青いひつじ

はじめまして、青いひつじです。 短編小説を中心に更新していきます。 (カクヨムでも、同…

青いひつじ

はじめまして、青いひつじです。 短編小説を中心に更新していきます。 (カクヨムでも、同名で活動しています) マイペースにコツコツと更新していきます。 フォロー、スキ嬉しいです。ありがとうございます。

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【短編小説】隣の家族

ブロック塀の穴から見えた隣の芝は、青ではなく枯れていた。 「みっちゃん!いってきまーす!」 扉の外から元気な声が聞こえてきた。 みっちゃんというのは、多分、彼女の母親の名前である。 しかし、本当の母親ではない。 彼女は、里子として隣の家族に迎えられており、血縁関係は一切ないのだそうだ。 なぜ、ただの隣人である私がこんなことを知っているのかというと、自分の母親が夕飯中によく噂しているからである。 「まぁ、あんな大声出して。 らんちゃん、いってらっしゃい」 「いってきま

    • 【連載小説】shoot by 3 EP.4

      (ep.4 専業主婦の女) 『あら、宮前さん。おはようございます。今日も朝からおきれいで羨ましいわ。見てくださいよ〜、私なんて朝はバッタバタで。夫と子供たちのお弁当に、朝ごはん作って、お化粧している時間がないの〜。宮前さんを見習わなくっちゃ』 「あぁ、どうも」 『‥‥ふふ、では失礼します〜』 この女は隣に住む岡村晶子。不気味な笑顔を残すと、そのまま自分の家には帰らず、4人で集まり井戸端会議をする女連中の中に溶けていく。そして決まって『なぁに、あの態度。寂しいかなと思

      • 【連載小説】shoot by 3 EP.3

        (ep.3 芸術家の女) ━━━ パシャパシャ 『東雲さん、この度は受賞おめでとうございます』 「ありがとうございます。熊本にいる父と母も喜んでいると思います」 『今回、日本人では初めての受賞となりましたが、ご両親からはなにかお言葉はありましたか?』 「返信が見れてないのですが、先ほどメールを送りました」 『きっと喜んでおられると思います!それでは最後に、これからの抱負をお聞かせいただけますでしょうか』 「ここからがスタートだと思います。いただいた賞に恥じぬよう、日々精

        • 【連載小説】shoot by 3 EP.2

          (ep.2 サラリーマンの男) PM 21:00 繁華街 「ねぇ、ゆめちゃんいいよね〜?」 『ん〜、今日はご飯までにしよぉ〜?その代わり、次会う時はたっぷり時間空けとくから、ね?❤︎』 くりんと巻いた毛先から甘い匂いを振り撒きながら、桃色の唇を尖らしたゆめちゃんは腕を組んできて、懐かしい柔らかい感触が私の肘あたりを刺激した。 「んも〜分かったよ。次は逃さないぞぉ。じゃあこれ、今日の分ねぇ」 私はゆめちゃんに白い縦長の封筒を差し出した。ゆめちゃんは「ありがとぉ❤︎」

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        【短編小説】隣の家族

          【連載小説】shoot by 3 EP.1

          (ep.1 小説家の男) 男の主張はこうだった。 夜、コンビニを出て家に向かう帰り道、背後にいやな違和感を感じた。男が歩みを速めると、もうひとつの足音もそれに合わせて速くなり、速度を落とすと、もうひとつの足音も遅くなった。まるで一定の距離を保ち、尾行しているようだった。少し先にある路地裏の手前まで行ったらダッシュして中に逃げ込もう。男はそう考えたという。 ━━━ ザッ ザッ ━━━ ザッ ザッ 大きな赤提灯が目印の焼き鳥屋を通過し、右脚に力を入れダッシュして路地裏に

          【連載小説】shoot by 3 EP.1

          【短編小説】チートカードを手に入れた

          ラメを含んだ翠色のふちは、光にあてると控えめな輝きを放った。ふちの内側はラメは施されておらず薄い黄色のベタ塗りで、これがその伝説のカードかと疑うほどシンプルなつくりだった。 題名の通り、大学2年の冬、私はチートカードを手に入れた。 チートカードとは?と思われた方も多いだろう。私の住む星では、パンやお菓子にオマケで入っているキャラクターシールの代わりに、"能力カード"というものが入っている。 大概が、字がほんの少し綺麗になるとか、ほんの少し姿勢が少し良くなるなど、あってもなく

          【短編小説】チートカードを手に入れた

          【連載小説 最終話】子どもたちの眠る森EP.17

          (ep.17 太陽の君へ) みなさま、最後まで読んでいただきありがとうございます。私の名前はルーナリア・アルジェント申します。そうです、ルーナです。 実はこの物語は、私が書いた物語なのです。 自分で書いておきながら、もっとも愛する物語だなんてナルシストもいいところだと言われてしまうかもしれませんが、それほどまでにソーレと過ごした時間は私にとって忘れられないものでした。 この物語は、ソーレから預かった9冊の日記を参考に書きました。ソーレは僕と出会ってからのこと、主に自分の

          【連載小説 最終話】子どもたちの眠る森EP.17

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.16

          (ep.16 最南端) 僕は今、車に揺られながら、小さくなる16年住んだ街を眺めている。 父の仕事の都合で、僕らはタニル国の最南端、クオーレ第10地区へ引っ越すことになった。 父は昇格し、これからはより王政と密接に関わり仕事をするのだと話していた。これから暮らす第10地区には、紫色の花が海のように広がる場所があるという。 ソーレとは、ノートを受け取ったあの日以降、会えていない。 足を見つけた次の日、僕はまた"木曜日の6時に会おう"と書いた手紙を木に吊るした。 木曜日、

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.16

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.15

          (ep.15 夢を叶える) 飼っていた猫が亡くなった。真っ白な毛に、耳の中と鼻はピンク色の可愛らしい女の子で、4歳の僕はデイジーと名づけた。老衰だった。 痩せ細った父は、僕に死骸が入った袋と木の苗を渡してきた。 昔父が住んでいたドレシア国では、飼っていた動物が亡くなったら、木の苗と一緒に埋める風習があったという。たとえそれが老衰であっても、命を奪った罪は大きく、そうしないと天から罰を受けると言い伝えられていたそうだ。 亡くなったのは水曜日だったので、僕は父さんに「明日、

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.15

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.14

          (ep.14 月光の、その先へ) 3日後の木曜日、夕方6時。 僕は宛名のない手紙を握りしめ、森へ向かった。ピオは「僕たちに気づいた誰かが、はめようとしてる可能性もある」と言っていたが、僕はこの手紙の主が誰なのか、おおかた予想はついていた。 蛍を見にきた時も、同じくらいの時間だった。 泉に着くと、手紙の主はまだ来ていないようだった。そしてあの日見た黄色の光も、まるで全てが夢だったかのように、そこにはなかった。 月の光だけがたよりの森の中で、僕は彼が来るのを膝を抱えて待った

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.14

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.13

          (ep.13 隠された場所) "タニル国の地図" 商人の言葉で僕たちはひらめいた。僕は地図を一度も見たことがない。この国がどんな形で、どのように区切られているかなんて今まで興味がなかった。 僕たちは中央の森を出て、まずはその地図を探すことにした。空は太陽が西に傾き始めていた。 「ピオ、僕は今から水汲みに行って、母さんの手伝いをしないといけない。明日は農地に行くの?」 「ううん。明日は行かないよ〜」 「じゃあ、明日、一緒に地図を探しに行こう。第1地区にある本屋に行けば見つ

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.13

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.12

          (ep.12 煉瓦の古城) ノエミに教えてもらったラベンダーの咲く場所へ行った。ラベンダーは枯れたのか、誰かによって引っこ抜かれてしまったのか、そこにはもう咲いていなかった。水いっぱいのタンクを抱えて、帰り道をひとり歩いていく。 その日は突然やってきた。 月曜日、いつものように僕とノエミは川へ水を汲みに行き、帰りに少しだけ話をしてそれぞれの家に帰った。最後に見たノエミは、笑って手を振っていた。3日後の木曜日、ノエミと水を汲みに行くための準備をしていたら、ピオが僕の家にやっ

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.12

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.11

          (ep.11 靴擦れした足) 繋がったふたつの影が伸びていく。 枝葉の隙間から月の光がこぼれて、森の入り口をポツポツと照らしていた。僕の体が冷えていくのとは反対に、ノエミの手のひらはびっちゃりと汗をかいていた。 「ノエミ大丈夫?怖い?」 「こ、怖くない!平気だから‥‥」 ノエミは横を向いてそう言った。ノエミが目を合わせない時はたいてい何か隠している時だ。きっと怖いけれど自分から誘ったからと、言えずにいるのだと僕は思った。 「大丈夫だよ、僕がついてる。もっと近くにおい

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.11

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.10

          (ep.10 選択と取引) 「ルーナ様、明日からは私が1人で森へ参ります」 それはダウンタウンパルコへと向かう車中で告げられた。突然だったのと、あまりにシンプルに伝えられたので、この言葉がなにを表しているのか、すぐには理解できなかった。 「え?僕も行くよ。苗植えはお父さんから頼まれた大切な仕事だから」 「フェデリーコ様からの伝言です。苗植えはこれから私が1人で行います」 「‥‥どうして?僕も森へ行きたい!ソーレとも約束してるんだ」 「ルーナ様、はっきりとお伝え致します

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.10

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.9

          (ep.9 3年間) 僕は15歳になった。気づけばもう、あれから3年が経った。 ちょうど3年前のこの頃だろうか。街全体がサウナのように蒸し蒸しとしたあの日、僕たちは中央の森で出会った。一緒に過ごしたのは4ヶ月ほどだった。でも僕は、これから先もずっと、ルーナと過ごしたあの日々を忘れることはないだろう。 なぜいきなり思い出話のようなことをしているのか。そしてなぜいきなり3年の月日が流れたのか、説明しないといけない。 ルーナとのことがノエミに見つかってからも、僕は中央の森に

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.9

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.8

          (ep.8 足を探すゲーム。そして、変わっていく) 誘拐情報 : 昨日15時ごろ  セラタ第3地区に住むブリッグくん その記事は思っていたよりも早く出た。僕と同い年くらいの、赤いシャツがよく似合う男の子だった。 新聞に載る誘拐事件の記事は、年々小さくなっていった。事件が起きた当初は、見開きの4分の1を占めていたのが、5年が経った今では、端っこに誘拐日時と被害者の名前が載るだけになった。その代わりに、新しくできる商店の広告がでかでかと載っている。国民の関心が、それほど薄

          【連載小説】子どもたちの眠る森EP.8