ヨウシュヤマゴボウ

ひみつの庭、あなたもう覚えてないでしょ_20190703


「ちゃんと庭あるのいいね、花育てられるね」と、今日のあなたが言った。

これって、ちゃんとした庭?こんなのは雑草が生えてしまうだけの、厄介なスペースだと思っていたのに。たったいま、あなたが庭と言ったせいで、この1畳半がわたしの庭になる。

そういえば、ちょうど一年前、ここにはヨウシュヤマゴボウがもりもりと生えていたんだよね。

赤らんだ茎の先、カラスの黒のよな濡羽色のまあるい実。ふくらんだ緑のなかに佇むその姿がきれいで、雑草と一緒くたに刈ってしまうのを勿体なく思った。

ちょうどいい房を手におさめ、わたしはシャッターを切った。バシャリ、と鳴るのがきもちいいカメラ。写真を見てあなたは「でもそれは確か、毒があるよ」と言った。わたしのことなんか全然、心配しないはずのその一言が、なんのつもりかわかっていた。ここに愛なんてないくせに。だってそうやって、言葉や、関係を、つなげておくしかなかったんでしょうわたしたちは。

目をこすらないように、注意した。石鹸で、よく手を洗った。両手にはほんのり、青臭さがのこってしまったな。でも、そんなあなたの何もかも、わたしにとっては毒にもなってくれなくて、やさしくて、ずっと苦しい。

そういう今日は悔しいくらい、
ちっとも変わらないわたしだと知る。
こんなからだをひきずって、花の苗を、買いに行く。


- aoiasa
20190703

(ひさしぶりに「あおいあさのうた」マガジンを更新できた うれしい)

▼ あおいあさのうた
https://note.mu/aoiasa/m/mf7efc4b663c1

#日記 #エッセイ #文章 #フリーター
#note #写真 #ライター #恋 #詩

最後までありがとうございました。 〈ねむれない夜を越え、何度もむかえた青い朝〉 そんな忘れぬ朝のため、文章を書き続けています。わたしのために並べたことばが、誰かの、ちょっとした救いや、安らぎになればうれしい。 なんでもない日々の生活を、どうか愛せますように。 aoiasa