フォローしませんか?
シェア
葵
2022年12月27日 08:46
月曜日の早朝。白く光輝く巨大な手が、眠っている人間をひとり包み込んで持ち上げる。その人間は深い眠りの中で、少しの揺れにはびくともしない。その白い手はゆっくりと消えていく。若い大人を連れ去って。暗い寝室には空っぽのベッドがひとつ残された。小さい頃に、似たような夢をよく見ていたような気がする。金色に光輝く鹿が、自分を覗き込んでいる。「子供の国セオドアへようこそ」は?ぼくはがばりと起き上
闇夜のカラス
2022年12月29日 07:50
【「ノモリクオノミカ」①はこちらです】 ぼくは、その言葉に窓から外を見ようとしたが、急に馬車が傾いて、急降下を始めた。内臓が浮く気持ち悪さに思わず声をあげた。車内は悲鳴であふれた。「わああ、きもちわりー」 リョウはモモを抱っこして大声でわめいた。モモも辛そうな顔で、ぎゅっと目をつぶっている。サキとナオはダレカに抱きついている。ダレカは大きな羽根を広げて2人を包み、落ち着いた様子で黒い瞳をぼ
拝啓 あんこぼーろ
2022年12月31日 20:57
ぼくを、丸く黒い膜が覆っている。膜の外に耳をすますと、かすかになにか聞こえてきた。こむこぽぽぽこぷぷんこもこもこもこぷぷどうやら、水の流れる音のようだ。ぼくは流れに乗り、どこかに運ばれているのだろう。外が見えない不安、行き先の分からない不安。ぼくは真っ暗な黒い膜の中で、コウタに声をかけた。この膜に包まれる前に一緒にいたからだ。「なあ、どうやら水のなかにいるようだね。でもどこに