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何のために生きてるのですか? といわれて。

 「何訳のわからないことを」
 「そう? 貴方にはとても大事なことじゃないの」
 人間にとっては、と、謎の女。や、天女とでもお呼びしようか。
 上流貴族でも着れない衣を見にまとい、優雅に杯を傾けているのだから。
 「何故私に言う」
 「まあまあ、お可哀想に。今のままでは大切なものを失うかもしれませんのに」
 とてもそういう表情ではないが、と言い返してやりたかったが、いかんせん相手は女性。口で勝てるとは到底思えない。
 自分で言うのも何だが、朝廷でも変人と名高い私の元に、どうして通ってくるのか。ましてや、決まってよい月の日に、だ。
 これでは満天の光を愛でながらゆっくり酒を飲むこともできない。
 黙っていると、可愛らしいと思われる唇を尖らせながら、酒を注いでくる。
 「疑問に思うことは素敵なことよ。自分の血筋をわかっているなら、なおのこと」
 戦え、というのか。無駄な血が流れるかもしれないのに。
 「それがあなたの使命。もう迷っている暇はないのは、わかっておいででしょう」
 口直しの飲み物は、どうしてか苦い。
 「私はいつも見ていました。もう、仮面をかぶるのはおやめなさい」
 既に始まっているのだから、と最後は消え入るように口にする天女。
 どうして知っているのかと聞こうとしたが、女性の姿はどこにもない。
 まるで、泡沫の夢のように。
 だが、空の杯は、彼女の存在を肯定していた。
 男は大きく息を吐く。白くなった吐息は、見たくない現実を表しているかのようで、思わず舌打ちをしたくなった。
 腐敗し切った内部、飢えと寒さに苦しむ民。既に暴動が起きており、朝廷からは力で解決する意見しかない。
 事は一刻も争う状態、外部に知れるのは時間の問題だ。
 もう迷っている場合ではない、か。
 実は半年程前から持ちかけられた話がある。ただ、決心がつかなかった。少数派である自分には、これしか方法がないのもわかっている。
 肌に冷たく突き刺さる風の中、理想の輪郭だけが夜空を美しく照らしていた。
 しばらく目頭を熱くしていると、夜半に珍しく鳥が飛んでいた。不思議に思っていると館の上で急に地に落ちた。
 先程まで優雅に飛んでいた鳥が、まるで矢にいられたように急降下したのである。
 何かの悪戯か、鳥は男の前にどさりと落ちた。片付けさせようと誰かを呼ぼうにも、何故か声が出ない。
 先程の天女が衣を首に括り付けているのだろうか、と馬鹿らしい事が頭に浮かぶ。だが、目の前の息絶えた鳥は、もっと馬鹿馬鹿しかった。
 闇夜に流れた鮮血は、初めはどこか綺麗な汚れのように男に映った。しかし、だんだんと姿を変えていき、ある人物の顔になっていく。
 思わず出ない悲鳴を上げ尻餅をつく男。親友の頭部にあるふたつの瞳は、恨めしげに男を見上げている。
 ふ、と、鳥の鳴き声がしたと思ったら、そこには何もない。
 その様子を、天女は冷たい笑みと優しい眼差しで見守っていた。

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今回は物語にしてみました。
たまにはこういうのもいいかな、とw

日記を書くのも楽しいですが、望月にはこっちのほうが合ってるようです。

どちらがどう、というより、その日の気分によると思います。

なので、今後はごちゃ混ぜになるかと。

ではでは〜!

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