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800文字日記/20220310thu/006

猫が布団に入り込む。温かい。トイレに立ったり外が暗いのに窓を開けた気がする。腹が重い。目覚める。布団に猫が乗っていた。11時34分。三度寝をしたらしい。猫が喉を鳴らす。カリカリをやる。掃除をして外へ出る。

晴れ。青空の高い所に鱗雲(うろこぐも)が。期限が切れたパンを齧(かじ)って畦(あぜ)を歩く。土手を登る。鳶(とび)に狙われないか周りを見渡す。土手の両脇には菜の花にモンシロチョウが目立つ。大きな川鵜(かわう)が河下(かわしも)へ飛んでいく。橋の上で物乞いじみた老婆が魚肉ソーセージを食べては包装ビニールを河に投げ捨てていた。

橋を渡って農道へ。後ろから軽が通り過ぎ、五十メートル先で停車。開いた窓から腕が出て灰皿の中身を田んぼに撒(ま)いて走り去る。風が吹いて、飛んできた灰を吸って咳(せ)き込む。怒りが込みあげる。農道の脇に縦列(じゅうれつ)で止まった前のライトバンの中では黒スーツの男がダッシュボードに足をかけ昼寝。営業の外回りか。

河沿いに戻った市営団地の入り口に自販機が。男が缶ジュースを補充している。「一番売れるのはなんですか?」と聞くと「エメマンですね」「エメマン? 」「コーヒーのエメラルドマウンテンです」なるほど。

河口の砂洲(さす)で鴎(かもめ)が煩(うるさく)群れている。県道に出る。道を鼬(いたち)のような細長い影が横切った。と思ったが地面すれすれに重なって飛ぶ二羽の雀(すずめ)だった。

河口橋付近のプレハブ小屋からヘルメットを被った作業員が出てきた。護岸工場だ。河に降りた重機がショベルの背に石を押しつけ、三十メートルあるクレーン車はエンジンがかかっている。左に生コン工場、右にコイン洗車場を見、仕出し屋を抜けてスーパーに入る。

特売のヨーグルトの値札とレジ打ちの額が違うと指摘してからここ二年半ずっとぼくを無視し続ける女に今日もレジで無視された。

国道下の地下道に赤スプレーで「死」「マンコ」「4649」「俺の玲奈」。

浜に出た。鴫(しぎ)が、砂浜を歩いた小さな足あとを眺めていたら、怒りが消えていた。家に帰る。(796文字)

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