっているのがなんだかうっとおしくて外してしまう。結果でかけるまでに満タンになることがほぼない。。

滞りなく免許証を再交付できた。すっぴんでねぐせのついた、変な髪型の写真だが、まあ、ブスではないからいいか。

財布がないから薬を入れていた巾着にお金を入れて、帰りのバス代の小銭を1,2と数えて運賃箱へ。電池が切れたけどたしかsuicaに帰りの地下鉄代は入っているだろうから、そのまま地下鉄に乗った。


いま、いろいろなものに感謝して

いろいろなものを0から考え直さないといけないとかんじた。

明日もまた、朝から動く必要がある、少しだけ休もう。


山口葵

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