安西洋之(ビジネス+文化のデザイナー)

モバイルクルーズ株式会社/De-Tales ltd. ミラノ/東京。最新著書『新・ラグ…

安西洋之(ビジネス+文化のデザイナー)

モバイルクルーズ株式会社/De-Tales ltd. ミラノ/東京。最新著書『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義』(共著)『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?』、監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。訳にエツィオ・マンズィーニ『日々の政治』

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  • 日経COMEMO

    • 12,562本

    日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

  • 文化とビジネスの不穏な関係にちゃちゃ(!)を入れる

    • 155本

    文化をどう定義するかはさまざまですが、基本的に人が生きるための工夫です。そうなんですが、なんか本末転倒みたいな話って多いのです。例えば、はっきり言うかどうかは別にして「ビジネスのための文化」とでも言いたげな論が目につきます。それ、いいの?という文章を書いていきます。

  • メイド・イン・イタリーはなぜ強いのか?

    最新著書『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』に関するさまざまなメモを書いていきます。

  • デザイン文化について語ろう!

    デザイン文化とは何か?というところから、デザイン文化の作り方、その定着のさせ方まで考え語っていきます。

  • 文化の読書会

    • 233本

    読んだ本の趣旨を1章ずつ1000字以内で書いていっています。

最近の記事

明日、自分がどういう判断を下すか分からない。

「理性」と「感情」のせめぎ合いのなかで人は生きている。こんなこと、誰でも知っている。しかしながら、とんでもない勘違いがあるように思えるシーンに遭遇する、時に。 あたかも、人は「理性グループ」と「感情グループ」という2つのグループのどちらか一方に属していて、これらの2つのグループの釣り合いでコミュニティが、あるいは社会が成立するかのような錯覚が生じている。 「理性グループ」の人が「感情グループ」を制御し、「感情グループ」が「理性グループ」を解放する、と期待しているかのようだ

    • 人々のデータリテラシーが向上したわけ。

      夕方、散歩しながらポッドキャストを聞くことが多いです。ニュース、歴史、文化あたりの話題です。 ただし、です。 2021年8月、アフガニスタンの首都カブールがタリバンによって陥落した頃、2022年2月、ロシアがウクライナに侵略をはじめた頃、2023年4月、スーダンで紛争が激化した頃、そして10月、ガザがイスラエルを急襲した頃、それらの直後は一斉に特別報道番組が組まれるので、ニュースのチャンネルを選択すれば現場での爆発の音や悲しみの生の叫び声を聞き続けることになりました。

      • 発信に際して安易に権威を頼らない。

        今回は発信における「権威の頼り方」の是非をテーマにします。まずは、トルコのワインから話をはじめます。 トルコのワインの知名度をあげるにコンクールを使う ワイン発祥の地にはジョージアやアルメニアなど諸説あります。黒海からカスピ海にいたるコーカサス山脈周辺地帯で、現在のジョージアとアルメニアにあたる、というわけです。両国はトルコと国境を接している国々です。 その接しているトルコでワインが生産されているとの日経新聞の記事に目が止まりました。それもかなり積極的に商売を仕掛けてい

        • 得意とするローカリゼーションが足を引っ張る時代になってきた?

          先月、日本の大学院の社会人向け講座でレクチャーしたとき、参加者の1人のコメントに「そうか、こうきたか」と思ったことがあります。これまでローカリゼーションを得意としてきた日本の文化的特徴が、まったく逆に足をひっぱる理由のひとつになっているということに、ぼくはあらためて気づいたのです。 20世紀末からのローカリゼーション ぼくはレクチャーで異文化理解の一例として、2016年4月にミラノのトリエンナーレ美術館で開催された展覧会「Neo Preistoria(新先史時代)」で感じ

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          「リフレーミング」は眼鏡をつけかえることー意味を探る旅に出る。

          先月中旬、東京でロベルト・ベルガンティによるークショップを行いました。そこから考えたことをメモしておきます。 何度も書いていますが、今はストックホルム経済大やハーバードビジネススクールで教える彼の『突破するデザイン』を2017年に日本語版監修をして以降、「意味」や「センスメイキング」という領域がぼくの大きな関心事になっています。この6年間、「意味のイノベーション」のエヴェンジェリスト的活動をしてきました。 先月も都内で複数の会社の方たちが参加するなか、意味を起点としたリー

          「リフレーミング」は眼鏡をつけかえることー意味を探る旅に出る。

          私たちの本当の敵は、自らの内にある「哲学者」ぶる態度だ。

          文化の読書会ノート 納富信留『ソフィストとは誰か』第2部第6章 弁論の技法ーゴルギアス『パラメデスの弁明』 第7章 哲学のパロディーゴルギアス『ないについて』 (アリストテレス『ニコマコス倫理学』と本書を交互に読んでいる) 基本的に『パラメデスの弁明』はゴルギアスの弁論術の宣伝と書かれたと思われるが、弁論術の教科書としてみると見誤る。 論理的な完全性は「装っている」に過ぎないと思われる。また、哲学の議論を意識しているのも確かだ。しかし、これらは「遊び」であったと推測す

          私たちの本当の敵は、自らの内にある「哲学者」ぶる態度だ。

          「意味のイノベーション」「ソーシャルイノベーション」「新・ラグジュアリー」の3つが重なるとき。

          いろいろなことをやっていると「繋がったなあ」と思う瞬間があります。その瞬間の充実感を求めて人は生きているのでは?と思うことも、ままあります。このところ「繋がったなあ」と思うのは、この数年、関わってきた三つのことです。「意味のイノベーション」「ソーシャルイノベーション」「新・ラグジュアリー」の三つです。 意味のイノベーションが起点 一つ目の「意味のイノベーション」はエヴァンジェリスト的な活動をしてきました。今はストックホルム経済大やハーバードビジネススクールで教えるロベルト

          「意味のイノベーション」「ソーシャルイノベーション」「新・ラグジュアリー」の3つが重なるとき。

          「発信」を目標におく- 日本の文化への関わり方の議論から思うこと。

          今日、10日間の日本滞在を終えてミラノに戻ってきました。 この10日間、それなりの数の人から聞いた、共通するひとつの台詞があります。「日本の文化を海外に発信する方向に活動をふっていきたい」です。「日本」「文化」「発信」という言葉は揃っています。 「日本の文化」が何を指し、どのポイントを強調したいかは人によるでしょう。それで表現にばらつきがでるわけです。伝統工芸品を外国に輸出したい、日本文化に自ずと染み出る繊細さを海外の人に分かってもらいたい、日本が得意とされるサブカルチャ

          「発信」を目標におく- 日本の文化への関わり方の議論から思うこと。

          「PdCa」ーPの計画とCの評価ばかり偏重され、dの実行とaの改善に手が回らないこと。

          日経新聞電子版の2つの記事を読み比べ、ぼくは「さて」と腕を組みました。 一つ目は「グリーンウォッシュ」排除のため、EUが厳しい規制をかけるとの方針を報じた記事です。前々からこの件はフォローしていましたが、いよいよシビアになってきました。 エコ表示などの半数以上は誤解を招く可能性があると判断されているのですが、ここで「環境意識の高い消費者ほど誤認しやすい傾向にあり、EUは規制を大幅に強める」という点が目をひきます。つまり、環境に関心の低い人にとってはどう表示されようが、そも

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          古代ギリシャの人たちにとっての鳥肉をアリストテレスは語る。

          文化の読書会ノート。 アリストテレス『ニコマコス倫理学』第6巻 思考の徳と正しい道理 納富信留『ソフィストとは誰か』と交互に読んでいる。 ーーーーーーーーーーーー 今回は特に第9章の「すぐれた熟慮」に焦点をあてる。 熟慮のよさとは、「思慮」が真なる仕方で把握している目的、こうした目的を実現をするのに役立つような事柄に即した正しさ、である。「思慮」のベストな状態を指している。それでは、アリストテレスは「思慮」をどのように位置付けているのか? 人の魂には、理性と理性以外

          古代ギリシャの人たちにとっての鳥肉をアリストテレスは語る。

          「クラシック音楽」のゆくえ。

          ぼくはクラシック音楽についてまったくの素人です。ただ、奥さんが東京の音大のピアノ科を出ており、ミラノでも長い間、イタリアの子どもにピアノを教えていたので、クラシック音楽が会話の話題になることも多々あります。 また、イタリアに住み始めはじめ頃、奥さんはイタリア語向上とイタリアの音楽事情を知るために、日本の月刊クラシック音楽雑誌に掲載するイタリア人の音楽評論家のコンサートレビューを日本語に訳していました。そう5-6年、毎月、そのために彼女はかなり憂鬱な日々を過ごすはめになりまし

          「クラシック音楽」のゆくえ。

          「文化アイデンティ」と「歴史の再解釈」が、ビジネスの大切な要素になっている。

          日経新聞電子版をいろいろと読んでいたら、かなり興味深い記事に出会いました。およそ半年前のFTの翻訳記事です。スコットランドで酒を巡る広告を禁止するかどうかが議論されている、というのです。 健康を害し、社会的なトラブルを招きやすいとのアルコールのネガティブな面が禁止論を導くわけですが、禁止反対論者はアルコール消費減による経済的打撃だけでなく、スコットランドの文化振興にまで影響を及ぼすといって禁止論にNOと言っています。 まず、仮に禁止になると次のような事態になります。 他

          「文化アイデンティ」と「歴史の再解釈」が、ビジネスの大切な要素になっている。

          自宅でホッとした時に飲む缶ビールとは?

          日本のテレビドラマを見ていると、夕方以降、自宅でホッとした時に缶ビールを飲む姿がとても一般的です。昼間の職場では自動販売機の缶コーヒーを屋上や休憩所で同僚と飲み合うシーンが多いですが、自宅では缶ビールが主役になります。 ドラマでは若い女性も、自宅のベランダに缶ビール片手に出て、夕日を眺めながら「う~ん、しあわせ」とやっています。おっさんサラリーマンが職場の同僚とつるんで「なんて、こんなに冷えたビールは美味いのか?」と議論するのが日本の(懐古調をおびた)風景と揶揄されやすいで

          自宅でホッとした時に飲む缶ビールとは?

          復刻版をビジネスのコアにおく企業の存在感が増している - 「デザインプロダクト」を巡る旅で思うこと。

          先週、「デザインプロダクト」を巡るためにイタリア各地を旅をしました。もう25年以上、毎年、このような旅をしていますが、年と共にいろいろと状況が変わってきました。 ぼくは、「プロダクトデザイン」だけではなく、「社会」「文化」など対象が大きく広がったデザインの活動をしてきて、この数年間は、「ビジネス+文化のデザイナー」と名乗ることにしています。しかし、だからこそ、デザインプロダクトを巡る旅をしながら感じるのは、身体性に関わるデザインを視野におかないデザインは「何かを見失う」とい

          復刻版をビジネスのコアにおく企業の存在感が増している - 「デザインプロダクト」を巡る旅で思うこと。

          見知らぬ人に「ちょっと」ものを聞くって簡単じゃない。

          以前、ぼくの奥さんが女性だけの集まりに出かけました。それぞれが食べ物を持ち寄ったのですが、そこで知り合ったある人の料理が美味しかったので、「このレシピを教えてくれますか?」と気軽に言ったら、「これはお金を払った料理教室で習ったので、簡単に教えられません」と言われたそうです。 奥さんは、それ以上のことを言わなかったですが、自分が悪いことを言ったように受けとめられたことに合点がいかなかったと話してくれました。 というのも、レストランで美味しい料理に出逢い、シェフに「これ、どう

          見知らぬ人に「ちょっと」ものを聞くって簡単じゃない。

          「ビジネスと文化」を論議するー文化創造者としてのラグジュアリー・スタートアップ。

          「ラグジュアリー」は、常に論議を呼ぶ言葉です。多くの意味をもつ言葉であると同時に、その多義性を構成するひとつひとつの意味に、主張する人の考えが極端なかたちで反映されている。よって、「これがラグジュアリーだ!」「いや、それはラグジュアリーとは言わない!」と侃々諤々になりやすいのです。 だからこそ、ラグジュアリーという言葉の意味の勢力図をみれば、時代によって主張したいことが、「文化的なアヴァンギャルドの姿」*として見えてきます。ラグジュアリーは「意味のイノベーション」の見本のよ

          「ビジネスと文化」を論議するー文化創造者としてのラグジュアリー・スタートアップ。