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ヒア・カムズ・ザ・サン

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完結 【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#1〜29最終話 グレープフルーツムーンの続編なのでよろしければそちらから先にお読みください。
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#創作大賞2022

【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#1

【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#1

 ロックバー『ドアーズ』

 最寄り駅から徒歩で約5分、その先にはオフィス街もあって、若者よりは会社帰りのロック好きおじさんが集まる、マスター曰く場末のロックバー。店内では洋楽、邦楽、ジャンル、年代問わず、いつでもレコードをかけていて、週末には不定期で弾き語りのライブもしている。
 私がここでアルバイトをするようになってそろそろ2年半だ。
 今日は金曜日なので早い時間から混んでいて今は少し客足が落

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【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#2

【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#2

 その後も何度か阿部さんに連れられて彼はこの店を訪れた。時にはバンドのメンバーも全員一緒に。ライブ後の打ち上げの2次会に利用してもらうこともあった。
 そのうちに、すっかりこの場の空気に慣れた彼は一人でもふらっと飲みに来るようになった。

「理香子さん、ビールおかわり」

 彼はいつもカウンターに座って私か樋口くんかマスター、時には仲良くなった常連さんと話をする。若いのに古い洋楽に詳しくて、50を

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【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#3

【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#3

「おまえさ、まさか本気じゃないだろうな…」

 店を出てすぐ、少し後ろを歩いていた湊がオレにそう言った。

「…何の事?」

 何となく、湊が言いたい事は理解していたがあえて気付いていないフリをする。

「…さっきの、あの店の女の人、…好きなの?」

 やっぱ、そうくるよな。

「理香子さん?あるわけないじゃん、あの人結婚してるのおまえも知ってるだろ」
「…相手がいるってわかってても、おまえは止ま

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【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#4

【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#4

 アルバイトへ行く支度を済ませ、自宅を出る前に下腹部に違和感を感じたのでトイレへ行く。

 …あー、今月も来ちゃったかぁ…。 

 溜め息をつきながらトイレから出ると夫と目が合った。

「どうしたの?」
「あー、うん、…また、駄目だった」
「そっか、まぁ焦らず行こう。もう出られる?」
「…うん」

 バイト先のあの店まで行きは一人で電車に乗って行く事が多いが、今日は出る時間が同じくらいだったので夫

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【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#5

【小説】ヒア・カムズ・ザ・サン#5

 彼のバンドのライブはまだ少し先だった。その間も彼は何度かふらっと現れてはビールを2,3杯飲んで、少しだけ話をして帰って行く。私はライブに行くとも行かないともまだ返事は出来ずにいたけど、彼の方から何か言ってくる事も特に無かったのでそのままにしておいた。

 そんなある日の事、新人バンドのインディーズデビューを前に仕事に忙殺されている阿部さんが久しぶりに一人で訪れた。ちなみに彼らのインディーズデビュ

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