厳しい指導は効果的か?(後編)
前回の続きから、
キツく言っとけば伸びるのは成長の踊り場勢だけ
脳筋スタイルを押し付けず多角的に生徒の勉強方法を調査するべき
情報を聞き出すには生徒との信頼関係が必要不可欠
についてそれぞれ述べていきます。
1.キツく言っとけば伸びるのは成長の踊り場勢だけ
キツさに程度の差こそあれ、私も小中高校で幾度となくキツイ指導の言葉を浴びてきました。しかし不思議と、私がそういった言葉を頂戴したのは自分が調子に乗って何かしらやらかした時か、勉強で成績が伸びるなか、中だるみで成績が少し落ちた時がほとんどでした。
※ちなみに私が一番言われてキツかったのは、高校の化学実験の時、うっかり硫酸のついた雑巾で机を拭こうとしたときでした……。
つまり、叱る・怒るなどで厳しい態度の指導をする必要があるのは、指導対象が真面目に取り組んでいない時だけなのです。生徒が真面目に勉強に取り組んでいない場合は、直ちに勉強への意識を矯正しないと受験に失敗する恐れがありますからね。受験勉強にかかわらず何事にも言えることですが、力があるからと言って油断して失敗した時の後悔と辛さは半端ないです。そんな悲しい思いをさせないためにも、講師は勉強を甘く見ている生徒にキツく言ってでも正さないといけないのです。
裏を返せば、今述べたようなケースの時以外はきつく言う必要もないのです。むしろ私はキツく言うことが生徒の成長に逆効果、とすら思っています。生徒は目上の先生から褒められればうれしいし、否定されれば落ち込むものです。ましてや高校3年生、大学受験を目前に控え多大なプレッシャーを背負った生徒にキツイ言葉を沢山投げるのは生徒の心を折ることにもなりかねません。
S先生のMさんへの対応は、Mさんの心を折る可能性もあった、だから私はS先生の指導方法に以上の理由から(個人的に)物申すのであります。
2.脳筋スタイルを押し付けず多角的に生徒の勉強方法を調査するべき
S先生のMさんへのアドバイスは「問題が解けるようにならないならできるようになるまでやれ」というものでした。が、これは間違っています。先生は往々にして、自分の成功体験を生徒に押し付けがちです。
しかし本来ならば、生徒個人の苦手・得意を把握しそれに合わせた勉強法を提案せねば、効率的な勉強法の改善にはたどりつけません。S先生の成功体験は私には分かりかねますが、本来ならばMさんの普段の勉強法を具体的に聞き出し良い点・悪い点を整理したうえで、Mさんの特性も踏まえた勉強法を提案するべきなのです。
例えば、聞く限りMさんは同じ問題を何回も解いているせいで解法や答えを丸暗記してしまっているようです。なので基本問題を2~3回解いてOKとなったら、少しずつタイプが違う問題を出していき、解ける問題の幅を少しずつ広げていく……。といった形式で進めていくのがよいのでしょう。S先生の「解けるまで何度でも繰り返す」は正しい勉強法の一つですが、Mさんにはフィットしていない可能性が高いです。
3.情報を聞き出すには生徒との信頼関係が必要不可欠
「ふだんどんな勉強方法で宿題を解いているの?」
こんな感じで私が初対面の生徒に質問しても、100%正確に教えてくれるケースは少ないです。それは当然のこと。
私も英単語の暗記法などはひと様に言えない方法を使っていて、長年お世話になった先生にも中々その秘訣を伝えられずにいました。
「自分の勉強方法を100%先生が認めてくれるとは限らない、今までうまくいった勉強法でも先生が否定する可能性もあるから正直には言えない……」そう思い言えない生徒も多いと思います。
何が言いたいかというと、生徒の得意不得意を見抜いたり、勉強方法を引き出したりするには先生と生徒との間に信頼関係を構築し、心を開いて話せる間柄になったほうがいい、ということです。
S先生のように冷たい対応の先生に、相談したい、頼りたいと思うでしょうか。私はそうは思いません。
気さくに質問や雑談に答えてくれる、勉強について相談したら親身になって話を聞いてくれる……。そういう先生こそ、生徒が心を開いて正確な自分の情報(具体的な勉強方法)を安心して共有できる存在なのです。
まとめ
長々話しましたが、S先生とMさんを例に大切なポイントをまとめると
1.キツく言っとけば伸びるのは成長の踊り場勢だけ
キツイ指導が有効なのは、生徒が真面目に取り組んでいない場合だけである。
生徒が真面目に取り組んでいるときに厳しく言うことは、逆効果になりうる。
2.脳筋スタイルを押し付けず多角的に生徒の勉強方法を調査するべき
教師は自分の成功体験を押し付けるのではなく、生徒個人の苦手・得意を把握し、それに合わせた勉強法を提案する必要がある。
生徒の特性を踏まえた勉強法を提案し、個別に対応するべきである。
3.情報を聞き出すには生徒との信頼関係が必要不可欠
生徒の得意不得意や勉強方法を正確に把握するためには、教師と生徒の間に信頼関係が必要である。
気さくに質問や相談に答える教師が、生徒に信頼され、心を開いて情報を共有してもらえる。
ということです。S先生とMさんのエピソードから考えさせられた一件でした。
※登場するS先生、Mさんなどはこれまで私が見聞きした実話を元に事実を加工して創り上げた人物たちです。実在の団体・人物とは全く関係ございません。
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