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建築と安全と、人の暮らしと歴史

今回初めて瀬戸内海を訪ね、ここぞとばかりに
豊島、犬島、直島、高松、倉敷、尾道へと行きました。
日本って「海と山の国なんだな」と思いました。

背後にすぐに山が迫っている。
海までの「隙間」に町があるところって沢山ある。
私の実家も、そのようなところです。

そこで感じた、建築と「安全」について
書いてみたいと思います。


尾道で


尾道は、海に近い商店街のあるエリアと、
線路を挟んで山の斜面に家が張り付いている
「坂道エリア」に分かれます。
「坂道エリア」は急坂の連続です。

頂上の「千光寺公園」にはこんな展望台があります。

登ると長いデッキがあり

市内を一望できます。

坂道エリアは細い路地が入り組んでいます。


建築における「安全」


長年建築の仕事をしてきて、私には
「住宅は安全であるべき」という考えが染みついています。
しかし、それが叶わないところってたくさんあるんだな、と思いました。

建築基準法の規定で、道路に関してこのようなものがあります。

接道義務
※細かい補足は割愛します。

接道義務とは、敷地に建物を建てる場合に、建築基準法に定められた道路(幅員4m以上)2メートル以上接していなければならないという決まりのことです。

https://www.home4u.jp/sell/juku/course/relocate/2234-8694


建築基準法には「単体規定」「集団規定」があります。
敷地に関する規定は、回りとの環境に関することで
「集団規定」に入ります。
「集団規定」は、「都市計画区域内」でなければ適用されません。

頭こんがらがってきましたよね(笑)

簡単に言うと、
「ぽつんと一軒家」のような山奥は、都市計画区域「外」なので、
「集団規定」は適用されない
「単体規定」という、最低限の規定だけ守ればよいのです。
もっというなら、個人の住宅で通常程度のものであれば、
「建築確認申請」という
「建築基準法に合った家を建てますので、許可してください。」
という申請も要らない

この「接道義務」は何のためにあるのか?

接道義務が必要な安全上の理由
緊急車両の通行を確保するため
災害時の避難路を確保するため

https://www.home4u.jp/sell/juku/course/relocate/2234-8694

車の通れる道が通じていないと、
たとえば火災の時に、消防車が入れません

この「接道義務」を果たさない土地は「再建築不可」と言われ、
家が建てられません
今古い家が建っていたとしたら、
リフォームでしのぐ、ということになります。

不動産の市場では、「再建築不可」の土地はタダ同然です。
何に使うの?と思いますよね。
「資材置き場」用などと書いてありますが、
要するに使い道はないのです。
不動産用語では「死に地(しにち)」と呼びます。

東京では世田谷区など、車のない時代から栄えた
住宅が密集した地域などに多いです。

今回尾道で、「これどうなってんの?」と思ったのです。
都市計画区域「外」なはずはないし、
どう考えても幅員4メートルの道路なんてほとんどない。
しかも階段です。

実際に、このような記述を見つけました。

(尾道は)南斜面一帯にはりつくように、寺社・民家・洋館そして洋館付き住宅が密集し、独特な都市景観を形成している。
明治24年の山陽鉄道(JR山陽本線)敷設で立ち退きを強いられた人びとに開放されたことを契機に居住域が広がった。
また、豪商や名家が山手に「茶園(さえん)」を建てることが流行し、明治・大正・昭和戦前期にかけて多様な建築群が建ち並んだ。
戦後は復員兵のためのバラック建築も急増するなど、各時代の特徴を色濃く残す建築遺構が残る。
斜面地の多くは自動車も進入できない急斜面であり、法的にも大規模な更新や再開発が困難なこと(建築基準法の接道義務や、崖地安全条例による建築行為制限等)から、旧情がよく保たれているのである。「開発圧力がほとんどない」斜面地ゆえに、「残らざるをえなかったまちなみ」

やはり「再建築不可」により「空家」は増えているようです。

斜面地の建物は、いったん崩壊してしまうと、再建築は困難である。「壊れたらおしまい」なのである。
雨漏りや動植物の侵入によって不可逆的な劣化が進めば、そこは空き地になってしまう。「尾道の顔」である斜面地の魅力は、永遠に失われることになる。
そして、すでに尾道駅の裏手には、そうした空き地が次々と拡大しているのである。

同上

実際に、誰も住んでいないだろう老朽化した家は、とても多かったです。


金毘羅さんで


今回高松へ行ったとき、「こんぴら参り」へ行きました。

厳魂神社(奥社)までの1,368段を上りました。

中間あたりまで、参道の両脇にはお店がありました。

かなりの勾配に沿って、家が段々畑のようになっていました。
それぞれの家にアクセスする道路は、どう考えても無さそうでした。

汗だくで、小走りに各戸を回る郵便屋さんを見かけました。
手当とかあるのかしら?
宅急便はどうしているんでしょう??

参道のお店の人たちは、階段を上り下りして
生活しているということですよね?
一度くらい転げ落ちたりしないのでしょうか?


「安全」最優先の時代になって


こんな山の斜面に家を建て
人が生活してきたってすごいと思いました。

人ってどんなところでも生きてきたし、
建築って意外にどんな所でも出来てしまう
始まりは、土地がないとか、そこに仕事があるとか。
そして、生活が根付けば歴史になり景観も生まれる

最初に「安全」を見越して作られているわけではないのですよね。

ともすると、「ステキ」などという感傷で見てしまうけれど。
「安全」が最優先
の時代になったとき、
そこで暮らす人歴史や景観との折り合いをどう付けるのか。
難しい問題だと感じました。

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