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「ハンチバック」市川 沙央 / 読書メモ

2289文字・120min


サクッと(気づいたことだけを)書きます。

簡潔な物語構成だ。四場しかなかった。
単純に「起・承・転・結」で構成。

冒頭(プロローグ):アウトソーシングのエロ記事。

ベッドから起き上がる=「モチーフ」「舞台」「テーマ」がセットアップされる。 
モチーフ:自分の境遇(ハンチバック・背中が曲がるせむし病)
舞台:介護ホーム(施設は親の遺産=自分は金持ち) 
テーマ:身障者の私でも子どもを宿して堕胎したい(歪んだ目標)

出会い☞グループホームの人々・徳永さん(女性介護士)田中さん(男性介護士=キーマン)
健常者への恨み節(独白、例=私は紙の書物は嫌いだ。私は潔癖だ。古本は読まない。紙を一頁くる行為は身体的な苦痛なのだ。だが健常者は「紙の質感ていいよね〜」で紙の書籍が良いという。クソ喰らえだ)

田中との契約(セックスをして精子を貰う、田中の身長(155cm)分の金額、一億五千万円を提示する)
実際の行為の現場、田中は軽度の身障者だ。私に情けをかけないでくれ、容赦無く軽蔑してくれたほうが、私は救われるのだ。田中を咥えた口に射精された精子は喉を通らずに、私は誤嚥性肺炎になる。田中との行為はフェラチオで終わる。田中は施設を去る。

小さな頃に世話になった大学病院に出戻る。

エピローグ:アウトソーシングのエロ記事
冒頭に戻る、額縁小説。


ハンチバックを読んでふと頭に浮かんだ(読み慣れた)過去作。

十九歳の地図(中上健次)
ジョゼと虎と魚たち(田辺聖子)
コンビニ人間(村田沙耶香)
スクラップ・アンド・ビルド(羽田圭介)
火花(又吉直樹)
ハンチバック(市川沙央)

これらのテーマは:
生きづらさの世の中でもがき生きる

もう一つは:
主人公の心が歪んでいる(歪んでいるのか? というのは社会の視点になるが)

気づいたこと。
僕は読書はやはり純文学作品が好きだということ。

この日、帰りにスーパー銭湯に寄った。大浴場の鏡に映った自分に愕然とした。うつで寝たきりが多く、激太りしていた。7月に仕事の激務で、6kg痩せたはずだがそれを差し引いても、その容姿は醜かった。醜く変わり果てた、でっぷりとした自分の姿を鏡で見ながら僕は体をごしごしと洗った。

その夜、あるプロットが湧いた。
ハンチバックのプロットの雛形を、自分のアイデアに当ててみる。ちなみに既存のプロットからプロット(の骨格)を抜き出す(今回は自分のプロットを当てはめる)のを「逆プロット」という。

「(仮)デブの輪廻」

プロローグ:
ラブホテルのシャワールーム。鏡の前で太った男が自分を洗っている。

一場・起・「舞台」「モチーフ」「テーマ」をセットアップ

モチーフ:ねじれた僕。ウツで太った自己嫌悪を他者(職場の人間)に向ける。
舞台:アルバイト先(△型作業所にて)、マッチングアプリ(SNSのテキストではイケメンを演じる)。
テーマ:穴の開いたコンドームで女とヤって孕ませ(穢し)てやる。
外見で判断する女ども(社会)に、おれ(ウツで人生やる気なしの最低男の遺伝子)を植えつけ、孕ませてやる。

二場・承・出会い①ぽちゃ系専門風俗のセーラちゃん。

セーラは右腕切断の身障者だった。僕の住む田舎では指名はほとんどない。が、若い頃、都心の高級娼婦クラブでは切断フェチに大人気だった。彼女は哀れんだ僕の目に気づき、逆に彼女は軽蔑した目で僕を哄笑する。ピルを飲んでいて僕の計画は失敗に終わった。セーラは生来の淫売で、僕が求める(傷つける・穢す)に値する女ではなかった。

三場・転・出会い②(マッチングアプリで知った熱海さん)

アプリでのやり取りでは熱海さんは貞淑な女に感じる。プロフ画像も美人の部類に入る。僕がこの手で穢すにはもってこいの雌豚だ。熱海さんは僕の甘い言葉に疑いはもたない。彼女は僕の言葉に少女のように反応する。が、僕の計画は無垢な熱海さんの胎に、人類最低の僕の欠損した遺伝子を植えつけてやることだ。僕は言葉たくみに熱海さんをデートにさそう。

四場(前編)・結・新たな出会い

渋谷に熱海さんに会いにいく。
「着きました。ハチ公前にいますよ」
僕のLINEに反応して手をふった女は、なんとミケポ級のデブ女だった。Qフロント前に立つ僕は熱海さんに向かって人混みの中に入って行く。

四場(後編)・結・新たな出会い

ラブホテルチェックインまでの描写(LINEと変わらぬリアル会話、僕の戸惑い、困惑、熱海さんへの印象の変化、距離感の変化など)を描く。

エピローグ:
ラブホテルのシャワールーム。鏡の前で太った男が自分を洗っている
セックスの相手は違うが冒頭とおなじ描写、額縁小説。

★課題
「僕」の成長を「読者に分かるように」描くこと。
■二つの問題点:取材すれば当然、書ける部分だが。
①ぽちゃ系風俗に行くべきか?:
最善は、ぽちゃ系風俗に通ってみる。実際に自分の目で風景や匂いや景色や体感を見る、感じる(島田雅彦のような体を張った取材)だが。それでも取材は必要か? という疑問。風俗の描写がある小説だからと言って取材でそもそも風俗に行く必要はあるのか? 戦争小説だから自衛隊に入隊すべきか? みたいなことになる。が、実際に行けばキャストにはできるだけ話を窺(うかが)う。村上龍の「ラブ&ポップ」のように「現役の女子高生を描くために」ホテルの一室に50人の女子高生を一人ずつ招いて30分ずつインタビュー取材をするなどできないが。ハンチバックの作者は明らかに想像で風俗店を書いている。風俗に行かなくとも風俗描写は書ける。それが小説だが。
②作業所で働く:
主人公の生活とテーマは密着している。
地域の障害者支援相談員に相談をして、働こうと思えば働ける。

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