青いひつじ

はじめまして、青いひつじです。 短編小説を中心に更新していきます。 自費出版を目標に、…

青いひつじ

はじめまして、青いひつじです。 短編小説を中心に更新していきます。 自費出版を目標に、なるべくたくさん、マイペースに更新していきます。 フォロー、スキ嬉しいです。ありがとうございます。

最近の記事

【短編小説】パイナップルの彼女

僕の彼女は、人を野菜や果物に例える癖がある。 彼女と初めて会ったのは、サークルの飲み会だった。 彼女は僕を見るなり「岡田くんって、玉ねぎみたいな人だね」と言ってきた。 僕は確か、言われたことの意味が分からず、2秒ほど固まった後に「それは、褒められてるのかな」と愛想笑いをした。 仲良くなりはじめてから、あの発言はなんだったのか聞いてみたが、彼女は覚えてないと言った。ついでに、野菜や果物が好きなのか聞いてみたところ、「普通」とのことだった。 そして、落ち込む時は「どうせ私は

    • 【短編小説】プレゼント

      目が覚めると、一面に緑が広がり、その隙間から空を見つける方が難しいほどであった。 「ここはどこ」 女が起き上がると、横には額から血を流した恋人が、車の窓から半分身を乗り出すようにして、気を失っていた。 「ちょっと、目を覚まして。起きて。ねぇ!」 「んん、、、」 女の涙交じりの声に、男は目を半分開いた。 「よかった、、、意識はあるのね」 女が持っていたハンカチで男の額の血を拭き取ろうとした、その時だった。 「あらあら、これは大変だ。どうしたことでしょう」 声の

      • 自己紹介です

        すごく今更なのですが。 はじめまして、青いひつじと申します。 いつも、いいねやコメント、フォローありがとうございます。 読んでいただけて、本当に幸せです。 今日は、少しだけ自己紹介を。 noteでは、短編小説を中心に書いていこうと思っています。 読むのも書くのも、ホラー、恋愛、世にも奇妙な系が多いです。 (サイコホラーとか大好物です、、、) 小説は、星新一、宮沢賢治、田山花袋の作品が好きです。 そして無類のアジカン好きです。 短編作品を描きはじめた理由は、自分と同じように

        • 【短編小説】暮色の時

          「おぉっ!ゆう!めっちゃ久しぶりじゃね?」 「うわっ、けいか。突然大きな声出さないでよ」 けいは、同じマンションに住む幼馴染で、友人である。 最近のけいは部活で忙しく、もうすぐ受験ということもあり、ここ数ヶ月、まともに会話していなかった。 「帰んの?俺も」 「あれ部活は?」 「もう引退。夏の試合が終わって終了〜。今はひたすら受験勉強よ」 「そっか、ウィンターカップは出ないって言ってたもんね。全国おつかれ。見に行きたかったな」 「来れば良かったじゃん」 「塾の模試とかぶって

        【短編小説】パイナップルの彼女

          【短編小説】第6地区

          私の住んでいるこの第6地区は、まるでここだけが世界の終わりかのようだった。 第1地区から第9地区まであるこの町は、幸福の町と呼ばれている。 ただ第6地区だけは、様子が違った。 昔は、この地区にも桜が咲き、小川が流れていたというが、今はその面影はなく、ガラクタのような工場が黒い煙を垂れ流し、空は一面、重たそうな灰色に覆われている。 昔、この地区を襲ったのは正体不明の疫病と、災害だった。 そしてもうひとつ、この地区をおかしくしたのは「記憶屋」という、謎の商店だった。 長い

          【短編小説】第6地区

          【短編小説】イッツオーケー

          自分のことなら、何度だって抱きしめてきた。 色のついた世界から、白黒の世界へ繋がる扉を閉めれば、簡単に涙が溢れた。 突然の雨のように泣き出す私を、手で優しくさすった。 24時間は、意外とたいしたことない事で削られていく。 朝が動き出し、今日の占いが流れている。 ぼんやりと朝礼を聞いた後、私は外回りに出る。 何も決まらない会議では、次に会議する日程を決める。 使い古したボロ雑巾のまま行われる長い終礼。 週に1度、全社員へ送られる役員からの動画。 会長からのお言葉は、ありがた

          【短編小説】イッツオーケー

          【短編小説】鏡

          女は、とある骨董屋で大きな鏡を見つけた。 どれくらい昔の代物なのか、楕円型の鏡の周りは華やかな彫刻のゴールドフレームで囲まれているが、ひどく年期が経っていた。 「そこのお嬢さん、鏡をお探しかね」 「あ、いえ。そうゆうわけではないのですが、この鏡は、不思議な存在感がありますね」 「ほほぅ、お目が高いですね。これは100年前、とある王室にあったとされている鏡なのです」 「そんな貴重なもの、なぜ誰も買わないのですか?お値段も、そんなに高いわけではないのに」 「実はこの鏡、

          【短編小説】鏡

          【短編小説】博士の発明

          その日、博士はえらく興奮していた。 「ついに、、、ついに完成したよ!!」 「博士、今度は何を生み出したんですか」 私は、いたって冷静だった。 博士は、鉛でできた4つの輪っかを見せてきた。 「なんですかこれは」 「これは、悩みが吹っ飛ぶ機械だよ!」 博士曰く、これを両腕と両足首につけると悩みが吹っ飛ぶらしい。 「うーん。それはまた、へんてこなものを作りましたね」 「いや、これはきっと、世紀の大発明だよ!だって考えてもみたまえ!これの効果が認められれば、、、」

          【短編小説】博士の発明

          【短編小説】幸せになるための道具

          私は、この崖から落ちたらしい。 目覚めると、背中は濡れており、蔦が生い茂る岩の壁に挟まれていた。 隙間の幅は2メートルほどで、高さは、かなり高い。どこからか水が流れてきているのか、じゃりで覆われた地面は微かに湿っている。 どうやら、山の隙間に落ちたらしい。 起き上がると、ひどい頭痛がして、頭を抑えると、手のひらが赤黒く滲んだ。 「おーい、だれかーー、いないかーーー」 私の声は青い空を貫いて、そのまま消えていった。 「おーーーーーい」 やはり、反応はないので、登ってみ

          【短編小説】幸せになるための道具

          【短編小説】不法侵入

          私の勤めている会社の3階には、あまり使われていない空き会議室があり、週に何度か相談役の人が来ているという。 従業員のメンタルケアをするための福利厚生のひとつとして、最近導入されたらしい。 「おい、3階のあれ知ってるか?」 「あー、相談室ができたらしいな」 「お前、試しに行ってこいよ」 「いやぁ、別に相談することは無いのだが」 「なんでもいいだろ。自分のことでなくても、親のこととか」 「んー」 そう言われ考えてみたが、やはり、私にはこれといって相談したいことはなか

          【短編小説】不法侵入

          【短編小説】桜が嫌いな理由

          ベランダから見えた桜は、とてもきれいだった。 彼はきっと、桜が嫌いだろう。 桜を見つけるたびに、私のことが頭をよぎっているに違いない。 私の名前に"桜"の字が入っていること。 毎年、桜が咲く季節には、2人で花見に出かけたこと。 いつか桜の木の下で、"ずっと一緒にいようね"と話していたことからそう考える。 彼と出会ったのは、大学の入学式だった。 多分、高校時代はそうでなかっただろう髪色の男性陣の中に、猫背気味の、スーツに着られた姿が目に留まった。 黒い髪に、黒い縁のメガネ

          【短編小説】桜が嫌いな理由

          【短編小説】ドミノ最強王決定戦

          3月某日、1通の手紙が届いた。 開くと"ドミノ最強王決定戦"と書かれていた。 それは、ドミノ大会の招待状だった。 試合の不正を防ぐため、大会の内容について詳細は記載されていなかった。 よくある地域の大会だろう。 そう思い、概要を流し読みしていると、あるところで目がぴたりと止まった。 "優勝賞金1000万円" この地域のどこに、そんな金が眠っていたのか疑問である。 そして、その金をこんな大会に使うこともまた疑問である。もっと有意義な使い方があるだろうにと思う。 しかしもっ

          【短編小説】ドミノ最強王決定戦

          【短編小説】桃源郷

          本物の桜を見たのは初めてだった。 詳しくないのでよく分からないが、この甘い匂いは、小さな蕾をふりふりと揺らしている、この木からだろうか。 この道を見つけたのは、1ヶ月ほど前だった。 なんとなく、同じ道を歩くのに飽きた私は、いつも曲がる小道ではなく、ひとつ前の、より細い小道に入ってみることにした。 少し進むと、先を塞ぐように枝が広がっていたので掻き分けると、その先は道ではなく、ちょっとした広場のようになっていた。  ここで行き止まりかと、折り返そうとした時、ほのかに甘い匂い

          【短編小説】桃源郷

          【短編小説】画面の中の出来事

          空港に到着した。 キャリーケースが流れてくるのを、ぼんやりと眺めていると、回転寿司が食べたくなってきた。 相変わらず我が国は、清潔で美しい。 英語、中国語、韓国語、その下には点字の表記まで、他国からも愛されていることがよく分かる。 細やかな配慮には、頭が上がらない。痒いところに手が届くとは、まさにこのことである。 しかし、どうしたことであろう。 画面の中では、女性が発狂し、それを民衆が取り囲み、動画を撮る様子が流れている。 店員の態度が悪いからという理由で、小銭を投げつ

          【短編小説】画面の中の出来事

          【短編小説】高級時計

          男は有名になりたかった。 男は、自称、物書きのはしくれであった。 テレビの中では、若いイケメン脚本家が悠々と仕事について語っている。 しかし男は、見た目にはこだわらなかった。 風呂は3日に1回しか入らず、無精髭の冴えない顔に毎日同じ服を着て歩いた。 きれいな容姿などなくとも、自分の実力だけで有名になれるはずだと、信じて疑わなかった。 男が、いつものようにビニール袋をぶら下げ、商店街を歩いていると、新しい時計屋ができているのを見つけた。 男は引き寄せられるようにふらっとその店

          【短編小説】高級時計

          【短編小説】素敵な公園

          3月の今日。 私たち家族は夫の転勤の為、新しい街へと引っ越してきた。 以前住んでいた街と比べると少し田舎ではあるが、緑が多く、閑静で、子供を育てるには良い環境である。 そして何と言っても、マンションの前に、とても大きな公園がある。 荷物をひと通り片付け、私と娘は気分転換に公園へ散歩に行くことにした。 「わー!ママー!広いよー!」 「よかったね。これから、ここでたくさん遊ぼうね」 娘は公園を見るなり大喜びで、遊具のところまで飛んでいってしまった。 「気をつけてねー!」

          【短編小説】素敵な公園