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音楽がヒントになってるもの

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音楽から構想を得た小説たち。NCT多めです。
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記事一覧

首を垂れるほどにあなたを想っていたのに

首を垂れるほどにあなたを想っていたのに

 道を歩いていると、生垣の椿が散って道に花を落としていた。その家の主は椿が好きなのだろう、濃いピンクや薄いピンク、白など、本当にたくさんの椿を咲かせていた。しかし、やがてはバラバラと椿は道端に頭を落として、人や車に踏まれてしまう。

 知らない間に、私も椿を踏んでしまっていた。白かった椿は私のピンヒールの跡がついて灰色になってしまっている。その椿の周りを見れば、踏まれたりして傷んだ椿がたくさんあっ

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アイドルスターXの手記

アイドルスターXの手記

 アイドルになるために生まれた男。みんながそう持て囃すほどに、俺の人生は輝いていた。

 俺が生まれた家はあまり裕福ではなくて、母さんが忙しなくいつも働いていた。母は違う国出身で、周りの人から後ろ指を刺されて生きていた。父さんの記憶はない。俺が産まれてすぐに死んだと姉ちゃんが言っていた。だから、俺と姉ちゃんで、大人になったら母さんに楽をさせてあげようと言っていた。

 高校生の時だった。カンコクと

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煙に巻かれたこの恋

煙に巻かれたこの恋

 身の丈に合わない恋。何度も何度もそう思っては、君を突き放した。

 この世界にフィーリングが合わなすぎるカップルがいたとすれば、僕らだと言ってもいいくらいだ。

 君の考えの幼稚さには呆れるし、喧嘩をすればすぐに拗ねるし、そもそも全てが僕と合わなかった。

 僕より5つ下の君は、気分屋でお喋りで、花の周りにいる蜂のように動き回っていた。すぐに泣くし、すぐに怒るし、見ていて疲れた。

 次第に僕ら

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もう一度、君と

もう一度、君と

 本当に好きだ。愛している。世界一愛している。

 そんな言葉を心の底から吐けるくらい愛せる人と出会えるなんて、確率にすれば何パーセントなんだろう。きっと1パーセントにも満たないに違いない。手を繋ぎ、抱き締め、キスをし、笑い合い、愛し合いながら歳を取っていく。そんな恋愛なんか、所詮は幻想に過ぎないんだ。現実はもっと冷たくて、愛し合いながら通り過ぎる恋なんかありはしない。

 恋なんかして何が残ると

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君を信じる奇跡

君を信じる奇跡

登場人物

珠里(じゅり)

瑠衣(るい)

紫苑(しおん)

彩芽(あやめ)

 眠れなくて、少しでも眠るにはどうすれば良いのか考えるうちに、夜は更けていった。時計を見れば2時。0時に布団に入ったのに、2時間も眠れてないんだ。私はそう思うと、もうこれ以上布団で悶々としているのもなあ、と思い、起き上がって窓を開けた。

 真冬は寒いけど、星空がきれいだから好きだ。明るい星も多いし、まるで空がイルミ

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レモンの花が咲いたら

レモンの花が咲いたら

登場人物

屋敷玄(やしき げん) 主人公。ボカロPをやっている。

小野美月(おの みづき) 生まれつき目が見えず、また体が弱い。

水原佳恵(みずはら かえ) 美月の主治医。

小田洋平(おだ ようへい) あるロックバンドのボーカル。玄の師匠。

はじめに

この作品はプリ小説『レモンの花が咲いたら』のリメイクです。

登場人物の名前など、一部改変しています。

1 美月

 人間は、9割の情

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