![ヨウシュヤマゴボウ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/12728793/rectangle_large_type_2_8425c0507b57b2fb8438e418240a7b83.png?width=800)
ひみつの庭、あなたもう覚えてないでしょ_20190703
「ちゃんと庭あるのいいね、花育てられるね」と、今日のあなたが言った。
これって、ちゃんとした庭?こんなのは雑草が生えてしまうだけの、厄介なスペースだと思っていたのに。たったいま、あなたが庭と言ったせいで、この1畳半がわたしの庭になる。
◯
そういえば、ちょうど一年前、ここにはヨウシュヤマゴボウがもりもりと生えていたんだよね。
赤らんだ茎の先、カラスの黒のよな濡羽色のまあるい実。ふくらんだ緑のなかに佇むその姿がきれいで、雑草と一緒くたに刈ってしまうのを勿体なく思った。
◯
ちょうどいい房を手におさめ、わたしはシャッターを切った。バシャリ、と鳴るのがきもちいいカメラ。写真を見てあなたは「でもそれは確か、毒があるよ」と言った。わたしのことなんか全然、心配しないはずのその一言が、なんのつもりかわかっていた。ここに愛なんてないくせに。だってそうやって、言葉や、関係を、つなげておくしかなかったんでしょうわたしたちは。
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目をこすらないように、注意した。石鹸で、よく手を洗った。両手にはほんのり、青臭さがのこってしまったな。でも、そんなあなたの何もかも、わたしにとっては毒にもなってくれなくて、やさしくて、ずっと苦しい。
◯
そういう今日は悔しいくらい、
ちっとも変わらないわたしだと知る。
こんなからだをひきずって、花の苗を、買いに行く。
- aoiasa
20190703
(ひさしぶりに「あおいあさのうた」マガジンを更新できた うれしい)
▼ あおいあさのうた
https://note.mu/aoiasa/m/mf7efc4b663c1
最後までありがとうございました。 〈ねむれない夜を越え、何度もむかえた青い朝〉 そんな忘れぬ朝のため、文章を書き続けています。わたしのために並べたことばが、誰かの、ちょっとした救いや、安らぎになればうれしい。 なんでもない日々の生活を、どうか愛せますように。 aoiasa