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ノモリクヲノミカ

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闇夜のカラス、拝啓あんこぼーろ、葵によるリレー小説です。
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2022年12月の記事一覧

ノモリクヲノミカ1

ノモリクヲノミカ1

月曜日の早朝。
白く光輝く巨大な手が、眠っている人間をひとり包み込んで持ち上げる。その人間は深い眠りの中で、少しの揺れにはびくともしない。
その白い手はゆっくりと消えていく。若い大人を連れ去って。
暗い寝室には空っぽのベッドがひとつ残された。

小さい頃に、似たような夢をよく見ていたような気がする。
金色に光輝く鹿が、自分を覗き込んでいる。
「子供の国セオドアへようこそ」
は?ぼくはがばりと起き上

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ノモリクオノミカ②【連載小説】

ノモリクオノミカ②【連載小説】

【「ノモリクオノミカ」①はこちらです】

 ぼくは、その言葉に窓から外を見ようとしたが、急に馬車が傾いて、急降下を始めた。内臓が浮く気持ち悪さに思わず声をあげた。車内は悲鳴であふれた。
「わああ、きもちわりー」
 リョウはモモを抱っこして大声でわめいた。モモも辛そうな顔で、ぎゅっと目をつぶっている。サキとナオはダレカに抱きついている。ダレカは大きな羽根を広げて2人を包み、落ち着いた様子で黒い瞳をぼ

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ノモリクヲノミカ ③

ノモリクヲノミカ ③

ぼくを、丸く黒い膜が覆っている。
膜の外に耳をすますと、かすかになにか聞こえてきた。

こむこぽぽぽこぷぷん

こもこもこもこぷぷ

どうやら、水の流れる音のようだ。
ぼくは流れに乗り、どこかに運ばれているのだろう。外が見えない不安、行き先の分からない不安。ぼくは真っ暗な黒い膜の中で、コウタに声をかけた。
この膜に包まれる前に一緒にいたからだ。

「なあ、どうやら水のなかにいるようだね。でもどこに

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